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とき

私は坂田 十時とき。あの坂田金時、直系の子孫だ。(たぶん)


「え?知らない⁉ あの坂田だよ?知らないの?」

クラスメイトへ前のめりになって自慢したら、アホの子あつかいされてしまった、、、くやしい。

坂田金時といえば日本人なら誰もが知っている、あの金太郎のモデルとなった人物だ。金太郎の名前を出せばきっとクラスのみんなは驚いたはず。でも、驚きと興奮の勢いで変なあだ名を付けられるのでは?と思った私はグッと堪えた。おばばからもむやみにご先祖様の名前を語るなと言われていたし、、、


だって!私だって驚きだったんだよ⁉16歳の誕生日を迎えるまで知らなかったんだから!

確かにうちは由緒正しい(らしい)神社を守る家系で、小さな頃から『元服したら、お役目を果たさなくてはいけない』とかなんとか言われて育ってきた。私は『うわぁ、変なしきたりあるんだろうなぁ』と考えていたし、二十歳の成人式を迎えたらよく分からない催事でもするんだろう、くらいの認識だった事は認める。

けど、この前の16歳の誕生日におばばがいきなり元服の話をしだすんだからビックリした。元服ってなに?


「坂田 十時、今日からおぬしは退魔師じゃ」

いきなりおばばからそんなこと言われても何がなんだかさっぱりだよ。金太郎でも変なあだ名確定なのに、退魔師なんて言ったらきっと中二病認定されたんじゃないかな?私も退魔師は流石に恥ずかしい、、、


神社で憑きものを落とす事をお祓いと呼ぶ。その役目は神主であり巫女が果たす。お寺だと祈祷と呼ばれるし、退魔師なんていうのは陰陽師の流れを汲んでいるらしい。

なんでうちみたいな神社にそんなお役目が回ってくるのかと聞けば、なんでもご先祖様の坂田金時は化け物退治で名を馳せた武将 源頼光みなもとのよりみつに仕えていたらしい(ご先祖様すごい!源だよ⁉ あの源!)

ご先祖様は力自慢で(絵本なんかだと熊をも素手で倒す)その力を買われて家来になったんだって。頼光と共に鬼退治をしていたみたい。

退魔師なんて呼ばれてはいるけど、どうやらその主な役割は鬼退治らしい。(鬼⁉ オニって本当にいるんだぁ、、、)

私も一応、巫女見習いとして神様に使えている為か”見える体質”だったりする。けど、さすがに鬼はファンタジーだよ。人に直接、害を与える存在なんて怖すぎる。そんなのはアニメの中だけにしてほしい。実際、私が見ることの出来る”モノ”は塩を振りかければ消えるくらい儚くて、ナメクジより簡単に退治できてしまう。


ご先祖様の話だけなら、おばばのたわごとかと思ったけど、誕生日にその源頼光の子孫という人が訪ねて来たから信じるよりほかなかった。

「わたくし、こういう者です」

「あ、どうも」

高校生の小娘なんかにも両手を沿えて、ご丁寧に差し出された名刺には『特別職国家公務員 源輝みなもとてる』と書かれていた。

「退魔師の輝です。よろしく」

ハキハキとして凛々しい。服装も黒のスーツ姿で、アイロンの折り目が付いていてカッチリしている。公務員ってこうなのかな?うちの村役場の人なんてスラックスにポロシャツ姿だぞ?それより、退魔師って公務員なんだ、、、ほへぇー。

思わず誕生日のケーキ、輝さんにも出しちゃったよ。ショートケーキ3つ買っておいてよかった。(私が2つ食べるつもりだったのに・・・)


その人が言うには退魔師は同じ特別職扱いである防衛相に属しながらも独立した組織で、国家機密として一般にはその存在が秘匿されているとかなんとか、

「あなたも退魔師であることは隠してください」

(え?なに?)

誕生日ケーキを食べながら聞いていたから生返事してたんだけど、どうやら私は退魔師というものにさせられてしまったらしい。

流石に雲行きが怪しいから私だって断ったよ。

「勝手に決められても困ります!」

「十時や、コレは坂田家に生まれた者の務め」

おばばがショートケーキのイチゴをアタシの皿へ乗せてくれた。ありがとう。けど、イチゴなんかじゃあ、誤魔化されないよ?

「いや、私こんな話初めて聞いたし。それならおばばも退魔師だったの?」

「むろんじゃ。そなたの母に役目を譲るまではな」

「え?じゃあ、お母さんも⁉」

おばばは、こくりと頷いた。どうりで家の事をほったらかしにして出張がやたら多い訳だ。愛娘にも隠してたのかッ!


「私、学生だし、それに退魔師なんて怪しい仕事、、、」

「学生であることは問題ありません。自衛隊の防衛大学校と同じように学生でも自動的に特別職国家公務員扱いとなります。それに学費は免除となりますし、お給金も出ます」

「え?お金貰えるの?」

「ええ、」

輝さんの口の端がわずかに上がった。ちょろいなコイツとか思われたかもしれない。

「ま、まあ、、、私もアルバイトとかして、お小遣い欲しいなぁーなんて思ってたし?、、、ちなみに、おいくらほど?」

今度は明らかに口に笑みが浮かんだ。

「沢山です」

「たくさん・・・」

輝さんはケーキを頬張った。どうやら具体的な金額は教えてくれないらしい。これって成功報酬とかじゃないよね?

「でも沢山お金がもらえるって事は、それだけ危険って事でしょ?」

目の前で真っ赤なイチゴがフォークで串刺しにされた(この人、最後までイチゴをとっておくタイプか)もったい付ける様にゆっくりイチゴを味わってから、紅茶まですすって応えてくれた。

「誰にでもできる簡単なお仕事です」

一番関わっちゃいけないヤツじゃんそれー!

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