第十一話 真紅と混沌の支配者・アゼルスター
「あ?ここは…」
目覚めると波留ノは、空も海も陸も、天も地も、上下も左右も存在しない真紅の世界にいた。
『ここは俺様の世界だぜ…ガキ…】
その男の声は伝わるが…なんだかノイズ混じりで気持ちが悪い声だった。
声がまるで電子ドラッグ、一言の中に複数の言葉や音声が混じっている。
『どうしたぁ~ビビってんのかい?】
「ビビるも何も、わけわかんな過ぎて頭が追いつかねぇ~」
『悪い悪い、無理くりにでもお前をここに連れ出さねぇ~とあいつが来ちまう】
「あいつってのは、最果てのことか?」
『あぁーそうだ、俺様は魔王じゃねぇーんでな。あいつとことを構えたくはねぇ~】
「魔王じゃねぇー?んなら誤算だったな…」
『はぁ?】
波留ノは、勇者の身体能力を理由した踏み込みで凄まじい衝撃とともに急接近しアゼルスターに退魔ノ剣の一撃を振りかざす。
「俺が倒すからなぁぁぁ!!!」
確実に当たった、しかしアゼルスターにあたった瞬間波留ノは驚愕する…
『天使を殺した悪魔を別の天使が殺す…これが復讐の連鎖だぜガキ…。でもこれがわかっただけ良かった…”俺様にガキの能力は通用しねぇー…”】
退魔ノ剣が…あの退魔ノ剣がアゼルスターに当たった瞬間折れてしまったのだ。
『悪いが、興味が失せた…バイバイ勇者…】
そしてそれと同時に、波留ノが認識できない速度でどこからともなく取り出した真紅の大鎌で波留ノの胴体を切り裂き深い傷を刻み込んだ。
『本来なら死にいたる怪我だが、勇者の再生能力ならすぐだろう。だから…次で確実にかたを…】
アゼルスターがとどめの一撃の光線を放とうとしたその瞬間、聞きなれた声で「悪魔之矢」と聞こえその空間を崩壊させる。
『ちぃ!思ったより早かったな、こりゃー世界をまた再構築しねぇーとな…めんどくせぇ~】
男は世界のともに消滅し、消息を絶った。
「波留ノ…」
聞こえてくるのは、女の声。
「波留ノ…」
(ん?最果てか…)
「おい!波留ノ・祇厨理!!!起きないか!この戯け!」
「は!はい!!!」
あの我の強い波留ノが、同様し声を上げるほどの相手。
青いロングヘア―の女…その正体は…
「久しいな、波留ノ。まさかこんなところで出会うとは、思わなかったわよ…」
「このデカい胸…お前!まさか委員長かぁ!うぅ!」
波留ノがその正体に気づいた瞬間、放ったセリフに女は反応し。
顔面が凹むほどの威力で、パンチをお見舞いする。
「委員長ひでぇ~よぉ~…」
「酷いのはあんたの方!、久々にあったクラスメートに初めて言うセリフがそれって…」
彼女の名は、天狼寺・門出。
波留ノが通っていた九頭竜第二中学校の生徒会長を務めていた女である。
いつも不良生徒だった波留ノが唯一恐れた生徒であり、波留ノを犬猿の猿だとするならば…
彼女はまさにボスゴリラである。
「ナレータもうるさい!失礼しちゃうわねぇ~もう…」
「悪りぃ~悪りぃ~委員長!改めて久しぶり、確か中学卒業以来だからぁ~」
「三年ぶりよ!馬鹿!、もう立派な大人…になるはずだったんだけどね。まさか大学でキャンパスライフ送る前にトラックに引かれて死んじゃうなんてね。」
そう、何を隠そう彼女も波留ノとは別の世界に別の方法で召喚された勇者である。
「へぇ~んじゃ、委員長は女神に言われてここに?」
「そうよ、あんたは違うの?集会にいなかったけど…」
「集会?」
委員長曰く、通常。女神に呼び出された勇者は、天界での集会に参加しそこで危機に瀕した世界から転生先を決めるらしい。
「ふぅ~ん、なるほど。んで委員長はここにいると…」
