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第22話 四属性 同時使用

 夕方。

 宿の食堂で待っていると、クラリッサが帰ってきた。


「見てください、このローブとブレスレット。どっちも加護枠があったんですよ」


 猫耳ローブを手に入れてから、雑貨屋で加護枠があるブレスレットを見つけたのだ。おかげで更にMPが200増えて、合計639になった

 これならゾンビ屋敷に突入しても、おそらく大丈夫だろう。


 アオイは椅子から立ち上がって、新装備を見せびらかした。

 するとクラリッサは口を開けて固まった。


「アオイくん……ローブの裾から綺麗な足が見えてるんだけど……その恰好、えっち過ぎない?」


「ん? えっちじゃないですよ。ちゃんと半ズボンはいてますし」


 と、アオイはローブをめくってみせる。


「ふーん……えっちじゃん……」


 なぜかクラリッサは頬を赤らめた。

 アオイは訳が分からず首を傾げる。


「おほんっ。アオイくんの魅惑の生足はひとまずおいといて……必要なMPは確保できたってこと?」


「はい。これならロザリィさんも納得するはずです」


「おっけー、おっけー。私は隣町まで行って、対ゾンビ兵器を買ってきたよ。じゃじゃーん、聖水です!」



――――――

名前:聖水

説明:聖なる力を宿した水。ゾンビや吸血鬼など闇の存在を滅する力がある。

――――――



「これを剣に塗ればゾンビを倒せるはず! ……浄化魔法ほどの効果はないと思うけど」


「おお。それは頼もしいです」


 というわけで次の日、冒険者ギルドに行ってゾンビ屋敷の依頼を受注しようとした。

 しかしロザリィは渋い顔をする。


「ゾンビ屋敷の話をしたのって一昨日よね。なのにもうゾンビに効く魔法を覚えて、そのうえMPが600を超えたって……いくらアオイくんが転生者でも、ちょっと信じがたいんだけど……あとその猫耳ローブ、ちょっと信じがたいくらい可愛いんだけど」


「あれれ、ロザリィさん。私のアオイくんが信じられないっての!?」


 クラリッサが声を荒げる。

 アオイは〝もっと言ってやれ〟と心の中で応援する。


「クラリッサさん。アオイくんのMPが増えたって確認したの? 確信を持って正しいって言えるの?」


「……そう言われると……600ってありえない数字な気がしてきた……あと猫耳パーカー可愛いの分かるぅ」


 私のアオイくん、などと偉そうに言っていたくせに、ちょっとした追及で声を小さくしてしまう。

 意外に頼りにならないなぁ、とアオイは少しばかり落胆した。


 とはいえ証明する手段がないのは確かだ。

 パラメーターを測る水晶は、装備による強化を反映してくれないので、なんの参考にもならないし。


「分かりました。こうしましょう。『こいつ絶対MP600はあるぞ』と確信できるくらい魔法を空に連射します」


 そこまで言うなら、とロザリィは中庭に案内してくれた。


 アオイは青空の下、深呼吸する。

 大口を叩いたのだ。

 クラリッサとロザリィが見守る中、失敗しては格好悪すぎる。

 魔法の連射は初めてだが、必ず成功させねば。


「行きます……ファイア!」


 アオイは杖を空に向け、炎魔法を空に放つ。

 放ってすぐに気づいたが、MP600も消費するのに、どれだけの時間がかかるのだろう。

 炎は十メートルくらいの高さまで達し、かなりの勢いだ。なのにアオイはMPが減っていると実感できなかった。


 この世界の魔法は、使い手の力加減で強弱を調整できる。強くすればその分、MPを多く使う。

 ならば――。


「はああああっ!」


「おお、アオイくん、格好いい!」


「凄い威力だけど……え、凄すぎない? こんな炎を出したら、ちょっとした騒動になりそう……あとで近隣住民に説明しとかないと……」


 炎の勢いは倍になった。

 それでもなかなかMPが減らない。

 ならば複数の魔法を同時に使えばいいと思いつく。

 できるか分からないが、試して損はない。


「エアロ!」


 風が渦巻き、炎を更に天高く伸ばす。


「ウォーター! ロックショット!」


 炎の渦に加えて、水の渦。それから無数の石を含んだ竜巻。

 合計三本の柱が、天高くそびえ立った。

 きっと町のどこからでも見えるだろう。

 ここまでやっても、MP600オーバーだと証明するにはまだ足りない。


「フルパワーだ!」


「ストップ、もう分かったから――」


 ロザリィの悲鳴が聞こえた。

 しかし中断しろと急に言われても無理だ。

 四属性フルパワー同時使用は見事発動。

 爆発的な勢いで雲の上まで伸び、そして実際に爆発した。


 魔力が変な具合に混じり合ったらしい。

 杖の先端で生じた爆発は、アオイの小さな体をギルドの建物へと吹っ飛ばす。


「アオイくん!」


 クラリッサが抱きとめてくれたおかげで、激突を免れる。


「あ、ありがとうございます……」


「ふぅ、間一髪。それにしても……アオイくん、今の魔法、凄すぎる! あれならサイクロプスが三匹くらい出てきても倒せるよ、きっと!」


「正直、驚いたわ……色んな魔法師の魔法を見てきたけど……ぶっちぎりね。確かに100や200のMPを一気に使っても、ああはならないと思う。認めるわ。ゾンビ屋敷の依頼、あなたたちに任せる」


 正式に依頼を受けた。

 アオイはクラリッサとハイタッチして喜びを分かち合う。


 そのあと「今の爆発はなんだ!」と大騒ぎになったが、ロザリィが「落ちてきた隕石に稲妻が当たって爆発した」と嘘をついてくれた。

 みんな、いまいち納得のいかない顔をしていた。が、一人の少年魔法師が起こした爆発という発想は浮かばなかったらしく、誰もアオイを怪しまなかった。


 なお、MPが尽きてしまったので、ゾンビ屋敷の攻略は明日からだ。

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― 新着の感想 ―
ほのぼの…、または、ぼのぼの? 「いじめる?」 「いじめないよぉ」 そう言うマンガが有ったなぁ。
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