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#92 ゆきあにラブレター!? ☆

「最近ずっと雨だねー」

「梅雨だからね」

「雨ばっかりだとちょっと憂鬱だよね」

「でも心愛ちゃんはなんかご機嫌だね」

「今日は香織さん、プリン作ってくれるらしいから!」

「心愛ちゃんは単純でいいなー」

「いいでしょ、別に」

放課後、帰り際の廊下を歩きながら、ぼくはいつもの5人と一緒に話している。


「プリン…いいわね」

「ふゆかさんたちも来る?」

「え? いいの?」

「うん。ダメかな?」

「あ、いや、うっ、ううん。全然ダメじゃないわよ!」

「わたしもいいんですか?」

「うん、葵さんもよかったら来てね」

「ありがとうございます、ゆきあくん」

そんなふうに和やかに話し続けながら足を進め昇降口までたどり着くと、下駄箱を何気なく開ける。


「ん?」

すると、風に流され下駄箱から1通の手紙がはらりと床に落ちる。

綺麗に折りたたまれていて文字は読めない。

床に落ちた手紙に「え?」と、驚いた。


「こ、これって、ラブレター!?」 

ぼくはものすごく動揺していた。

他のみんなも「ゆきあくんにラブレター!?」とびっくりしている。

ぼくはその手紙を拾い上げ、2つ折りされた手紙を開き、中身を確認する。

そこには色味のない淡々とした文字で『お話があります。放課後、教室で待っています』と、ひどく事務的に書かれていた。


「ゆきあくん、それって告白しますって感じのラブレターだよね?」

「これってそうなの…!?」

ぼくは手紙を心愛さんたちに見せた。


「う~ん…。たしかにラブレターというにはちょっと堅すぎる気もするけど、照れ隠しの可能性も…。ねえゆきあくん、誰か心当たりない?」

「心当たり?」

「うん、わたしたちが知らない間に他の女の子と知り合ってない?」

…正直、多すぎて誰か皆目見当がつかない…!

すると、心音さんがぼくにこう聞いた。


「でも、もし誰かがゆきあくんに一目惚れしたとして、この手紙が本当にラブレターだったら、ゆきあくんはどうするの?」

「行くけど、断るかな…」

その子がぼくに好意を持っているとは思えないけど、ぼくには付き合うことが出来ないから断ろうと思う。


「そっか。ちょっと安心しちゃった」

「安心?」

「あ、いやなんでもないよ!」

「じゃあ、ぼく教室に戻るからみんな先にぼくん家行っててね」

そう言って、ぼくは教室へと戻っていった。




「しかし、本当に誰なんだろう…」

ぼくは教室で手紙の送り主を待っていた。

名前が書かれていないから、誰かも分からない。


「まあ、でもラブレターだとしたら、断るつもりだけどね…」

「ー何がなの?」

「ん?」

独り言として呟くと、反応が帰ってきた。

その声に振り返ると、凛香さんが腕を後ろにして立っていた。


「うわぁ、凛香さん!?」

「手紙読んでくれた?」

「手紙? はっ、もしかして、凛香さんがこの手紙の送り主?」

「うん、そうだよ?」

凛香さんはきょとんとした表情でぼくを見つめていた。


「うふふ、手紙読んでどう思った? ドキドキした?」

「な、なんで嬉しそうなの!?」

「ゆきあくんがどう思ったのか知りたいから~」

「その前にどうしてぼくの下駄箱に?」

「ゆきあくんにラブレターっぽい手紙を入れたらどういった反応するか気になったの。どうだった、ゆきあくん?」

…ぼくはそれを聞いて、思わず膝から崩れ落ちた。


「どうしたの、ゆきあくん!?」

「いや、結末があっけなさすぎて…」

「うふっ、ごめんなさい」

凛香さんは微笑みながらそう答えた。


「ところで、お話しって何かあるの?」

「えっ…? えっと、その…。あるにはあるんだけど…」

ぼくが聞くと、凛香さんは何やらもじもじしていた。


「じ、実はわたし、今日傘持ってくるの忘れちゃったの」

「えっ、そうなの!?」

「うん、その…、ゆきあくんが嫌じゃなければなんだけど…」

凛香さんは恥ずかしそうにしつつも、大きな声で言った。


「わ、わたしと相合傘してくれませんか…?」

「あ、相合傘…?」

「うん、いいかな?」

「う、うん…」

香織姉とはたまに相合傘してたけど、他の人とするのは初めてかも…。

ぼくは恥ずかしいけど、断るわけにもいかないので、承諾した。


「うふふ、ありがとう…」

「凛香さん、そういうことなら、直接言っても良かったのに…」

「ゆきあくんにラブレターが届いたって知ったらどうなるか気になったんですから…」

「そうなんだ…」

凛香さんってば、本当にいたずら好きなんだから…。


「むっ、ゆきあくん、今失礼なこと考えたでしょ?」

「い、いやそんなことないよ!?」

「もう、ビンタするよ。えいっ」

「ひゃん…」

凛香さんはにやにやしながらぼくを軽くビンタした。


「うふふ、ゆきあくんかわいい…」

「もう凛香さんってば…」

「ごめんなさい♪ それじゃあこのままゆきあくん家に寄っていっていい?」

「うん、いいよ」

「ありがとう~」

ぼくと凛香さんは相合傘で家に帰ることになった。




「そ、それにしてもゆきあくん身長小さいから傘が低く感じるね」

「うん、そうだね…」

「もうゆきあくんってばドキドキしすぎだよ…」

「いやだってこんなのドキドキせずにいられないよ…!」

「うふふ、本当にかわいいよ、ゆきあくん…」

下校中も、凛香さんにずっとからかわれるのであった。




読んでいただきありがとうございます。


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