4.新しい仕事
今回は時間に少しだけ余裕ができたので2話投稿します。
是非そちらの方もよろしくおねがいします。
「あ~あ、ついに会社クビにされちゃった」
収入源がなくなって辛い、哀しいはずなのになぜかスッキリした気持ちだった。
「それにしても傑作だったなあ。みた?あの顔!!」
その顔はまるで十年近くかけて育てた大切な植物が、枯れてしまったかのような表情をしていた。まあ実際、大切に大切に育ててた髪の毛を容赦なく気づかないうちに溶かされたのだから、そんな顔をしても仕方なのかもしれない。
「このスキルやっぱ便利だなあ。今回のことで正確な範囲指定とか、物体の指定とかができることがわかったのは大きいな」
もし失敗していたらあいつがとけて死んでただけなんだけどね。とはいえ、このことを体を張って教えてくれた(強制)ことには大いに感謝している。
「とはいえ、これからどうしようかな」
そんなことを考えながら歩いていると、目の前まで人が近づいてきていることに気付かず、
ドンッ!!
「キャッ!!」
「おっと、ごめんなさいお嬢さん」
「いえいえ、こちらこそすみません。色々あって考え事をしていて気づかずに」
「こちらも不注意には変わりないんだ。君が負い目を感じる必要はないよ」
「ありがとうございます。流石に申し訳ないので、飲み物でも奢りますよ」
「いらないと言いたいところだが、お嬢さんのご厚意を無碍にするわけにはいかないからね。ご馳走になるよ」
そう言って近くにある自販機までやってきた。
「そういえば、お名前はなんと言うんですか?あと、缶コーヒーで本当にいいんですか?」
「ああ、私かい?私は冰室滉一、ひがないベンチャーの社長だよ。あと私は缶コーヒーが好きなんだ」
「ええ!?社長さんだったんですか!?通りで言葉遣いが丁寧だと思いました」
「申し訳ないね。これはいつもの癖みたいなものなんだ。気にしないでくれ。それとお嬢さんのお名前は?」
「すいません、申し遅れました、私は御門奈緒といいます。ついさっきまでOLやってました。」
ヤバい!ついさっき起こったことまで説明してしまった!これじゃあ可哀想な私を拾ってくださいみたいな宣言しているようなもんじゃない!!
「さっきまで?」
「ああ、今の言葉は忘れてください。それよりこれ、どうぞ」
「ありがとう」
「いえいえ。そういえばさっき、冰室さんはベンチャー企業の社長さんだと言っていましたが、具体的にどんなことをなさってるのですか?」
「ああ、詳しいことは流石に第三者のあなたには言えないけど、少しだけ教えてあげるよ」
少しだけと言っていたが、思ったよりもしっかりと教えてくれたので、軽くまとめると先日出現した特異点と、スキルを利用したビジネスを始めるらしい。もとはいわゆる便利屋的な経営方法をしていたらしいが先日の出来事を活かせるのではないかと踏んでいるらしい。
「ところでどうだい?うちに入るつもりはないかい?」
「え?私がですか?」
「あなた以外に誰がいるのよ?それに私は第三者のあなたには少しだけ教えるといったの。それにあなた、今日仕事をクビになったんじゃない?」
「何故それを!?」
「私を見くびらないで頂戴?さっきあなた自分で『ついさっきまでOLやってました』って言ったんじゃない」
流石に社長さんだといったところだろう。さっきの言葉も聞き逃してはくれなかったようだ。
「それに私はあなたが欲しいの」
「え!?それはどういう?」
「もちろん会社の仲間としてよ?」
「私さっきクビになったばかりですよ?」
「私ね、見る目だけはあるの。私はあなたにそれだけの能力があると思っているわ」
信じられない。まさか私のスキルまで見透かされてる!?まさかそんなわけ。
「ちなみになんでそう思ったんですか?」
「勘って言いたいところだけど、実は見えるのよね、あなたの能力が」
「え!?まさか私のスキルもですか?」
「それはうちの会社に入ってくれたら教えてあげるわ」
それから悩んだ末どうするかの決断をした。
「降参です。わかりました、あなたの会社で働かせてください。」
「やったね。これからもよろしくね?」
それから冰室さんの会社にそのまま向かうことになり、そこで契約についての話になったが、半強制的に入社させることになったため、条件は前の会社よりかなり良くしてもらった。
正直誘われた時断る理由はないと思っていた。少なくとも前の会社より労働環境はいいだろうし、給料が少なくてもあるのとないのとでは大きく違うからだ。それに仕事内容にも興味があった。
私のスキルが見えることについては冰室さんのスキルである【鑑定(SSR)】のおかげらしい。冰室さん曰く、スキルを使用すると、自分より強力なスキルを持っている人以外のすべての人のすべてのステータスが見れるようになるらしい。
これを聞いて社長などの雇用者にはぴったりだなと思った。
ちなみに私のステータスが覗けなかったのですごいスキルを持っていると気づいたらしいので、まだ私のスキルが何なのかは冰室さんもわかってはいないらしい。それを聞いて私は一安心した。
とはいえ、このようなスキルを持っている人がいることを知れて安心した一方、これからは注意することが増えるとより警戒しようと心に誓った。
「こんな感じで大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。改めてこれからよろしくおねがいします」
「こちらこそよろしくね。とはいえ、もう少し欲張ってもいいんだよ?」
「いえ、ちゃんと実績に応じて評価した上で給料の上下は設定してください」
「わかったわ」
その後に会社でのことについて説明されて、前の会社のこともあるということで、3日後から会社で働くことになるらしい。
そしてここから私の新しい生活が始まっていくのだった。