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第45話 いつの間にか夕方

 マナバーストの試し撃ちのあとアオイは気を失い、意識を取り戻すと、自室のベッドだった。

 なぜかクラリッサが添い寝していた。


「うぅ……アオイくんが目を覚まさないよぉ……可愛い寝顔をじっくり見れるのはいいけど……このまま起きなかったらどうしよう……アオイくん、起きなきゃイタズラしちゃうよ……本当にしちゃうよ? アオイくんが起きないのが悪いんだからね……」


「……あの。起きたのでイタズラしないでください」


「ひゃっ! びっくりした……けど、目が覚めてよかったよぉ」


 クラリッサは泣きそうな声で喜び、しがみついてきた。


「心配かけてごめんなさい。けど、ボクが起きなかったら、どんなイタズラするつもりだったんですか?」


「そ、それは……気にしないで!」


「無理です。気になります。教えてくれなきゃ、エメリーヌさんにいいつけますよ。クラリッサさんがボクを虐めようとしたって」


「か、完全にお母さんにいいつけてやる的なやつだ! えっと、その……大したイタズラじゃないよ。脇の下とか脇腹とか、こしょこしょしようとしただけで……」


「くすぐったさで目覚めるとか嫌なので、やめてください。もしやったら、同じことやりかえしますからね」


「え。アオイくんが私のベッドに潜り込んできて、こしょこしょしてくるの……? 可愛すぎる……うへへ」


「……ボク、基本的にクラリッサさんを尊敬してますけど、たまにどうしようもなく駄目な人に見えるんですよね」


「ひ、人には二面性があるのだよ。勉強になったかね、少年」


「偉そうな口調で言っても誤魔化せてませんよ」


 アオイはベッドから這い出て、カーテンを開けた。

 西日が部屋に差し込んだ。眩い赤色である。


「……夕方?」


「そうだよ。アオイくん、あれからずっと何時間も寝てたんだよ」


「……ご心配をおかけしました。本当に」


「まったくだよ。罰として、今日から毎日、私の抱き枕の刑に処す」


「毎日は勘弁してください」


 リビングに行くと、イリスとエメリーヌが待っていた。

 二人とも元気なアオイの顔を見て、ホッとした様子だった。

 心配をかけて申し訳ないと思うと同時に、心配してくれる人がいるのが嬉しかった。

 そして晩御飯を食べながら、マナバーストについて語り合う。


「正直、舐めてたけど。寝てるところに不意打ちされたら、ドラゴンでも死ぬ系の魔法だったわね~~」


「うむ。我も灰になってしまう。復活まで何日もかかるのじゃ。人間があれほどの威力を出せるとは驚きじゃ……しかし、デメリットも大きい。MPがなくなるだけじゃなく、気絶してしまうとはなぁ」


「けれど、当てれば大抵の存在を滅殺できるわ。いわゆる、諸刃の剣ってやつね~~」


 デメリットも威力も大きい諸刃の剣。

 ハッキリ言って使いにくい。が、ワクワクしてくる。いかにも必殺技という感じだ。

 もし巨大怪獣が現れても、今のアオイなら倒せる。

 ヒーローになれる。決めポーズとか考えたほうがいいかもしれない。

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