第十三話 緋色の悪魔再び!タイムリミットは45分…
『久々だなぁぁぁ!!!アガイパイセン?】
二人がアガイアレプトの”高貴なる水の星”にて、修行をしていると突如上空に緋色の魔神が出現する。
「おし!久々だなぁ!赤やろぉ…」
『ん?誰お前】
波留ノに一度興味が失せたことで、赤い魔神の記憶から波留ノの存在そのものが消えてしまったらしい…
「そうかよ…なら…」
波留ノはそう言うと、目にも廼止まらぬ一瞬で魔神との間合いを詰めて腹パンをかます。
『なるほど、基礎力を上げて力が増したか…】
魔王はその一撃で遥か彼方へと吹き飛ばされ、殴られた腹には大きな拳の跡が…
「この一撃で思い出したか?」
『あぁ~魔月神様んとこの勇者ボーイか…おひさぁ~】
「ノリが軽いなおい!」
魔王は、波留ノに手を振ると波留ノはそのノリにツッコミを入れる。
すると魔王は不適に笑ったその瞬間、世界が赤く染まる。
「俺の能力は、”混沌”。その技は三つ…一つめ!」
赤く染まった周囲から、無数の鎌が飛んできて波留ノ達を襲う。
「次元、時間、空間を切断する鎌を生み出す能力。」
その力で、空間を切り裂き波留ノとの間合いを一瞬にして詰める。
「私もいること!忘れないでよね!」
横にいた委員長が、大剣で攻撃を仕掛けると魔王は腕を向けて…
「切断、時よ止まれ…」
委員長が攻撃を予見して、よけることができた。
それが、勇眼の能力だから。
しかし…委員長の体はみじん切りにされ周囲に飛び散る…
「はぁ~はぁ~」
『ありゃ?はずした…】
しかし、委員長片腕を犠牲にしてなんとか助かっていた。
「おい…今なにしやがった…」
『ん?、ただ斬ったんだよ。”時ごとな”ボーイ…】
そう、赤い魔神の鎌は時と空間、次元を斬ることができる。
それすなわち、攻撃の瞬間時を止めることができると言うこと。
それは勇眼の察知能力を持つ彼女でさえ、時を止められる前に動かなければ避けられない不可避の一撃。
「これが…”魔神”…」
『がんばれ、波留ノに天狼寺…そやつは魔神最弱。勝てなければ、君達に未来はない…』
しかし、二人にも秘策がある。
その秘策を先に開示したのは天狼寺であった。
『なんどやっても無駄だぜガール…】
しかし、そう言って鎌を構えた赤い魔神の体に異変が…
(体が…思うように動かねぇ…)
それは天狼寺の、《全てを平等にする》加護の影響である。
自身も相手も実力を平等にするため、必ず互角。
『その目ぇ~勇眼か?ずりぃーな…強化コピーをこの状態で使うとかぁ~超ーずりぃなぁ~】
「赤の大鎌!」
そう、平等にする能力の唯一の例外が彼女の持つ通者眼の強化コピーの力である。
それを知って赤い魔神は、指パッチをして周囲に鎌を展開。
『出てこい…”有象無象共…”】
そう言うと、周囲に展開した鎌が回転。
周囲の空間に穴をあけて次元の裂け目から、ドラゴンを中心に神話級の超生物達が何千匹も出現する。
『全員倒してから、出直しな…】
「忘れたのか…その力は私にだって!」
『無理さ…】
赤い魔神は知っていた、強化コピーができるのは対象の能力のうち一つだけ。
切り替えることは可能だろうが、その場合鎌は使えなくなる。
そして、現在呼び出したこの生物達が赤い魔神に従っているのは魔神としての支配の能力によるもの。
『実力は互角でも、武器がないんじゃお話にもならねぇ~…切り替えた瞬間”斬るぜ…”俺は…】
赤い魔神がそう息巻くと、横から波留ノが乱入する。
「なら二人でかかればいい…今だ!天狼寺!」
天狼寺は、波留ノが作った隙の間に魔神の能力である支配を強化コピー。
