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めだまやき日記

作者: 杉谷馬場生

 一日目

 

 冷蔵庫を上げるとなんだか丸いものがある。完全な球ではない。上下に長く丸い。いや、置き方でそう見えるだけで横に長いのかも知れない。しかし縦長に見える丸いそれは上と下とでは丸みが違う。という事は横にではなく、やはり縦に長いのであろうと察する。

艶々とした表面ではない。触ってみるとザラザラとしている。そして硬い。

冷蔵庫に入っているという事は冷やさねば保たぬという事だろうか。冷蔵庫の中にはその丸いものは五個並んでいる。私はその表面の硬さを確認して持ち上げようとした。するとその丸いものは砕け、中から液体のようなのがどろりと流れでた。表面の硬い部分はとても薄く、脆いものだったようだ。濃い黄色をした液体と透明の液体が冷蔵庫の中を汚した。それはもうだめだよと同居人が言う。私は雑巾で汚れた場所を拭いた。

 

 二日目

 

 冷蔵庫を開ける。昨日一つ壊してしまったので丸いものは四つになっている。私は今度は壊さないように、そっとそれを持ち上げ、冷蔵庫から出した。同居人は器を用意してこの中に中身を出してごらんと言う。私は器の中に丸いものを置くと、指に力を入れて表面を壊す。中から黄色と透明の液体がどろりと流れ出てきて器を満たした。同居人が殻は食べられないよと言う。私は初めてこれは食べ物なのかと思う。指で殻と同居人が言っていた白い表面を取り出す。私の動きを一通り見ていた同居人は私と同じように冷蔵庫から白いものを取り出すと器を用意してテーブルの平らな部分に丸いものをコツコツと当てた。殻にヒビが入り、そこに親指を当てるようにして鮮やかに丸いものの中身だけを器の中に入れる。黄色い液体が球体であったことに私は初めて気付く。そして同居人は器に口を当ててその丸いものの中身を口中に流し込んだ。そしてこれはたまごというものだと言う。私は同居人のした事をまねて自分の取り出した丸いものの中身を流し込んだ。どのような味なのか例えるのは難しい。しかし何やら濃ゆい味がした。

 

 三日目

 

 同居人が冷蔵庫を開けてたまごを取り出した。キッチンに立つとコンロに火をつけてフライパンを置いて油を引いた。

昨日と同じように同居人は平らなところでたまごを叩き、ヒビを入れてフライパンに中身を落とす。熱を持ったフライパンの中でじゅわぁと音を立てて広がった。透明だった液体がフライパンの中で凝固して白くなる。私は思わず声を出した。それに応えるように同居人はこれは白身と言うんだと説明してくれた。ならばこの黄色いのは黄身かなと問うとよくわかったねと同居人は笑って応えた。

やがてフライパンの中ではっきりと形を成したたまごは同居人の手によって皿に移された。真ん中に黄身が固定されて周りに白身が広がっている。これはたまごを焼いたからたまごやきかいと同居人に尋ねたらそう言う名前のものは別にあるが、これはめだまやきと言うんだと言った。

「何故」

「目玉みたいに見えないかな。見立てだよ」

なるほどそう言われれば見えないこともない。この名前を考えた人はとてもユーモラスだと思った。

同居人が箸を渡してくれたので私はそれを食べることにした。白身はほのかに甘く、黄身は箸で割ると中からとろりと液体が流れ出て、濃厚な味だ。ご飯に合いそうだと伝えるとそれは正解だと同居人は言った。

 

 四日目

 

 冷蔵庫を開けて残り一個となったたまごを取り出す。

昨日同居人がやっていたようにコンロに火をつけてフライパンを置き、油を引いた。今日は同居人は外出している。

たまごをそっと叩く。僅かにヒビが入り、フライパンの上部で私はそのヒビに親指を添えて中身をフライパンに落とした。

しかし力が強かったらしく、フライパンの中に殻も落ちてしまい、黄身は丸い形状を崩した。

私は箸でその崩れた黄身を丸くしようと試みたが手をつければつけるだけ形態が崩れていった。

出来上がったものは昨日同居人が作ったものとはまるで違うものとなった。

私は暗澹たる気持ちになってそれを見つめた。

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