#28 仲良し姉弟の朝 ☆
―ピピピ、ピピピ、ピピピピピ。
「…ん、んん…」
目覚まし時計が、ぼくの寝ぼけた頭を叩き起こす。
身体をなんとか動かして、目覚まし時計のスイッチを押し、鳴り止めた。
目覚まし時計を見ると、針は6時30分を示していた。
しかし、目覚まし時計を止めた右手とは反対の左手が、何かを触っていることに気が付いた。
「ん?」
指先を少しだけ動かしてみると、柔らかくて心地いい感触が伝わってくる。
とても気持ちよくて、ずっと触っていたいような欲望に駆り立てられる。
その感触の正体を確かめると、香織姉のおっぱいをがっしりと掴んでいた。
「も~、だめだよ、ゆきあくん…」
「う、うわあー!」
「うふっ、おはようゆきあくん」
「お、おはよう香織姉…」
「もう~、ゆきあくん。女の子にそんなえっちいことはダメだからね~」
にこやかに笑いながら、優しい声色でぼくにそう告げる。
「そんな悪い子は…、おはようの、ぎゅ~!」
香織姉はぼくを力いっぱい抱きしめた。
「か、香織姉! やめて!」
「だ~め。わたしのおっぱいに触った罰です。ゆきあくんにお仕置きで~す」
ますます、ぼくの身体を抱きしめてくる姉さん。
「いやー! 助けてー! もう許してー!」
「うふふ、許さないよ~」
ぼくはただ、子供のように喚くだけだった。
やっと、お仕置きから解放され、朝食の時間である。
「はい、ゆきあくん。今日はホットサンドだよ~」
「わ~、おいしそうだなぁ…」
なんだろう、朝からドッと疲れてしまった…。
「あれ? ゆきあくん、ちょっと元気がないみたいだけど、どうしたの? はっ! もしかして、わたしがさっきお仕置きしたから!? ごっ、ごめんなさい、わたし、そんなつもりじゃなかったから…!」
「あー、違う違う! そんなんじゃないよ!」
目に涙を溜めながらそう言ってくる香織姉に、必死に弁解するぼく。
「ほっ、ほんと? えへへ、わたしってば早とちりしちゃった。でも、どうして元気がないの?」
「別に、元気がないわけじゃないよ。その、朝からちょっと疲れちゃったから…」
「えっ!? じゃあやっぱりわたしのせい…? ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
「香織姉は悪くないよー! そもそもぼくが原因だから気にしないでよ…」
「そ、そっか! うふふ、ゆきあくん優しいね…」
よしよし、とぼくの頭を撫でる香織姉。
「香織姉…」
「あっ、ゆきあくんがいつも通りになったよ~。これでばっちりだね」
ぼくの反応で安心したのか、香織姉はまた笑顔になる。
そのまま、香織姉はキッチンに戻って、ぼくと自分の分のミルクを取りに行く。
「それじゃあ、食べよっか~」
ぼくの前の椅子に座って、向かい合って一緒に手を合わせる。
二人で「いただきます」と言って、ぼくは香織姉が作ってくれたホットサンドに手を伸ばした。
ホットサンドには、塩加減が絶妙な卵とベーコンが入っている。
相変わらず、香織姉の料理はピカイチだ。
疲れが一気に吹っ飛んじゃう。
「さぁ、ゆきあくん! 学校に行くよ!」
朝食も終えて、ぼくたちは学校へと向かった。
今日は、心愛さんと心音さんは一足先に学校へ向かったらしい。
「ねえ、ゆきあくん。わたしたちってまわりからどう思われているんだろうね? 仲が良い姉弟だと思われてるのかな?」
「そうかもね。でも、ぼくたちみたいなのは珍しいのかな?」
「どうして?」
「クラスでも、特に、異性の兄弟がいる子は、あまり仲は良くない子が多いみたい」
「あ、そう言えば、わたしのクラスでも、そういう子がいるみたい」
「でも、そんなに世の中の姉弟は仲が悪いのかな? それとも、それが普通でぼくたちがおかしいのかな?」
「でも、ゆきあくんみたいな弟なら別みたいだよ」
「えっ!? なんで?」
「何でも、その娘達が言うには、ゆきあくんは理想の弟だって。優しくって、可愛くって、自分の言う事を素直に聞いてくれるって」
「何だか、ぼくってペットみたいだね…」
「でも、そんなのどうでもいいよ、姉弟が仲が良くて悪いわけじゃないから。わたしたちは、わたしたちだからね」
「うん、そうだね」
香織姉の言葉に、ぼくは頷いた。
「あ、だけど、ゆきあくんがわたしの弟でラッキーだったかな。ちょっと気弱だけど、優しいし、小さいし、かわいいもん。ゆきあくんはわたしの自慢の弟だよ♪」
そう言いながら、香織姉が笑顔になった。
「うん、ぼくも香織姉が、姉さんでラッキーだよ。天然でドSだけど、穏やかで、かわいくて、いつもぼくに優しくしてくれる。香織姉はぼくの憧れの姉さんだよ」
そんな事を言うと、ぼくは自然と笑顔になった。
「うふっ、ありがとうゆきあくん。―でも、ゆきあくん、またわたしのこと、天然っていったよね?」
「ふぇ!?」
香織姉にいたずらっぽく笑顔でそう言われた。
「うふふ、別にいいよ。これからもわたしたち、仲良しな姉弟でいようね、ゆきあくん!」
「う、うん」
ぼくたちは笑顔になると、手を繋いで、学校への道を歩いて行った。
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