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18. 探す者と探さない者

「鈴は見つかりませんでしたね」


 僕が言うと、ライオンがため息を吐いてから言った。


「そうですわね。わたくしが差し上げた鈴が見当たりませんでしたわ。どこにも」

「でも、まだ調べてないところはあります」


 僕はみんなを見回して言った。


「クマさんとシカさんの着ぐるみの中と、パーティーした部屋と厨房と遊戯室が」

「まあ、そうだろうけど、きりがないぜ」


 トラが僕の意見を止めた。


「これ以上探しても、なんだか見つからねーんじゃねーのか?」

「では、どこに行ったんでしょうか。鈴は」

「さあな、誰かがどこかに隠し持っている、と思っているけどさ。それはそれで、その犯人が俺たちを狙うかもしれないっていうことも、どうだろうな」

「どうだろうとは?」

「犯人は鈴をもう持っている。だからもう俺たちをあんな風に殺そうとは思ってないかもなってことさ」

「じゃあ、今までと同じように、部屋でひとりで過ごしても問題ないというわけですか」

「まー別に問題ないと言えば嘘になるが、鈴を探したところで犯人が分かるわけでもないし、殺しに来ないわけでもないからな」


 僕は切り替えるようにほかの人の意見も聞いた。


「あの、皆さんはどう思っていますか? 鈴を探した方かいいか探さない方がいいか」


 イヌが手を勢いよくあげて言った。


「おいらもう疲れた。だから部屋で休みたいよ。探すんなら、おいらやんないよ」

「わ、私はどちらでも」


 リスは小さく手をあげて答えた。続いてネズミが言う。


「あたしは探せるもんなら探したいわ。だって、実際に人が死んでいるもの。犯人の目的が鈴だけだといいけど、その死体をあたしたちが知っている時点で、犯人はあたしたちを狙っているかもしれないわ。口封じのために」


