モモ 8
天人の話で盛り上がっている3匹を見てシュタっちが言いました。
「天人として認められれば、その蓬莱山にも行けるようになるのでしょうか?だとするとアナタ達は、ココとは違う時間の進み方をするという事です。それは、、、」
皆モモの方へ視線が向きました。
「ま、アタシはサルだし、人間に似せる必要は無いな」
「私も主が可愛いと言ってくれるのなら、このままでも」
「きじこ、変身苦手」
みな急にしおらしくなりました。
「ハイハイ、今はしま子さんを帰す方法を探しているんでしょー?修行を積んだとして本当に天人になれるかどうかは分からないし、どうやって蓬莱山に行くのか、その手段も分からないんだから、今は保留ってことで」
天人という糸口は掴みましたが、それが保留となると残された手掛かりはアレしかありません。
全員の視線がその箱へと向けられました。みな、あえて話題に出さなかったのです。その箱を開けてしまったら、どうなるか知っているのだから。
しま子が視線に気づいて、玉匣をテーブルの真ん中に置きました。
みな、一斉に飛びのきます。
「オイ!危ないだろ!触るなよ!」
「キケン!」
「ウーッ!」
シュタっちはモモをかばうように立ちふさがっています。その後ろからモモが呼びかけました。
「ごめんねー、しま子さん。あーしも流石にまだおばあちゃんになりたくないから」
「す、すいません」
しま子はゆっくり玉匣から手を離しました。みな胸をなでおろし、席に着きます。
・・・・・・
しばしの沈黙ののち、モモが口を開きました。
「開けてみる?」
・・・・・・
みな、判断を下しかねて、視線がお互いに飛び交っています。
「手掛かりがコレしかないっていうのがねぇ、、、そりゃあ、浦島さんだって開けるなと言われていても開けるに決まってるしぃ」
ゆきぽが鼻をツンと上に向け澄まして言います。
「私は開けないでしょうね。主から待てと言われれば、ずっと待ち続けます」
ディが返します。
「だったら開けないのが正解だったって事か?開けずに待っていれば、そのうち迎えに来てくれたのか?」
きじこが不満そうに言います。
「開けた時の仕打ちがヒドイ」
みな悩んでしまいました。
悩んでいても分からないものは分からないのです。
「中に何が入ってるか気になるよねー」
「だから、歳を取る煙だろ?」
「それ以外にも入っているかもしれないという意味ですよ」
「開けるの、命がけ」
「外で開けたらどうでしょう?煙がかからない様に長い棒を使うとか」
「開けた人にかかる呪いみたいなものだったらどうするしー」
「あ、入っているのは櫛です」
モモ達の疑問をしま子がさらりと答えてくれました。
「ホントに?」
「ええ、持たされる前に言われたので。この箱はたまくしげというものだそうです」
「うーん、、、」
モモは渋い顔になって考え込んでしまいました。
しま子がまた箱に手をかけました。
「開けないので、振ってみせましょうか?」
モモ以外みな席から立ちあがります。
「中の煙が漏れたらどうする!」
ディがわめきました。ゆきぽもきじこも頷いています。
シュタっちが案を出しました。
「ならビニール袋に入れるというのはどうですか?」
「おお!それなら」
玉匣は透明のビニール袋へ2重にして入れられました。
「じゃあ、、、」
しま子が玉匣を振りました。中でカラカラと小さくて軽いものが音を立てているようです。
「クシですね」
「クシだな」
「クシ」
「櫛でしょう」
「くしだと思います」
櫛だと言われていたので、みな櫛が音を立てている様にしか聞こえません。




