もう一つの始まり
「魔獣が発生!住宅街k-12-1周辺!」
「はあ…私が行くよ、てかあいつ出てるっしょ」
今日も今日とて魔獣のアナウンスだ。
溜息をついた玲衣は出撃の準備を始める。
玲衣は対魔獣機関守護者の一員だ。名前の通り魔獣達から市民を守護することが仕事である。
出撃。オペレーターの崎さんに詳しい位置を聞きつつ情報を組み上げていく。
「何体ぐらいいる?」「まぁ…多分20…ぐらい?」「ぐらいって崎さん適当すぎない?」「はいはい悪かったわね。まず一体、そこから見えるでしょ。」
発見した魔獣に魔獣用特殊ナイフで首筋を一発で仕留める。
「ナイス!次は南方向に…二体」「OK」
玲衣の奮闘によって魔獣はほぼ全滅、崎に撃ち漏らしを確認する。「もうだいぶ片付けたでしょ?」「ええ、でもまだもう一体、様子がおかしいから万が一のために《魔法》を使って。会話も《念話》に切り替えるよ。」「わかった」
途端玲衣は真っ黒のフードを被った様な見た目になる。
玲衣の魔法は《装衣》力のある物を纏うことができる。基本は魔獣を纏っている。崎の魔法は《念話》名前の通り言葉を発さず会話が出来る。
最後の一体を見つけた玲衣は焦る。
「崎さん…あいつ、小さい女の子連れてない?」
「まずいね…連れていかれる前に早く助けて!」
魔物のそばへ着地。少女との位置を確認し、助けに飛ぶ。少女を傷つける可能性があるため、ナイフは使わない。
少女に一直線に行こうとしたが魔獣に止められる。
正拳を出すが止められる。拮抗されている。
(崎さん、こいつ強くない?)(たしかに、十分気をつけて。)
隙を見て魔獣を弾き飛ばす。しかし弾き飛ばした先は少女の方だった。(崎さん!どうしよう!)(大丈夫、連れて行かれ無ければあの子に危害は出ない、でもさっさとやっちゃって!)
一瞬でも早く魔獣を仕留めるため、ナイフを取り出す。
少女に当たるかも、と使わなかったそれだがそんなことはいっていられない。素早く仕留めなければ。
距離が縮まる。激しい肉弾戦を繰り広げるが玲衣の方がやや優勢と言ったところ。
(不穏な動きをしてる!気をつけて!)崎の助言後すぐに視界がおかしくなった。
(は…?自分?)玲衣には自分が見えていた。正確には相手の視点だろうか。困惑しているうちに足に衝撃が走る。そこに全力でナイフを振り下ろす。直後視界が戻る。しかし足はやられてしまった様だが相手の左手は持っていけた様だ。玲衣から驚きの声が漏れる(こいつ魔法を使えるの⁉︎)
このままではジリ貧だ。できれば次の一撃で決めたい。魔獣もそのつもりの様だ。力を込める。両者距離を詰めた瞬間に胸真ん中にナイフを差し込む。そして引き抜く。血が吹き出す。勝った。いやおかしい。血の色が赤すぎる。
(やばかったねー玲衣ちゃん、玲衣ちゃん?)崎の労いの言葉は玲衣には届かない。(崎さん、あいつ使いすぎで堕ちかけてる人間じゃない?)
(本当に?近くでよく見せて)魔獣?によっていく。近づけば近づくほど人間だ。あと少しで詳しくわかる、というところで足を掴まれた。途端、相手の足に自分と同じ傷が出来る。そして。玲衣の左手と胸に相手と同じ傷が出来る。玲衣の胸元から血が吹き出す。「は…?やばい、崎さん、これ、やば…」玲衣は困惑の声を上げ、掠れゆく意識の中で必死に崎に現状を伝えようとし、玲衣の意識は途切れた。