第四話 リーシャ・マクスランダは納得する。
◇
「ファイア!!」
何もない空間で、ボウッと強烈に立ち上がる炎。
「プレストコントロール!レフト!!」
ぶふぁあああああ!!
私の指示に合わせて炎の球が動き、左側へとすごい勢いで飛んでいく。
そして壁にぶつかる寸前で止まり爆発、まるでなにもなかったかのように消滅した。
「ふう。今日はこれぐらいでいいかぁ。」
フィオナ様とフィンが帰ったあと魔法部屋でテスト対策として魔法の猛特訓をしていたが、もうすぐ夕飯の時刻になる。そろそろ切り上げて部屋に戻ろう。
「それにしても、アイツがフィオナ様を好きだったなんてね。分不相応......ってわけでもないか。
フィンのやつも代々有名な剣士をだしている侯爵家の嫡男だっけ。」
この国で歴史上有名な黒の騎士や聖剣士はフィンの祖先だ。そんな祖先を持ち、魔法学園でもトップをとっているフィンはエリート中のエリート。それに見た目だって、綺麗な黒髪に涼やかな切長の瞳......。
「い、いやっ!私は別にアイツをかっこいいなんて思ったことは!!」
かっこいいなんて思ったことはないけど!......でも、さっきのふわふわのミルクティーの髪をした透き通るような肌のフィオナ様の隣に並んだアイツを思い出して見ると、すごくお似合い...かもしれない。
私の大切なフィオナ様だからアイツに取られるのは悔しいけどもね!
「ちょっと待って、じゃあ、アイツが毎回テストで首位を取ってるのって、まさかフィオナ様のため?フィオナ様にラッテオ侯爵家へと降嫁していただく時のために、2人が周囲に認められるよう常に頑張っているのかしら?」
だとしたら、フィオナ様のためなら私が2位でも別に気にならなくなるかも。
いや、でも、やっぱりあの私にだけ感じ悪いアイツを1度ぐらいはギャフンと言わせたい。
なんとか、屈服させて、リーシャは天才だ、リーシャにはかなわないとフィンに白旗を上げさせてみたい。
あー、でもどうしたら...
「ん?」
部屋に魔法書を1冊持って行って夕食後に復習でもしようかと魔法部屋の書庫の棚から選んだ本をパラパラと中を見ていると、インクを魔法で消した跡のような痕跡が1番後ろの見返しページにあることに気付いた。
何これ?
手を当てて、魔法でインクを復元してみる。
私の指先からでる魔力の光が紙に移行し徐々に形を成していく。浮き上がってきた魔法陣を見て私は驚愕した。
「なに...これ?...相手を屈服させたいときの魔法陣の書き方?」
もしかして、これを使えば、あの目の上のタンコブであるフィンをギャフンと言わせることができるんじゃない?
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