第十四話 決着!修行後勇者の超覚醒!
「俺は後、三つ残してるぜ…」
微笑み合う両者を見て、アガイアレプトは察していた。
『波留ノ・シズリ。最果ての魔王様がなぜお前のような人間を選んだのか…正直疑問だった今の今までは…でもこれでわかった。最果て様は救いたかったのだ…あのつまらぬ只人の世から、お前を…』
この男達はまるで殺し合いの最中とは思えぬほどニヤ付いた笑いを浮かべていた。
それはなぜか?一般的な思考回路ではわからないだろう。
「「ふん!」」
ぶつかり合う両者の牙と、飛び散る火花。
「武器人間」
周囲に展開する緋色の武器と、それを砕き突き進む一人の少年。
お互いが同調し合い、歩幅を合わせ、ただ純粋に戦闘を楽しんでいる。
まるで裕願に踊るダンスの如く、それは獣通しの言葉を返さぬ会話。
『波留ノ・シズリ…お前は…』
『ボーイはぁぁぁ!!!】
最果ての魔王は見ていた、波留ノ・シズリがここに来る前どのような人間だったかを…
「おらぁ!」
その伝説は速く…物心ついた時から喧嘩をしていた。
体格、年齢を超越し、どのような相手でも武器でも人数不利でも負けない。
まるで現代によみがえった英雄”ヘラクレス”の如く、その天災の路上で暴れ狂った。
「おぉ~い…波留ノくぅ~ん。」
「あ”」
波留ノ・シズリが触れる者は皆壊れ、皆絶望する。
「化け物…め…」
しかし波留ノには後ろめたい事が一つあった。それは…
「お兄ちゃん!」
体の弱い妹だった。
自身の人より何億倍も丈夫な体と、強く元気な肉体に反して…妹のすぐにでも飛んで行ってしまいそうに儚く可憐な肉体。
「ごめんな…」
毎日謝った…泣いてすがって謝り続けた。
そしてそんな日々も中学二年の春に事件が起きる。
母の死である。
元々逃げた父のせいで母子家庭だった家は一気に傾き、働く手のいない彼らを引き取る者はいない。
だから考えた、自分たちを迫害し軽視する親戚のクソ共に頼らず生きる道を…
「おぉー波留ノ、仕事が速いじゃねぇーか。」
「うす…」
闇バイト、喧嘩して敵を潰す。
喧嘩屋としての道である。
「撃て!!!」
波留ノの丈夫さは人知を超え、銃弾を通さぬ鋼鉄の肉体と…
そもそも当たる事のない反射神経、そして…
「嘘だろ…」
銃火器、頭蓋骨、鉄板、その全てを逃げ切り潰しぶち抜くだけのパワー。
ここまででお分かりいただけただろう…波留ノは…
『『生まれる世界を間違えた!】』
だからここにいる。
「アガイのババアに言われて、気づいた。俺の得意でお前を潰す…」
そう言うと波留ノ腕は、剣から拳へと変貌し。白いガントレットが姿を現す。
「換装・退魔の剣マーク1レベル2…ファイター!!!」
その直後、波留ノの強さが跳ね上がる。
『なんだ…この凄まじいエネルギーの放出は…】
直後、覚醒の演出に気を取られた緋色の魔神の腹に重い一撃がのしかかる。
「てかさぁ~思ってたんだけど。『そのノイズ混じりの声…】声真似してみたんだけど…どう?」
それを見てアガイアレプト、緋色の魔神が共に驚いた。
それもそのはず、本来アガイアレプトの『』や緋色の魔神の『】は、神である彼らだから発せられる神の美声。
それを真似ることができる人間など、今の今まで見たことも聞いた事もない…
しかしそれ以上に…
『おいボーイ…おちょくってんのか?…】
「そうだよ」
たった一つレベルが上がっただけで、目の前にいる魔の神をおちょくれるほどに成長した彼の姿に…
緋色は怒り、アガイアレプトは…
『いいねぇ~』
感心していた。
「クソキッズがぁぁぁ!!!」
