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第一話 リーシャ・マクスランダは天才である。



 リーシャ・マクスランダは天才である。

 魔術、魔法大国史、魔法剣術、魔化学......エトセトラ、エトセトラ、とにかくこの魔法学園の全ての教科において常に成績はトップクラス。


 どんな難しい問題ですら、リーシャの魔力知力の前ではあっという間に解かれてしまうだろう。


 もう一度言おう。

 リーシャ・マクスランダは天才である。


 そう、この私リーシャ・マクスランダが一度ひとたび本気を出せばこの世界を一瞬で征服できるほどに。


「なのに!なぜ!?なぜ私が2位なんだっ!!」


「本気を出せば世界征服できるとか言ってるヤバいやつが1位じゃなくて兄としてホッとしているがな。」


 魔法学園中間テスト発表の掲示板の前で頭を抱え膝をついた私の横で、淡い紫の長い髪を細いリボンで一括りにしたメガネ男が顎に手を当てて呆れた目で私を見てきた。


「くそぉっ!コイツだ!いっつもコイツが私の邪魔をする!」


「リーシャ。まったく関わりたくないが兄として言わせてもらうと、おまえ口が悪すぎるぞ。一応だが、おまえは我がマクスランダ伯爵家の令嬢だぞ。そして一応だが、淑女教育を受けた淑女のはずだ。」


「ふんっ。」


 こうるさい兄の言葉は無視して、掲示板の1位の欄に記された名前を指差しながら私は憤った。        

 入学時の魔力測定は互角だったのに、魔力剣のテストも実践魔法のテストも治癒魔法テストも魔化学、魔法大国史のテストも全部!全部!全部!いつもコイツが私を上回るのだ!

 私の家、マクスランダ伯爵家は代々魔法伯爵と言われ、いわば魔法のスペシャリストの家系だ。例外なく兄も私もこの国で、いや世界的にもトップクラスの魔力を持つ。兄は魔法学園高等部3年の主席だ。

 私も入学前から高等部1年の1位になるものだと周りから期待されていたというのに...。

 くそーーーー!!



「フィン・ラッテオめ!!」


 指の先の名前を憎しみをこめて言い放つ。

 すると同時に、それまでのピリピリした私の空気を打ち消すような春の日差しのような暖かな空気が周りに立ち込めた。


「呼んだか?リーシャ?

 ああ、なるほど。テスト結果を見て悔しがっていたというわけか。」


 私の背中側からヤツの皮肉めいた声がした。

 はっきり言って顔など見たくないが、怒りのあまりぷるぷると震えながらゆっくりと私はヤツ...フィン・ラッテオのほうへと振り向いた。


「俺に負けて悔しいのはわかるが、そうやって興奮して魔力をバリバリと弾けさせていると、周囲の人間に迷惑だ。やめとけ。」


 くっと形の良い薄い唇の片側を上げ、サラサラの黒髪を右手でかきあげる。フィンのやつは、そんな仕草まで似合うほど端正な容姿をしている。鍛え上げられてはいる身体に長身、少し長めの前髪の奥には黒曜のように煌めく瞳。掲示板の周りにいる女生徒たちがきゃあきゃあと頬を染めているが、おあいにく様だ、私はそんな仕草や容姿でなびくほどチョロい女ではない。


「べつに悔しくなんてない!次は私が首位を取るって決まっているんだからなっ!!」


「へぇ...。随分な自信だな。やってみたら?」


 くくく、とフィンが楽しそうに笑う。


「ああ!言われなくてもやってやるさ!!」


「楽しみにしてるぜ、リーシャ。

 できるものならやってみな。」


「ああ、やってやるさ!

 かってに馴れ馴れしくリーシャと呼ぶな!今に見てろっ!!」


 ニヤリと笑って去っていくフィンの背中に私は思い切り叫んでやった。


「......本気でお前たちにまったく関わりたくないが兄として言わせてもらうと、リーシャ、おまえ口が悪すぎるぞ。」

 



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