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昔のはなし

「むかーし、むかし。あるところにサルとカニがいました。カニは大きなおにぎりを持っていました。それが羨ましかったサルは拾った柿の種と交換しないかとカニに持ち掛けます・・・・・・いや、ちょっと待て」


まだ話し始めたばかりなのにディが途中で止めてしまったので、きじこはムッとしました。続きを促す為、枕代わりにしているディの胸を頭で叩きます。

ぽよん!ぽよん!

「いいか?きじこ。おかしいと思わないか?」

「なにが?」

「だってよぉ、大きなおにぎりってなんだよ。カニだぜ?大きなものなんか持てるかよ。それどころか普通のおにぎりだって持てはしないぜ?」

ディは獣人なので人間が言うところの”お約束”というものがよく分かりませんでした。人間なら『そんなところ突っ込むな!童話だろ』と流してしまうのですが、ディは気になってしょうがありません。


そばで寝ていたゆきぽが大きなあくびを一つして応えました。

「ふぁーぁ、うるさくて眠れやしない、、、それ、大きなおにぎりを持てるほど、大きなカニだったのでは?」

「海にいるような奴か?」

「ええ、」

「だったら何でサルと一緒に居るんだよ。海にいるデカイ奴は陸に上がれないだろ?サワガニじゃあ、あるまいし」

「ディ、鋭い!」

向こうでマニキュアを塗っているモモが言ったようです。こちらに顔を向けていませんが耳をそばだてていたのでしょう。背を向けたまま語り始めました。背中で語る女です。

「さるかに合戦に出てくるカニは、サワガニじゃないかって言われているよ。理由は親子で一緒にいるから。カニって普通は海で産卵するんだ。卵からう化したものはゾエアって呼ばれてて、あ、プランクトンみたいなものだよ。脱皮を繰り返すことで今度はメガロパって呼ばれるようになるの。その期間の子ガニって親の見た目とは似てないの。それに海の中を漂ってるから親子で一緒にはいないんだよ。対してサワガニの子共は卵からカニの姿のまま生まれて、小さいうちは親ガニと一緒にいるの。だから親子でいる時点でサワガニが最有力候補ってわけ」

モモは博識なのです。夏休みの自由研究として調べた事があるのでした。


しかし、きじこは不満そうです。

「ネタバレ禁止」

「ごめん、ごめん」

モモはまたマニキュアを塗り始めました。

ぽよん!ぽよん!

きじこが話の続きを促します。


「サルは言いました。『この柿の種を蒔けば美味しい柿の実がなるよ』・・・ちょっと待ってくれ」

また途中で止めてしまいました。

「アタシ、知ってるぞ。美味しい柿は人間が育ててる樹にしか成らないんだ。山に生えてるような柿は全部、渋いんだよ。きっと種をまいても実るのは渋柿だぞ」

「それな。」

モモがまた口を挟んできました。

「柿は元々、全部渋柿なんだよ。ある時、偶然甘い柿が出来て、人間はそれを大事に増やして育ててるの。元は渋柿だから種を蒔いてもほとんどは渋柿になるよ。何でかと言うと、甘柿になる為の遺伝子が劣勢だからなんだけど、、、」

勘のいいモモはきじこが睨んでいるのを背中に感じて口を閉じました。


しかし、さっきから話に参加したくてしょうがないシュタっちが口を開きました。

「甘柿というのは日本発祥だと言われていますね。海外のものは、ほとんど渋柿なんだとか。だから渋柿がジャムの様に柔らかくなるのを待って、渋みが抜けた物をスプーンで食べるのが一般的だそうです。日本人が硬い柿を食べていると言うと驚かれるそうですよ」

シュタっちもまた博識なのでした。


ディが言いました。

「アタシは固い方が好きだな」

ゆきぽも応えます。

「私も硬い方がいいですね。食べやすいので」

「きじこはどっちが好きだ?」

ディがふくれっ面のきじこの頬を突っついて聞きました。

「柔らかいの。それしか食べたことない。柔らかくなって、落ちたやつ」

キジは飛ぶのが苦手なのです。木の枝に実っているものより、地面に落ちている物を食べています。

「グランマ達も柔らかいのが好きだなー。あーしはどちらかといえば硬いのかなー。きじこも今年の秋は固い柿を食べられるよ。楽しみだね」

モモはきじこの機嫌取りを忘れません。きじこは笑顔になりました。

「うん。」

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