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第8話 魔法道具屋

 冒険者ギルドに魔石を売ると、かなりの額になった。

 当面の生活費に困らないどころか、色々と買い物ができそうだ。

 というわけでアオイは、ギルドの受付嬢のロザリィに教えてもらった魔法道具屋に向かう。


 いかにも魔法師が使いそうな杖が店先に並べられていた。

 天秤や乳鉢なども売っている。薬の調合に使うのだろうか。アオイはゲームシステムを使ってアイテムを作るので、これらの器具を使うことはなさそうだ。

 綺麗なペンダントやブレスレットもある。



――――――

名前 :銀のペンダント

防御力:+1

加護枠:なし

説明:装備すると、攻撃魔法をやや軽減する結界で身を守ってくれる。それほど強い結界ではないので過信は禁物。同じような効果のものを複数装備すると結界が干渉し合い、かえって効果が弱まることがあるのでオススメしない。

――――――



 ただのアクセサリーではなく、ちゃんと装備品としての能力があった。

 攻撃魔法を軽減してくれるなんて、さすがは魔法道具屋の商品だ、とアオイは感心する。

 値札を見ると、まあまあ高かった。

 いくら魔石のおかげで懐が温かくても無駄遣いはいけない。アオイはペンダントをそっともとの場所に戻した。

 今日買いたいのは魔導書である。


(沢山あるな……)


 本棚には本がびっしりと並んでいる。

 文庫本のような小さい本はない。どれも大きく分厚かった。

 背表紙のタイトルは日本語でもアルファベットでもない未知のもの。当然読めない……。


(いや、読めるぞ? そういえばボク、この世界の人たちと当然のように話してるし、店の看板だって読めた。今まで意識しなかったくらい自然に。転生したとき勝手に覚えたのかな? 異世界転生系の物語だと、そういうのありがちだし)


 異世界に転生するという状況がすでに摩訶不思議だ。

 言語を習得していることについては、深く考えても意味がないだろう――。

 アオイはそう判断して、お目当ての魔導書を探すのに集中した。


「キューブをアイテムにする魔法……そのままな題名だ。分かりやすくていいけど」


 その魔導書を棚から取って、パラパラとめくる。

 複雑怪奇な魔法陣や、文字なのか模様なのか判別不能のなにかが書かれていた。

 読めない。

 この世界の文字を普通に読めていたが、この本はまるで読めない。


「立ち読みはやめておくれよ」


 店の奥から、そんな声がした。

 現われたのは三角帽子を被った、いかにも魔女でございますという雰囲気の老婆だった。


「ごめんなさい。魔導書を買うの初めてで……全然読めないんですけど、これを買えば魔法を覚えられるんですか?」


「ちゃんと買ってくれるなら教えてあげるよ」


「買います、買います」


 アオイは本の代金を渡した。

 すると気難しそうだった老婆の表情が、急に優しげなお婆ちゃんに変わる。


「ありがとさん。あんた、いい子だね。それじゃ、教えてあげる。魔導書の中に、よく分からない記号が沢山書いてあるだろ?」


「はい。解読するための辞書とかあるんですか?」


「解読する必要なんてないよ。読めなくても、全てのページを見るだけでいいんだ」


「見るだけ、ですか」


「そう。あたしも詳しい理屈は知らないけど。魔導書の魔法陣とか模様を視界に入れると、頭に魔法の使い方が入ってくるんだよ。魔法師の多くは、無意識下に書き込まれるって表現してるね。頭じゃなくて魂だって言う人もいるけど」


「なるほど」


 アオイは、アプリのインストールを思い描いた。

 魔導書の模様はプログラムのようなもので、視覚を通じて頭だか魂だかに魔法をインストールするのだ。


「それで、全ページを見終わったら、本に触れたまま『契約』って口にするか、深く念じるかすればいいよ。それで一応、魔法を使えるようになる」


「一応?」


「そりゃ、ただ使えるのと、上手に使えるのは違うからね」


「ああ、そういうことですか。あと『契約』って誰と契約をかわすんですか?」


「さてね……あたしはそういうの気にしないから。学者肌の連中は、神だとか、世界そのものが相手だとか、色々話し合ってるみたいだけど」


「つまりハッキリしたことは分かってないんですね」


「そう。そして魔法を使うだけなら、そんなの分かる必要はないよ。少なくとも田舎町の魔法師程度ならね」


 アオイは老婆の言葉に、とりあえず頷いた。

 もしかしたら理屈を知っていたほうが、魔法の威力が上がったり応用が効くということもあるかもしれない。

 今のアオイには、そこまで考える必要も余裕もない。

 だがいつか余裕ができたら調べてみようと思う。

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