1.はじまりの刻
初めての連載をしてみようと思いこの作品を書いていきます。それと、私の苦手な女性視点の描写の練習として女性主人公の物語を書いていきます。拙い文章力ではありますが、是非楽しんでもらえると嬉しいです。
―2054年4月1日午前11:45―
私の名前は御門奈緒、今はちょっとだけブラックな企業に勤めている。ブラックって言っても、上司が堂々とセクハラをしてきたり、勤務時間がちょっとばかり長いのと、仕事量がちょっとばかり多かったり、ノルマを失敗するとちょっとだけ罰があるだけだ。
流石に給料は高く設定されているが、その勤務時間の長さ故にあまりお金を使えず、かなりの貯金が溜まっていると思う。それがこの会社に努めている理由の一つだ。
もう一つの理由は、特にやりたいこともないからだ。この忙しさは私の虚無感を忘れさせてくれるのだ。それにできることなら、早く貯金を貯めてアーリーリタイアしたいと思っている。そうしたらそのお金を使っていろいろな挑戦をすることで、趣味ができたら、なんてことも考えたりしてる。
このあと自分の人生が大きく変わる出来事があるなんて、この時の私は思いも知らなかったのだ。
「おい御門、こっちの資料もやっとけ」
「はい、わかりました」
このように少しでも暇そうにしてたら私に自分の仕事を投げてくるくせに、自分の上司にはゴマをすりまくっている。そんないつものやり取りをしていると普段耳にしないような音が誰かのスマホから聞こえた。
トゥルルル!トゥルルル!トゥルルル!トゥルルル!
「おい誰だ、スマホ使ってるやつは!」
こいつはわかっていない。信じられない。今のはどう考えても緊急地震速報の音だろ!
「課長、今のは緊急地震速報ですよ」
「なんだと!?それをさっさと言え!お前らは高価なものだけを持ってビルの外へ出ろ!」
珍しく指示を出したと思ったが、考えることはやっぱりクズだ。こいつは私達社員よりも高価な機材の方が大切らしい。こんなんでよく課長になれたもんだ。
とりあえず私は自分のデスクの近くにある、よくわからない機材を持って移動を始めた。現代ならエレベーターもかなり安全だけど、それでもまだ私は今の科学力を信用してないので非常階段から降りることにした。どうせここは7階なのでそんなに大変ではないだろう。
タッタッタッタッ!
そうやって駆け降りていると遂にその時が来た。
ドンッ!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「うわぁ!やばい、なんか高そうな機材落としちゃった!それよりこの揺れやばくない!?」
ほんとに揺れがやばすぎて今は全く立てないでいる。その間私は恐怖に怯えながら耐えていた。どれくらいたったかはわからないが、その時間はとても長く感じた。もしかしたら10秒くらいだったのかもしれない、それとも5分も10分立っていたかもしれない。そんな時間がやっと終わった。
「ああ、やっとおわったああ」
この高そうな機材は見なかったことにしよう。それより早く地上に出なきゃ!そう心に決めて再び階段を降り始めた。
タッタッタッタッ!
さっき揺れたところから10分経った頃に、流石の私でも違和感を覚えていた。
「明らかに下に降りれてないよね?」
地震が起きた頃には既に2階ほど降りていたはずなのに、いつまで経っても地上が見える様子がない。流石にないとは思いたいが、もしかして私階段を登っていることになっている?そうではない事を祈りつつ、階段を登ってみることにした。
「はあ、はあ。10分降りたぶん登るのってキツイわ」
すると揺れたときに落とした電子機器が、目の前に現れた。当たり前のことなのだが、少しだけホッとした自分がいる。
「やっと揺れたところまで戻ってこれた!つかれたああ!一旦休憩〜」
一旦冷静になって考えてみようとしたが、中卒の私には到底解決できる問題ではなかった。とりあえず世界がおかしくなっていることだけはわかった。
「どうなってるのよ、この世界。馬鹿な私でもおかしくなってるのがわかるよ」
休憩したからか少し眠くなってきてしまったが、地上に出ないと安心できないので、また階段を昇り始めた。
すると、他の社員や、あのクソ課長が外にいるのを見つけた。
「課長、変な質問をしますけど此処は何階ですか?」
「御門、お前何いってんだ?wまぁ、強いて言うなら1階かな?w」
相変わらず馬鹿にしたような口調で答えてきた。本当だったら顔面をぶん殴っていたが、そんなことをしたら給料を下げられるし、階段ダッシュで疲れてそもそもぶん殴る気力もなかった。本当に運がいいな、こいつは。
「今日は流石に地震で仕事どころではないので、帰宅していいぞ!でも高い機材はここに置いていけ!」
そう言って、早めに外に出て部下に建てさせた仮設テントに機材を置かせていく。
「御門、お前は何を持ってきたんだ?」
「ギクッ!それが、お手洗いから戻ってきたら皆さんがいなくなっていたんで、そのまま何も持たないで来てしまいました。すみません!」
「欠員に気づけなかった俺にも責任があるが、次からは気をつけろ」
「すみません!次から気をつけます!」
こいつ、珍しくいいことを言ったと思ったら、次から気をつけろってなんだよ。そういうのは基本的にすべて上司の責任だろ。ていうか欠員に気づかなかったんじゃなくて、もとから誰がいるかなんて把握してないだろ。
「帰っていいぞ」
まるで帰って欲しいかのように急かして家に帰らせてきた。恐らく機材の安全確保の手柄を報告するためだろう。本当に図々しい。まあ、疲れていたのでむしろありがたいが。
家に着いたら片付けようと思っていたが全くと言って差し支えないぐらい片付いていたので空き巣が入ったのかと警戒したが、そういえばうちには高価なものが何も置かれていないことに気づき、落ち着いて家の中を探索したが特に何も異変はなかった。
なぜ家が散らかっていないのか調べようとしてネットで検索してみると不思議なことが分かった。何故か近くで大きな地震が起こっているにも関わらず、範囲が極端に小さいらしい。原因はまだわかっていないらしいので、明日の朝辺りにニュースで発表されると思うから。今考えるのはやめることにした。疲れている今何を考えても悪い方に行ってしまいそうだ。
このあとテキトーにご飯を食べて、お風呂に入ってそのまま眠りについた。