当然鎌は消えるが、現れた生物全員が赤い魔神の方を向く。
『はぁ~主の顔も忘れる駄犬共が…”散れ”狩払い…】
魔王が放った鎌を使った大技は、周囲の生物全員を一瞬のうちに粉みじんに変えた。
『武器は同じでも使い手がしょぼけりゃ、贋作なる。”凡人が神器を握っても、神にはなれねぇーぞ”…ガール?】
天狼寺の平等の加護は、あくまでパワーだけであり技術には影響しない。
さらに、全員に同じだけのパワーを与えても能力が与えられるわけじゃない。
つまり、時を止め空間を削り取り次元を斬り避けるのはこの場でただ一人…
『さぁー!もっとこいよボーイ&ガール?オレの能力は後二つもあるんだぜ…】
赤の魔神だけである。
「確かに…使い方を知らない奴が武器を持っても互角にはなれない。それは当然ね…」
『どうした?諦める気にでもな…】
次の瞬間、魔神の首が斬り落とされていた。
『は?】
「勇者にはそれぞれ専用の武器が与えられるのはご存じ?それには”マーク”って言う形態変化があって。戦い成長するごとにその種類が増えていく。」
その瞬間、ゲロチン状態の魔王が見たものはまさしくそう…
『刀?】
「勇者の剣・マーク1/レベル2…侍ソード…」
アガイアレプトが今回の修行で二人に教えたのは力の流れを読み、相手の動作を予測し利用する予測能力ともう一つ…
”レベル”と言う新な概念。
それは本来勇者全員が持つ専用武器が形態変化することで増えるマークシリーズ、しかしその種類は変われど武器自体が強くなるわけではない。
しかしレベルは、その武器に新たな変化と共に強さを増した状態。
そして天狼寺にはもう一つ強みがあった…
(天狼寺は、元の世界じゃ剣道部主将。大剣より…こっちの方があってる。)
と波留ノは語るのだった。
『力を平等にってのは…何かの冗談か?】
赤い魔神は当たり前のように、首から瞬時に再生し立ち上がる。
「いや?そうじゃない。これは技術、お前が言ったように私もこの武器の使い方を熟知している…」
これが剣豪、天狼寺の力である。
『そうか…それじゃぁー二つめ行くぜ…】
赤い魔神はそういうと手を合わせて、願うような姿勢で詠唱を歌う。
「赤き赫き、混沌の夜明け、黒き黑き、混沌の母体、世界を構築し、崩壊させる、汝はどこまで身勝手なのか…”森羅万象!創造具現…”」
そう叫ぶと共に、その場が変化し。
見たことのない星に変えられる…
『アゼルスターお得意の、フィールド変更か…これは厄介だな…』
それにより天狼寺は変化したフィールドの重力に足を取られて動けない。
『やっぱりな、お前の平等の加護に世界は含まれねぇー。だからフィールドを変えちまえばこっちの門だ!】
そう、魔神は生物として世界の影響を受けないと言う体質がある。
それは神故に当然の道理であり、勇者と言えど人である天狼寺との唯一の差。
これにて勝敗と思われ、その鎌を赤い魔神が振り下ろすその瞬間。
(キン!)
金属と金属がぶつかり合うような音が周囲に鳴り響く。
『やっと使ったなぁ~波留ノ…】
波留ノは加護の影響で、魔王や魔神の魔族の起こした現象や能力の影響が半減するため動くことができた。
しかしそれより驚くべき事なのは、この戦いが始まってから今の今まで波留ノは魔神、魔王に特攻のある退魔の剣をわず生身で戦っていたと言う事実だ。
「あと一つ…だよなお前が残してる能力は…」
『あぁ~】
「俺はあと三つも残してるぜ…」
魔神の鎌を、マーク1の刃で受け止める波留ノは魔神にそう…告げるのであった。
魔月神到着まで…あと45分…
次回…
【決着!修行後勇者の超覚醒!】