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第七話 リーシャ・マクスランダは躊躇する。

今回、半分まで書きあげていた原稿データをミスって削除してしまい、午前中に投稿したかったのが午後になってしまいました。間違えて削除してしまった瞬間、うわあああああああ!!と泣きたい気分でした...。いや、泣くよ。ほんとに。



「長いまつ毛だな......。」


 目の前の白いベッドに横たわる美男子の艶やかで長いまつ毛を間近で観察する。


「戦闘時にこの長いまつ毛で風魔法をかけて、さらに両手から他属性の魔法を発動し、スパイラル効果を一直線へと変換できたならば....」


「はいはーい。マクスランダ妹!医務室でぶっ倒れている生徒のまつ毛見ながら変な魔法を構築しないっ。」


 ベッドを囲っていた水色のカーテンがシャッと開き、そこから白衣を着た長い金髪の男が入ってくる。


「ミラ先生。」


「ほら、そこ場所あけて。今から回復呪文をかけるから。あ、そうそう、彼は倒れた時の打撲だけだから意識が回復したら帰っていいからね。」


 言われて横に避けると、ミラ先生が手のひらをフィンにかざす。先生の手のひらから温かな光が溢れフィンの身体へと吸い込まれていった。


「はあ。打撲...。あのぅ、ミラ先生。フィン・ラッテオは何故倒れたのでしょうか?

 いつもならあんな模擬試合程度で倒れるようなヤツじゃないのに。」


 納得いかず眉を寄せて先生を見上げると、おや?とミラ先生は眉を上げた。


「試合を見ていた担任からは、集中力が欠如しているように見えたと聞いたよ。おそらくそのせいで無駄に魔力や体力を使い体がふらついて倒れたのだろう。まぁ、あとは追加で言うならば......睡眠不足だな。」


 集中力欠如に睡眠不足?


 もしかして、集中できなかったのはフィオナ様とテナード殿下が一緒に観覧にいらしていたからか?

 睡眠不足...それは、もしかして、いや、たぶんアレだな。兄上からも周囲からもニブいだのなんだの浮いた話の1つぐらいないのかと色恋関係には散々な言われような私でもこれはわかるぞ。これはアレだ!国語辞典を丸暗記しようとしていた時に75ページあたりに載っていたアレだ!


 【恋煩い】ヨミ...こいわずらい


 私の脳内で大変よくできましたの花丸ハンコがペッターンと押された。


「なるほど。理解した。つらかったわねフィン。」


 そうか。フィオナ様への想いでフィンは毎日寝られないのか。


「ん?なんだ?マクスランダ妹は、ルッテオとは仲があまり良くないと聞いていたが違うのだね。

 君が医務室に付き添って来たことに驚いたけど、実は仲が良かったのか。

 だったら、ルッテオが目を覚ましたら話でも聞いてやってくれないかな。試合に集中できないほど睡眠不足になるほど何か気になることがあるのかもしれない。もちろん先生も彼の相談にのるよ。

 先生は今から職員会議があるから出るけど、帰る時はそこの魔道通話機でコールしてくれ。君たちが出た後、遠隔操作で医務室を施錠するからね。」


 そう言ってバタバタとミラ先生は医務室から出て行ってしまった。

 さっきの授業でケガをした生徒達も先生の治癒魔法を受けてすでに帰ってしまったらしい。カーテンを開け放してある周りのベッドを見ても誰もおらず医務室はがらんとしている。



「ん......。」


 背後からした小さな声に振り向くと、寝ていたフィンの身体がピクンと少し動いた。


「起きたのか?」


 私が問いかけるがフィン・ラッテオは何も答えない。


「まだ起きてはいないのか......。」


 どうやらまだ意識は覚醒していないみたいだ。

 しかし、さっきの反応といい、じきに目を覚ましそうではある。


「やるなら今がチャンスだな。」


 私は降ろしていた自分の拳をグッと握った。


ーーー相手を屈服させる魔法を発動させる魔法陣......。


 精神に働きかける類の魔法というものは、かける相手が精神的に弱っているときや無意識のときがかかりやすい。

 書棚にあった本で魔法陣を見つけたが、今日までなかなか使用することができなかったのはこのためだ。

 起きているときは普通の人でもかかりにくいが、フィンのような魔力の高い人物なら意識がある時なんてなおさらかかりにくい。


 それに躊躇していた。

 こんなやり方は卑怯、かもしれない。

 だけど、だけど、



ーーー『楽しみにしてるぜ、リーシャ。できるものならやってみな。』



「くっ、一度だけ...。一度だけあんたに勝った気分になってみたいだけなんだ。すぐに、すぐに解除するから...。

 これが終わったら、納得したら、今度はお返しにあんたの恋を応援してあげるから。」


 指先に魔力を集める。

 何もない空間にすっと光の魔法陣を描く。


 魔法文字のφは相手の心臓を射抜く、そしてαは力の大きさを、⁑は優劣を......。


 私は震える指先でゆっくりと魔法陣に魔法文字を描き込んでいく。


 でも、こんなことをして自分は本当に満足なんだろうか?ただ、「リーシャにはかなわない」というフィンからの言葉が欲しいのか?何か、何か間違えてない、私......?

 そんなのただの子供の我儘みたいじゃないか。


 何かが違う。


 あとは力を解放するだけの魔法陣を前に私は固まってしまった。


「ん......?」


 そのときフィンの瞼がゆっくりと持ち上がった。


 起きてしまう!!


『エ、魔法陣解放エンフォス......!!』


 魔法陣が私の命令によって強く発光する。


「あっ!!しまった!発動させてしまっ......」


「な、なんだ......!?」


 慌てる私の声に、フィンが目を見開いた。


 その瞬間

 あたりは白い光に覆われ何も見えなくなった。


 

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