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とき 2

(ちっ・よっ・だっ・く・だーぁ!)

私は思わず叫びたい衝動を堪えて、代わりに心の中で叫んだ。

(ここが日本の中枢かぁ)

お金に釣られた私は退魔師になる事にした。どうせもう決まっていて逃れられそうな雰囲気じゃなかったし、それならお金の為と割り切ったのだ。

誕生日から数日後、輝さんの運転で東京の千代田区まで来ている。目の前にはニュースの映像でしか見た事ない国会議事堂も見える。

(本物だ!)

まるで修学旅行気分。実際、学校を休んでまで来ているのだから旅行気分だ。

学校へは輝さんが話を付けてくれたらしい。その辺の細かい話は大人の事情という事で聞かされてはいない。ただ、どれだけ休んでも進級には影響ないとの事だったので、私も心置きなく東京というものを満喫しようと思って出て来た。(学校をさぼり放題なんて!)


声には出さなかったけど、私のテンションが高いのを見透かされたのか、輝さんにフフっと鼻で笑われてしまった。

(田舎育ちなんだからしょうがないじゃない)

議事堂を過ぎ、お堀を超え、車が森のような場所に入っていく。私も流石に変なテンションは収まり、少し緊張し始めた。向かうは皇居。そんな所、入って行っていいの?という場所を車はゆっくり進んだ。

「ついたわ」

(着いちゃったかぁ、、、)

ここまで来たのだからもう腹をくくるしかない。


またこちらの心情を察したのか、それとも私があからさまに不安な表情をしていたのか輝さんが優しく微笑んでくれた。

「そんなに緊張することないわ。あなたは何もせず頭を下げていればいいのだから」

彼女が言った通り頭を下げてじっとしているうちに、退魔師として天皇様から勅令が下される儀は済んでしまった。あの天皇様から直接名前を呼ばれたんだよ?退魔師 坂田十時って!なんだかすごく恥ずかしい!けど、わざわざこんな儀式を開くんだから、退魔師ってすごいのかも。

「武士は天皇家を守る存在なのよ」

「はぁ、」

実感なんて湧くはずもない。未だにこういう関係って続いていたんだなと思うばかりだ。


儀式が終わったのも束の間、輝さんが言った。

「さあ、仕事に行くわよ」

「え?(これから⁉)」

また心が読まれたのか鼻で笑われた。

「フッ、あなたももう退魔師なんだからこれからは仕事が優先になるわ」

「いきなりですか?説明とか、研修とか、、、(観光とか、)」

流石に遊びに行きたいとは言えなかった。

「いきなりではあるけれど、説明するより実際に現場を体験した方が納得すると思うの。それに、先ずは私と組んでもらうから、あなたは見ているだけでいい」

「はぁ、そうですか」


向かったのは上野の寛永寺。

(あぁ、、、すぐそばには有名な上野動物園があるのにぃ!)

女子高生にお寺巡りは少し渋すぎる。境内には観光客も訪れていて、そこそこにぎわっていたから渋いのが好きな人には有名な場所なんだろう。

輝さんは観光客の集まる本堂ではなく、慣れた様子で裏口から入って行く。私もその後ろを続いた。中にいたお坊さん達は輝さんとは顔見知りなのか会釈をするだけで言葉を交わさない。

辿り着いたのは小さな部屋。

「これに着替えて」

巫女服を渡された。

「あのぉ、、、」

「着付けしないと着られない?」

「いえ、着たことあるので大丈夫です」

「なら、私も着替えてくるから」

そう言い残して彼女は行ってしまった。


(何するんだろう?巫女服なんか着て、、、)

これから鬼を祓うのかもしれない。でも巫女服着るの?ココお寺ですけど?まあ、仏教どころか、日本ではクリスマスやハロウィンなんかもごちゃ混ぜに楽しんで、なんでもアリだけど。

それに巫女服なんてお祓いを受けに来る人達へ向けた、ただの権威付けだ(私、個人はそう思っている)お塩でも祓えるんだから”見えている”私が直接ちょちょいっと、ゆで卵にお塩を振る要領でかけてあげればそれで済む。だから着るものなんてジャージであろうと構わない。

ただ、憑かれている人達は神にもすがる神妙な面持ちで来ているから、ちゃんとした格好でちゃんとしたお祓い(一般人が思い描くような)をしてあげないと、憑きものが落ちたと言っても信じてはくれないのだ。

それに勝手なイメージをしていたけど、鬼と戦うのならもっと防御力マシマシの格好の方がよくない?

現代なら、自衛隊の戦闘服とか?まあ、退魔師の戦闘服は巫女服なのかもしれないけど。


私は疑問に思いつつも巫女服に着替えた。

コン、コン、コン。

引き戸をノックする音が聞こえ、輝さんの声がした。

「準備できた?」

「ハイ」

私の返事で入ってきた彼女も巫女服だった。スーツ姿もカッコよかったけれど巫女さん姿もサマになっている(ていうか!デカくない⁉着やせするタイプか、、、羨ましい)

「はいコレ。」

渡されたのはヒシャク。神事では邪を祓うお清めの水を入れる神具として扱われる。輝さんの方は肩に弓をかけている。これも邪を祓う神具として扱われるものだ。

(やっぱり戦うんだよねぇ?)

輝さんは見ているだけでいいと言ったんだから、きっとあの弓で・・・


その彼女の手がおもむろに伸び、私の胸を揉んだ。

「へ?」

「下着は?」

手が揉みながらさすってくる。

「っ!、、、付けてませんっ!」

おばばからよく言われたのだ。巫女服を着る時は下着は付けない様にと。

神社が一番忙しいお正月に手伝いで立たされる時には、巫女服姿の私を見つけた友達がはやし立てる。それだけでも恥ずかしいのに、その下は何も身に着けていないのだ。ノーブラ・ノーパンでみんなの前に立っているなんてバレたら変態扱いされてしまう!嫌で嫌でしょうがないから、おばばに文句を言うのだけど

「巫女とはそういうものだから」

と言って許してはくれなかった。


今も下着を付けずに着ているのに、いきなり揉むなんて酷い!擦れて痛いんだから!

「せ、セクハラです!」

「巫女とはそういうものだから」

おばばと同じことを言う。

今度はその手が袴の脇の空いているところから滑り込んできた。私の股間をまさぐっていく。

「やっ!」

思わず腰を引いたけれど、彼女の指が遠慮なく動き、下着の有無を確かめてくる。

「これも仕事のうちよ」

「ならこれはパワハラです!」

流石に手を抜いてくれた。

「巫女とはそういうものだから」

輝さんはさも当然の様に言って、部屋から出た。

「行くわよ」

(ちょっとこの人、何なの?)

こちらが睨んでいるというのに、まったく意に介していない様だ。

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