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転生斡旋所

転生斡旋所

作者: 灰色

「ようこそ、転生斡旋所へ」という立て札の先に、一軒の建物が立っている。

見る人により建物の形は違って見えるようで、共通点としてはその人の世界・時代の役所に近い様だ。


今日も一人の人物が招かれた。

西暦2000年代前半、日本と言う国の女性、見た目は普通、年齢は20代後半だろうか。

訝しげな目で建物を見ている。とは言え、この場にはそれ以外の行き場もなく、入る以外の選択肢は無い様だ。

しぶしぶ目の前の建物に入って行った。


「いらっしゃいませ」

建物の中には、一人の人物が待ち構えていた。

「突然、変な場所におり、困惑している事と思いますが、一先ずそちらの席にお座り頂けますでしょうか」


女性は勧められるまま、座席につき、口を開いた。

「あの、ここはどこでしょうか?確か、会社からの帰り道で、終電の時間を過ぎており、どうしようか途方に暮れていたはずですが」

「まぁまぁ、そうお急ぎになられずに。お茶でもいかがですか。これから順に説明と資料をお渡しいたしますので」

お茶の準備をしながら、手慣れたように説明用の資料を準備していく。


「お待たせしました」

お茶を飲み、女性が少し落ち着いた所で話が始まった。

「貴方は過労死により、お亡くなりになりました。御愁傷様です」

女性は薄々理解していたようで、それほど狼狽えたりせず、疑問を口にした。

「はぁ、無茶な働き方をしていたのでなんとなくそうかと思っていました。それは仕方がないとして、ここは何処で、転生斡旋所とは具体的に何を何処までしていただけるのでしょうか?」

「西暦2000年代日本の方は理解が早くて助かります。とは言え、口頭で説明していると認識の齟齬が起こりやすい為、先ずはこちらの資料をお読みいただけますか」


資料を要約すると、以下の通りと女性は認識した。

・ある条件を満たした人は、転生の機会が与えられる

・自分が生きていた時代に転生する事は出来ない

・平行世界の概念があり、漫画やゲームといった創造上の世界も実在しており、転生先の候補として選択できる

・転生後の性別、年齢、記憶の引き継ぎ有無、転生先に実在する人物の場合は記憶を統合するか否かを選択

・転生時の記憶は一世代しか残らず、再度転生条件を満たしたとしても引き継ぐ事は出来ない

・特殊な能力や道具を持ち込む事は出来ない


資料を斜め読みした後、彼女はいくつか確認後、以下の選択を行った。


性別は女性。転生先は学生の頃に好きだった女性向け恋愛ゲームの世界。主人公に転生し、記憶は自身のものを引き継ぎ。赤子の頃から開始。


「ご希望の条件を確認の上、転生の可否を確認した所、特に問題はありませんでした。では、次は良き人生を」

その言葉を聞きながら、彼女の記憶は遠くなり、姿を失って行った。




後に、彼女の転生後を確認した結果は以下の通りである。

・ゲームの知識を生かし、順調に成長する

・ゲーム本編の年齢に達し、ヒーロー達の攻略を開始

・恋愛ゲームに慣れすぎて同時攻略を行った結果、ヒーロー達の間で争奪戦が発生し、次期国王候補等が多数存在した結果、大規模な戦争に発展

・戦争が終結した後、傾国の美女として危険視され、幽閉生活を送る


ここまで確認した時点で次の転生対象者が訪れた為、確認を終了しながら呟く。

「ゲームと現実を区別出来ませんでしたか。再度こちらにやって来るのも時間の問題かも知れませんね」


気持ちを切り替え次の準備を開始すると共に、彼女の事は記憶の片隅に埋もれていった。






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