モモ 4
「あーし、ちょっと買い物行ってくるねー」
モモが出かけようとすると、ゆきぽが尻尾を振り駆け寄りました。
「私もお供します!」
「オイ、ちょっと待て、」
ディが突っかかります。
「お前、朝の散歩もモモと一緒に行ってるだろ」
うんうんと、きじこも頷いています。2匹とも不満の様です。ゆきぽは言い返しました。
「主が外に出る時はイヌが共に行き、守るのが務め。もちろん朝の散歩もです」
「ならアタシだってモモを守るために行くさ!」
きじこも頷いています。
ゆきぽは引きません。せっかくのチャンスにディときじこが付いて来てはモモと二人きりの時間が邪魔されてしまいます。
「あなた達は獣の姿に戻っても町中では目立つじゃないですか。その点、イヌの私ならなんの問題もありません。どうぞ護衛の役は私に任せて安心してください」
「おめぇだけ、ずりーんだよっ!」
ディは今にも飛びかからんという勢いです。きじこも腕をめい一杯に広げ戦闘態勢になりました。
「シャラップ!」
モモの鋭い声が響くと3匹は固まりました。彼女には逆らえません。
「みんな仲良く。オーケー?」
みな無言で頷きます。ですが心の中は闘争心で燃えていました。モモは呆れてしまいました。ため息をつき、その顔が台所の方に向きます。
「ねぇ、グランマ達は?」
皿を洗っていたシュタっちが答えました。
「裏の小川に洗濯に行きましたよ」
「婆さん達、しょっちゅう洗濯に行ってないか?」
きじこが頷きます。ゆきぽも珍しく同意見です。シュタっちは苦笑いしました。
モモが説明します。
「2人にとっては洗濯に行くことが、楽しみなんだよ。小さい頃からしてたみたいだし?」
「アレを使えばいいだろ?グルグル回るやつ」
洗濯機の事です。
「もう年だから、あーしもそう言ってるんだけどねー。けど、洗ってるのなんてタオルぐらいだしー、好きにさせてあげようかなって。グランマ達は洗濯が目的というより、二人で一緒に何かしていたいんでしょ。ほら、命の洗濯ってやつ?」
モモは冗談を言ったつもりでしたが、誰も笑いません。
シュタっちが申し訳なさそうに言いました。
「スイマセン。二人の仕事を奪っているのですね。私がいるばかりに、、、」
「私がとか、言うなし。そういうの、よくないよ。グランマすごく助かるって言ってるしー」
「鬼が居ても洗濯してるんだから、関係ねぇよな」
鬼の居ぬ間の洗濯にかけたディなりの励ましです。
「プッ、」
モモだけ吹き出しました。
「じゃあ行ってくるから、グランマ達によろしくー」
ゆきぽがモモの後を追いかけます。しかし手をかざして止められてしまいました。
「お店の中にまで入れないから、ゆきぽもお留守番だよ?」
ゆきぽの耳がシュンと垂れます。それを見てディはニヤニヤ笑いました。
モモが行ってしまうのを見送ってから、ゆきぽはディに向かって唸りました。
「ウゥーーーッ」
コイツはいつもモモとの間に入ってくる敵だ!最初に出会った時の直感は正しかったと思いました。
「お、やんのか?ああ?」
今日、この場で決着をつけてどちらがモモにふさわしいのか、ハッキリさせるのも悪くはありません。動物の世界は生存競争にさらされているのです。勝った方がメスをモノに出来るのです。二匹ともメスですが、、、
きじこはその様子を物陰に隠れて静かに見ていました。怯えているのであありません。二人が争って残った方を自分が仕留めればいい。出来れば相打ちくらいに弱ってくれると倒しやすい。そう考えているのです。ああ、恐ろしい。
更に恐ろしいのはシュタっちでした。台所に立っていた彼女はその手に包丁を握り静観していたのです。今、この場で3匹まとめて仕留めてもいいと、、、モモを手に入れる為ならやりかねません。鬼畜の所業です。
「ハァー、やめだ」
ディが息を吐き、手を振りました。
「怖気づいたのですか?」
ゆきぽは警戒を解きません。ディに、更には残りの二人にも気を配っています。
完全に警戒を解いているディは言いました。
「そんな訳ねぇだろ。けど、お前が怪我したらモモが悲しむから、やめだって言ってるんだ」
「なぜ、私が負ける前提なのです!」
ゆきぽがまた唸り声をあげます。
ディは首を振りました。ゆきぽだけでなく、きじことシュタっちにも言いました。
「みんな仲良く」
モモの言葉です。それを言われると何もできません。みな戦闘態勢を解きました。
「きっとこの中の誰かが残ってもアイツは喜ばない。全員いないといけないんだ」
ディは提案しました。
「協定を結ぼうじゃねぇか。みなモモの事が好きなんだし、平等にモモと2人でいる時間を作ればいい」
次の事が決まりました。
・ゆきぽは散歩の時間モモを独占する。
・ディは日向ぼっこしている時間モモを独占する。
・きじこは髪をとかしてもらっている時間モモを独占する。
・シュタっちは一緒に家事をしている時間モモを独占する。
決めた時間の間は何人たりとも二人の間を邪魔しない。
ディが頷くと、皆それぞれに頷き返しました。
「ただいまー」
丁度モモが帰ってきました。
「お邪魔します」
聞きなれない声に皆モモの元へ駆けつけます。
玄関には知らない人物が立っていました。モモがあっけらかんと笑って言いました。
「こちら、しま子さん。なんか困ってるみたいだしー?連れて来ちゃった。」
モモが可愛く舌を出しました。それを見て、イヌは頭を抱え、サルは天を仰ぎ、キジは目が点になり、オニは顔を覆いました。
「みんな仲良くしてあげてね」