「おい、声元に戻ってんぞ!」
直後に取り乱した緋色によって放たれた一振りの鎌を、容易く受け止めその上へし折り…
「さらにもう一発!」
で応戦する波留ノ。
「先に言っとくが…今の俺は…か・な・り…強い!」
『なぜ仮面ライダー!?』
「ツッコムとこそこ!!!」
波留ノの戦闘を外野で見ていた、アガイの言動に思わずツッコンでしまう天狼寺。
「ほざけぇ!小僧!!!」
「おいおい、キャラまでブレブレかぁ?」
念力による緋色の複数の武器による攻撃も、なんなく対処し波留ノは何食わぬ顔でそこに座す。
「なぁ~もう終わりでもいいか?」
「なに…」
緋色は唖然としていた。目の前にいる存在の…圧倒的な強さに…
(ここまで圧倒的なのか…たかが数十分の修行で…勇者はここまで成長するものなのか…)
「ノイズも、キャラも…ブレブレなお前に一つアドバイスだ…」
「は?」
「口は閉じ解け、じゃねぇーと…」
波留ノは緋色が唖然とし、空いたままの口を塞ぐようにしてアッパーをお見舞いし…
「俺がぁ!やっちまうぜぇぇぇ!!!」
空中に浮いたその体を、高速で背後に回り地面へと叩き落した。
「これで終い…」
波留ノがそう思った…次の瞬間…
「全知全脳…」
周囲の空間が変化、不自然なほどにその場にいる全員の体が重くなる。
『気負付けろ波留ノ!!!ここはもうお前の知る宇宙ではない!』
「は?」
その瞬間、あまりの高重力に波留ノや天狼寺の体が地面に叩きつけられる。
『そのままでいろ…そのまま…】
そう言うと今度は、身動き一つとれない二人のいるこの場所の空が一種にして焔の赤に包まれる。
『ギガ!…太陽…】
それは、本来我々知る太陽の6千倍の質量を持った太陽がこの星に追突してくる前触れであった。
その一撃により星は崩壊、宇宙空間に投げ出された波留ノ達をアガイアレプトが抱えて緋色の前に浮く。
『これがお前の今の力か?』
『何を言ってやがる、全知全脳は魔神の基礎能力。宇宙そのものを全てを支配し行使できる。…期待したがやっぱり…魔神相手には魔神か…】
『ボクとやろうっての?』
『それより他あるか?】
これにより、魔神対魔神、神対神の超常決戦が幕を開ける。
『やるまえにだ…持っている荷物が邪魔だろう。かたしてやるよ…】
そう言って緋色は、アガイアレプトに向けて不意打ちで超新星爆発をお見舞いし。
手に持った波留ノと天狼寺事焼き払おうとする。
『大丈夫さ、心配はいらない。彼らなら”すでに僕の手の中にある”』
アガイアレプトは、一瞬の間に波留ノと天狼寺を自身の作った無限の酸素を含む水で包み二人を護った。
『そう来なくっちゃなぁ!】
次に緋色は、海王星と木星をアガイアレプト目掛けて放つ。
『水よ!弾きたまえ!』
しかし、惑星規模の攻撃をいともたやすくアガイアレプトは自身の能力である無限の水源により反射し緋色に返す。
『惑星程度じゃ無理か…んならこれでぇ!!!】
そう言うと緋色は自身の周囲に火球生成し、アガイアレプトにぶつけようとマシンガンのように連射する。
『おっとぉ~ただの火球じゃねー!それは一つ一つがビックバンだぁ!。当たれば一つの宇宙事消えてなくなる…】
『破壊が好きだな、ならばこちらは…』
緋色の放った火球の正体は圧縮したビックバン、それを迎え打とうとアガイアレプトは詠唱する。
『悪意なき善意…人でなき人…アフラ・マズダの名に置いてその一切灰燼、焦土をを創造の光で迎え打たん…”善神之矢”』
次回…
「これで…形成逆転だな…」
【不滅王と緋色の悪魔…】