てる 6
品川駅から乗り込んでくる乗客を眺めていると、十時が思い出したように言った。
「あ、忘れてた。」
彼女がしゅーまい弁当を取り出す。
「知ってます?しゅーまい弁当は品川を超えてから食べるのが通なんですよ」
「通もなにもアナタ今、忘れてたんでしょ?」
照れ笑いをして、お弁当が開けられる。
「東京駅から品川まであっという間じゃないですか。だから乗ってくる人が落ち着く品川を超えてからの方がお弁当もゆっくり食べられるんです」
新幹線は発車した。
それを待っていたように大きな口を開け、しゅーまいが頬張られる。
「んぐ、んぐ、、、そお、ねっとに、んぐ、かいて、ありました」
完全に旅行客丸出しで恥ずかしい。
「だったら新横浜まで待ったら?あそこも直ぐに着くわよ?そこを超えたら後は名古屋まで止まる駅なんて無いわ」
「新横浜まで待ってられませんよー」
もう一つ、しゅーまいが摘ままれると今度は私の口元へ運んできた。
「はい、あーん」
(本当にあの人そっくり)
時子さんも何か食べている時は、私にまでソレを食べさせようとしてくる。子供扱いされている様で止めてほしかったけど、あの人は私が食べるまで諦めない。まるで食べないこっちが悪いみたいに喚いて、早く早くとせかしてまでくる。
多分この子も同じ展開になるだろうと、私は最初から諦めてしゅーまいを口にした。
「・・・・・・おいしい。」
「ご飯も食べます?」
「いらないわ。朝ごはん食べてきたじゃない」
「今日は美味しいものいっぱい食べるつもりなので、少しだけにしたんですよ」
十時は大きな口を開け、ご飯も頬張った。
ゆっくり食べられるとか言ってた割に、彼女は新横浜駅に着く頃にはお弁当を平らげてしまった。
(若いっていいわね、、、)
食後のお茶を飲みながら十時が聞いてきた。
「それで、どうやって退治するんですか?」
新横浜駅を発車するのを待って、私はまた語ってあげた。
「鬼が私達を掴めるのなら、こっちも掴めるって事よ」
「じゃあ、殴って?」
十時がシュ!シュ!とボクシングの様に軽く拳を打ち出して見せる。
「殴ったぐらいで倒せると思うの?きっとアレは痛みなんて感じていないわ」
「じゃあ、銃とか?」
今度は手でピストルを作って見せた。考えが単純過ぎる。私は首を振った。
「私の祖先、頼光は鬼退治で名を馳せたわ。巫女でもない武士がなぜ退治できたのか?それは物理攻撃の効く完全な鬼だったからよ」
「刀で切ったって事ですか?」
今度は刀を握る仕草をしている。
「そう。」
「でも刀より銃の方が強いですよね?」
「銃弾くらいじゃ退治できないのよ」
「なぜ?」
「鬼は邪気で出来ているのよ?複数の邪気が寄り集まっていると考えれば分かりやすいわ」
「つまり、銃の玉だと一つの邪気にしか当たってないって事ですか?」
「簡単に言うと、そうね。銃じゃなくロケットランチャーくらいなら粉砕出来るでしょうけど」
「もう自衛隊の仕事じゃないですか、それ」
「けど、それだって粉砕するだけなのよ。祓ったことにはならない。だから私の見た首なしの鬼も刀でバラバラにして、個別に巫女が祓ったのよ」
「えー、、、」
十時が顔を引きつらせている。
「アナタの祖先だってそうしてきたのよ?酒吞童子と戦った話は聞いたことない?」
「あー、、、おばばから、なんとなく?」
十時がまた肩にもたれかかってきた。耳元でささやくように小声で言う。
「輝さん、、、昔ばなし聞かせてください」
(子供じゃないんだから、、、)
どうせ名古屋まで時間はある。私は語って聞かせてあげる事にした。