「そうよ、私の担当の世界。ここは近未来的な世界で武器も、APESみたいに最先端のもんばっか。おまけにバランス調整バグってるし、犯罪は多いし、酸の雨は降るしもう散々よ…」
「そういや、委員長。生粋のFPS好きだったな…」
「そうよ、あんたの家でやってからずっとね。」
天狼寺の家は厳しかった、ゲームやその他の遊びも禁止され勉強ばかりの毎日だった。
1点でも点数が下がれば外出禁止など、厳しい家だったが…
それとは正反対に、波留ノは貧しくはあれど自由であった。
波留のは母子家庭であったためゲームは買えなかった、しかし母はそれを不憫に思い。
隣の家の浪人生のお兄さんが売ろうとしていたゲームを、何とかお願いしゲットした。
そのお兄さんは優しかったので、色々なゲームを教えてくれた。
そしてある日天狼寺が家に学校をサボった波留ノの配布物を届けにきた時、波留ノとその妹に連れられる形で家に上がった。
そして出会ったのが…”APEX”である。
「あぁ~もう懐かしいわぁ~、今ってシーズン何までいったのかしらぁ~」
「しーらねぇ、俺あんまはまらなかったし。原神の方が…」
「あんたはあれでしょ、他人に負けるのが嫌だから大戦ゲームやんないんでしょ。いっつも負けかけるとコントローラー投げてどっか行っちゃうんだから。本当に子どもぽい!」
「んだとぉー!」
二人がそんな口論をしている間に、奥からSF的な高度な技術で作られた鎧で包まれた兵士が「隊長!ご報告があります!」と入って来た。
「なんだ!また奴が攻めて来たか!」
「はい!魔王の手により1分を待たずして40師団が壊滅。残り150師団がやられるのも時間の問題かと…」
「ち!不味いな…」
「魔王?」
波留ノはその言葉を聞くと、二人の会話に割って入り。
天狼寺は全てを説明した。
どうやら現在この世界では、機械王と呼ばれる魔王が宇宙中を侵略中らしく。
数か月前にこの地球に飛来した隕石から姿を現し、またたくまに世界の人工150億を1億人にまで減らしてしまったらしい…
「マジかよ、そんなに強ぇーのか?」
「当然だ、奴は今まで惑星、いや銀河のさらに上の銀河団にあるすべての星を壊滅させてきたほどんお手練れ。地球程度滅ぼすのは本来造作もないこと…しかしここには私と言う勇者がいる…」
天狼寺の勇者としての加護は、《自身を含む全存在に均等に力を振り分ける》と言うものでそれを使い魔王の力を分散させ自身の持つ軍隊にその力を振り分けた。
「まず振り分けられる対象は当然私が決められる、しかしながら振り分ける対象も決められるものの私はだけは必ず能力の影響を受けなければならない。」
「つまりは、能力対象の敵が自分より弱い場合は不利になると…」
「そう言うこと、まぁーもっとも。今回のような特殊なケースを除けば私以下の相手にこの能力を使うことは無いがな…」
「どう言うことだ?」
天狼寺曰く、今回の敵は無限に近い再生能力を持つらしく。
おまけに力と言うよりは攻撃範囲が広い上、毒関係の上体以上も持つそう…
「なるほど、でそいつの技とか能力は?」
「それは名の通り…」
二人がそう話していると突然、頭上からミサイルが飛んできて建物を粉々にする。
「全長7・5メートルのミサイルを打っての登場とは、随分と派手好きだなぁー!貴様も…」
『あらぁ~ごめんなさい、機械の故障かしら。やり過ぎちゃったは…』
機械のような声でしゃべる彼女の声を聞いて、瓦礫の中から波留ノが起き上がる。
「なるほど…こりゃー厄介なわけだ…」
『誰?あなた…』
ここに波留ノと天狼寺による、勇者タッグが結成された。
次回…
『僕ちんは、六大魔神集が一人。”アガイアレプト”』
【機械王!そして高貴なる水…】