モモ 2
モモがイヌに向かって可愛く指をさして言いました。
「ゆきぽ!」
イヌは指をさされたので自分の後ろに誰かいるのかと振り向きましたが、誰もいません。首をかしげました。
「ゆきぽ、散歩いこっか」
散歩という言葉に反応し、イヌは尻尾を大きく振ってモモに駆け寄りました。
「行きます!お供させてください!」
散歩に行けるのは嬉しかったのですが、イヌは首をかしげて聞きました。
「ゆきぽとは何ですか?」
ギャルは時々分からない言葉を発するのです。イヌもモモの言葉使いには戸惑う時がありました。
「ゆきぽは、ゆきぽだし。キミの名前だよ」
ゆきぽは満面の笑みになりました。モモが名前を付けてくれた!これで自分はちゃんとした下僕になれたのだと。嬉しさのあまりふわふわの尻尾はいつも以上にブンブンと振れました。その尻尾にキジがじゃれます。
サルが聞きました。
「、、、おい。ゆきぽってなんだよ」
サルは羨ましかったのです。イヌだけ名前を付けてもらった事が。自分には?という意味で聞いたのです。
しかしモモは名前の説明をしました。
「ゆきぽは毛が真っ白じゃん?だから雪の白から、ゆきぽ」
「ぽってなんだよ、、、」
サルは素直に自分も名前が欲しいと言えませんでした。
尻尾にじゃれていたキジがモモの事をじっと見つめます。モモは頭を撫でて言いました。
「キミはきじこだよ」
ムフーと満足そうに、きじこは鼻から息を吐きました。その様子を見てサルはまた羨ましくなりました。素直になれず、きじこの方に突っかかります。
「キジだからって、きじこでいいのかよ。そのまんまじゃねぇか」
きじこはサルの事を見つめました。そして勝ち誇って言いました。
「地味な方がいい。分かる人には分かる」
野生でもメスのキジは地味なのです。万人に媚びを売ることをしません。分かってくれる人にだけ、モモにだけ好いてもらえればそれでいいのです。
オニはその様子を遠くの方でホウキ掃除しながら眺めていました。掃きながら、徐々にモモの方へ近づいていきます。掃除をしているフリをして、実は彼女も名前が欲しくてしょうがないのでした。オニも素直じゃないのです。
側に来たオニに気付いてモモが言いました。
「キミはシュタイン・ドッチ。略してシュタっちだから、よろしくー」
こんな自分にも名前を付けて家族の様に接してくれる、、、シュタっちは泣いてしまいそうになりました。目はウルウルです。
サルは面白くありません。
「なんで外国人の名前なんだよ、ケッ」
悪態をつきます。モモは応えました。
「だってー、シュタっち髪は金髪だしー、目は青いしー、肌は白くてめっちゃ綺麗だしー、スタイルも良くて外国のモデルみたいじゃん?」
シュタっちは段々と恥ずかしくなってきて、その白い肌は真っ赤になりました。身に着けていたエプロンで顔を隠します。
サルがからかいました。
「赤鬼じゃねーか」
「あーしも髪色変えようかなぁ」
モモはピンクに染めている自分の髪をクルクルと指で巻いています。
サルが不満そうに、それでいて物欲しそうにもじもじしだしました。残っているのは自分だけだ。アタシにも名前を付けてくれないのかと。普段の態度とは、かけ離れた姿です。乙女です。
モモは心の中でニヤリと笑いました。本当はサルが名前を付けて欲しがっているのは分かっていたのです。普段のサルは素直ではないので、もったい付けていただけなのでした。策士です。
「キミはディだよ」
モモはわざわざサルの顔を覗き込み、鼻をチョンと突っついて言いました。
モテテクです。男なら今ので落ちていました。メス猿も落とされました。その鼻は見る見るうちに真っ赤になっていきます。
「サルだな」
シュタっちがさっきのお返しとばかりに言いました。
恥ずかしさを隠すため、ディがわめきます。
「ディってなんだよ!アタシと全然関係ないだろ!」
「関係あるしぃ」
モモはスマホを取り出し操作すると、ディに見せました。そこに映し出されていたのは、海賊の王様になる事を夢見る国民的人気漫画の主人公。
「あーし、オタク君にも優しいギャル目指してるからぁ、漫画も読んでるしー」
「モモさんは誰にでも優し過ぎます」
うんうんと、きじことシュタっちがゆきぽの意見に同意して頷きます。
その後ろでディが地団駄を踏みました。
「ディって英語のDかよ!1文字じゃねぇか!そんなの名前でも何でもない!」
アハハ!とみんなで笑い合いました。
モモ達の賑やかな日常はこうして過ぎていくのでした。




