少女は目を覚ます。
「ここは…?というか私はなんでこんなところに…?」
目を覚ました紡が見たものは、色が抜け落ちたような白い簡素な部屋、小さくはない部屋に一つあるベッドに横たわっていた。
しばらくの思考の後、紡は『何があってここにいるか』だけが思い出せなかったので、とりあえず部屋から出てみることにした。
部屋の中と同じ白い廊下を誰にも気付かれずに慎重に歩いていく。よく考えてみると自分は誘拐されているかもしれない。誘拐に代わるものだったとしても記憶の一部が抜け落ちている紡は何度かすれ違ったここの職員のような人間たちに「ここはなんですか」なんて聞いていいはずがない。ここが安全ならいいが、危険な場所だったら即あの部屋に逆戻りだろう。なので今後しばらくの目標は『ここからの脱出』にだるだろう。
紡は遠くに窓を見つけた。工場などにある中を覗くための大きい窓のように見える。中には研究員たちとその研究員たちが扱う白い室内には不相応の真っ赤な血だった。
急な頭痛と共に記憶が戻る。自分はあの場で少女を守ろうとして、ナイフで胸を刺し貫かれた。胸を確認する。傷は完治しているが痕はある。夢では無い。なら何故死んでいない?答えは好意的か実験動物かはわからないが自分が今いる施設に『命は救われた』ということだろう。
やはり脱出が最優先だ。早くここから出よう。
「まだどこかに彼女がいるはずだ!探せ!」
施設側も自分がいないことに気付いたらしい。
鬼ごっこが始まる。