「わたくしは、この中に犯人がいるとは思っていませんが、鈴が無いのであれば、わたくしは責任を取らなければなりませんので、探し出すことに専念したいと思います」


 と、ライオンが言った。ウサギがうんうんと首を縦に動かしてそのあとに続いた。


「そうだよ、犯人は確実にいる。いつわたしたちの背後を狙ってくるか分からないわ。だから探しましょう」

「わたくしめも賛成です。鈴を皆さまで探しましょう」


 トリがそう言って僕の方へ顔を向ける。


「あのう、皆さん本当にいいんですよ。疲れていたら部屋で休んでいても、強制ではないですし……僕ひとりでも探しますので」


 ぐるりとみんなを見回すと、イヌとトラは階段へ向かいながら言った。


「そうか、俺は部屋で休ませてもらうぜ」

「おいらも休もーっと」


 僕は彼らを見送ったあと再び尋ねた。


「それでは、皆さんは探してくれるでいいんですね」


 その問いにそれぞれが頷いたり返事をした。


「それじゃあ、さっそくパーティーをやった部屋から見ていきましょうか」


 パーティー会場に入ると、食べた食器などが綺麗に片づけられていた。

 僕がテーブルの下や椅子の下を探しているとき、ルビーから連絡が入った。


『ないちくん、聞こえる』

『あ、ルビーさん』

『状況は?』

『えっと、犯人にポレミラーヌの鈴が盗まれたみたいで、探している最中です』

『盗まれた!?』

『はい』


 僕の目に映るルビーは下を向いて何かを見ていた。


『あーそういうことね』

『あの、なにを?』

『今あなたの見てきた映像を巻き戻ししてみたの。なるほどね』


 僕はいちいち驚かなかった。こういったことに毎回驚いていたら疲れるからだ。


『それで、何がなるほどなんですか?』

『ヒツジが殺された。それで、みんなの身体検査や部屋の中を調べている。鈴を探すために』

『ええ、そうです』


 ルビーは少し沈黙したあと、下を見ながら何かをしていた。


『このまま探しても鈴は見つからないわ……仕方ないわね。今からそっちに送るのは、物を探し出せる機能よ』

『物を探し出せる、きのう?』

『そう、ただし試作品中の試作品だけどね。試す価値はあるわ』

『えっと、どういったものですか?』


 僕はルビーの行動を少し待ってもらうように適当に言葉を出した。ルビーは僕の方を向き眉根を寄せて返してきた。


『さっき言ったでしょ。時間が惜しいから、さっさと送るわね』


 ルビーはまた下を向いて何かを操作していた。彼女の肩が動いたりしているので何となく分かった。


『……これでいいわ』


 ルビーがこちらを見ると、僕の画面の中に【物探し】という文字が出現した。


『どう、何か表示された?』

『は、はい。ものさがし? っていう文字が表示されました』

『そう、じゃあ、それを押してくれる』

『はい』


 僕はいつものように【物探し】を押した。

 すると、食べ物、植物、動物、金物、その他などが表示された。


『あ、食べ物とか植物って表示されています』

『そうね、あとは正常に機能するかだけよ。試作品だからあまり期待しないで』

『は、はい』

『じゃあ、その他ってあるでしょ、それを押してみて』


 僕はその他を押した。

 石、水、火、土、金、玩具などが表示された。


『石とか水が表示されました』

『じゃあ、そこにある玩具を押して』


 ルビーに言われるがまま玩具を押した。

 ぬいぐるみ、フィギュア、パズル、鈴、ボールなどが表示される。


『あ、鈴の表示があります』

『そう、それよ』


 僕は当然のように鈴を押した。すると僕の目から先ほどの文字は消えて、代わりに薄暗い膜が僕の目を覆った。


『あれ? 目の周りが薄暗くなったみたいですが』

『うん、それでいいのよ。それで探し出せるわ』

『探し出せるって、どういう風にですか?』


 ルビーは疲れなのか呆れなのか、髪の毛を掻き上げてため息をもらした。


『いい、その洋館の中に鈴が隠されているとしたら、それで探してちょうだい。探し方は目に星みたいな光が映し出されるはずだからそこに向かうの。それと、近くに寄れば音も鳴るわ』

『ああ、そうなんですか』

『まあ、まだ研究段階だから正しい反応は示さないこともあるかもしれないけど。スノーダストにまだ搭載してないのは、不安定だからよ。本当はまだ使えないものだけど今回はしょうがないわ。じゃあお願いね』


 そうしてルビーからの通信は消えた。

 僕は首を動かして、探しながら適当にその周辺を見てみた。特に反応はないし音もしない。


「ネコさん、見つかった?」


 不意にウサギが僕の背中越しから声を掛けてきた。僕は振り返って彼女を見た。


「いや、まだ。そっちは?」


 ウサギは横に首を振って答えた。


「ううん、見つからないわ。ここには無いのかしら」


 僕はその会場を天井から床まで見回してから答えた。


「そうみたいですね。ほかへ行きましょうか」


 僕はウサギを連れてみんなが探しているところに行った。


「あのー皆さん、ここには無さそうなので、次は厨房の方に行ってみましょう」


 僕がそう言うと、みんなはぞろぞろと厨房に向かって行った。厨房に向かいながらリスが話しかけてきた。


「あ、あの、ネコさん。もし全部の部屋やクマさんとシカさんの身体検査しても鈴が見つからなかったら、私たちはどうなるのでしょう。犯人は本当に私たちを殺す気なんですか?」


 リスは小さく声を発した。不安の底にある恐怖を押し殺しているようなそんな声で。


「そうですね。まあ、探してみて無かったら考えましょう。今は鈴を探すことだけに専念した方がいいと思います」

「……そ、そうですよね。まだ、そうなるって決まったわけじゃありませんし。分かりました、変なこと言ってすみませんでした」


 リスは小走りで厨房へ向かった。ウサギはリスの背中を見ながら言った。


「みんな不安なのよ。何が起きるか分からないから。これ以上何ごともなく終わればいいけど、実際に殺されている人たちがいるというだけで、一刻も早くここから抜け出したいって少なくとも思っているのよ。内心は」


「うん、確かに。鈴は見つからないけど、もう優勝者の発表は終わっているわけだから、今すぐこのパーティーをおひらきにして洋館の外に出ればいいと思うけど、できないんだよね。だって、ここがどこだか分からない場所で、しかも、この洋館しか建っていない孤島でしょ。外に出たところで2日間外で暮らすのは……食糧とかもこの洋館にあるわけだし」


 ウサギは僕の意見に耳を傾けて聞いていた。


「そうだよね。みんな分かっているんだよね。出るに出られないことを」


 出るに出られられない。それは、まるで見えない檻に閉じ込められた動物たちのように。


 



最後までお読みいただきありがとうございます。

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