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てる 9

「やっぱり鬼って怖いですね。頭が付いて完全な鬼になるって、ようは考える知恵を得るって事ですもんね」

「そうね。だから完全な鬼は首を切り落とすしかないのよ。頼光配下の四天王に渡辺 綱(わたなべ の つな)という武将がいたんだけど、彼は鬼と戦った際にその腕を切り落としたの。けれど、鬼は腕を取り戻しに来て、奪い返した腕は元に戻ったそうよ」

「それってやっぱり邪気が元になっているからですよね?」

「ええ、普通の生物とは違う。並大抵の事では倒せないのよ。だから武士の様に力を持たない一般人はどうしたと思う?」

「やられっぱなしじゃないですか」

「犠牲者を少しでも出さない為に、鬼を神として祀ったのよ。よく昔話しでもあるでしょ?村の娘を生贄に捧げる話が」

「うわぁ、そういう事情だったんですね」

「だからこうして私達の仕事が生まれたんでしょうね」

「という事は私達って人身御供なんですか?」

「そうはならないでしょ?私達には祓える力があるんだから」

「でも待ってください。頼光さんは首をはねた後どうしたんですか?たいま・・・その頃はまだ同士もいなかったんでしょ?」

「その頃、私達に代わる存在として居たのは陰陽師でしょうね」

「悪霊退散ってやつですか?」

十時が人差し指と中指を立てて胸の前に構えた。


「私達より、そっちの方が有名よね。その悪霊退散という言葉だけど、退散というのは集まっている物を散りぢりにするという意味よ。つまり鬼の五体をバラバラにするという事ね。根本的に祓うわけではないのよ」

「祓うんじゃないですか?」

「ええ、酒吞童子の切り落とした頭はどうなったと思う?」

「分かりません」

「その首は平等院の宝蔵に収められたの。祓うのではなく、封印と言った方がいいかもね」

「平等院って奈良にある?」

私は首を振った。

「平等院鳳凰堂は京都の宇治にあるお寺よ。アナタそれ、奈良の平城宮と勘違いしてるでしょう」

十時はワザとらしく視線を逸らした。そして誤魔化す様に質問する。

「そ、その頭って今もあるんですか?」

「宇治の宝蔵は実際に平等院へ行ってもそこには無いわ。一般には物語に出てくる架空の宝物庫とされているけど、多分どこかにはあると思うわよ。秘匿されてるの。私達と同じ様にね」


「他に残っているものってないんですか?」

「兜は酒吞童子が食らいついた際に壊れてしまったそうよ。神便鬼毒酒と打銚子については後世に記録は残ってないわね」

「神様が居たっていう証拠は残ってないんですね」

「残っているモノと言えば、その首を切り落した刀が今も伝わってるわ」

「千年前の話ですよね?」

「天下五剣って知ってる?日本の刀剣の中でも特に名刀と呼ばれる5つの刀の事だけど、その内で一番古い刀、童子切安綱どうじぎりやすつなは源頼光が酒吞童子の首を切り落とした時に使った刀だと伝えられているわ」

「それって、輝さんの家の家宝ですか⁉」

「残念ながら私の家には伝わってないわね。どういういきさつなのかは詳しく知らないけど、刀剣の収集家の手に渡っていったみたいよ。その一人、室町幕府13代将軍 足利義輝、彼は剣豪将軍とも呼ばれ名刀を収集していたそうよ。永禄の変で殺害される際には集めていた刀を持ち出して応戦したと言われてる。そこに童子切安綱もあったみたいね」


十時の顔を見ると小難しい顔をしていた。どうやら歴史は苦手らしい。

「豊臣秀吉は知っているでしょう?彼も刀のコレクターだった。天下人の権力にものを言わせ相当な数の名刀を収集していたようね。その中に童子切安綱も含まれていた。鬼を切ったいわくがあったから、怖がって手元には置いてなかったみたいだけど。そのおかげで大坂夏の陣では大阪城と一緒に焼け落ちる難を逃れたそうよ」

十時はやっぱり小難しい顔をしたままだ。最近はゲームやアニメの影響でこの手の話を女の子の方が喜んで聞いたりするんだけど、、、うちの職場でも『あの童子切ですよね!』と、目を輝かせて聞いてくれる子はいるというのに。


「焼失の難を逃れた童子切安綱は徳川御三家の一つ、松平家に渡ったの。それから長い間、松平家にあったんだけど、昭和に入って刀を集める個人収取家の手に渡ると、紆余曲折を経て文化庁が買い上げたのよ。今は国宝に指定され上野の国立博物館に納められているわ。上野といえばいつもお祓いに行っている寛永寺のあるところ。上野公園一帯は元々寛永寺の境内だったのよ。鬼門を守っているその場所に童子切安綱も納められているのは、偶然とは思えないでしょ?」

返事が無いので隣をみたら十時はスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。

(ほんと子供みたいね)

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