あなたに幸せを
どごーん!
「なっなんだー!?」
我ながら棒だと分かる。やはり才能がないのだろうか。
「カット!てめーいつになったらできるんだ!雄吾!」
雄吾か...もちろん俺の名前ではない。俺は鎌倉憑蚊凡人だ。
「すいません!次からはちゃんとしますからー!」
「たく!何回同じこと言ってんだよ」
まったくだ。
この仕事受けない方がよかった。
1日前のあの日...めんどくさいことを押し付けられたからだ。
1日前
『仮人生相談所』での一コマ
「こんにちは...あの!ここにくれば仕事から逃れると聞いて来たのですが」
逃れるか...お客様だな。三波 真理火は一体何をしているのだ!
「真理火!お客さん」
「わかってるよ!...こんにちは、今日は何ようでしょうか?」
「今日は、あの!ここにくれば仕事から逃れると聞いたのですが本当ですか?」
「本当ですよ。企業秘密なので詳しく言えませんが、『あなたに幸せを』が社内理念ですから」
男は安堵したのか息を吐いている。
「ありがとうございます。実は私,俳優を目指していまして、ある監督に目をつけてもらってとある映画に出ることになったのですが、ここで一つ問題が出て来たのです。そうブラックなんです。あの監督!休みを1時間もくれずにずっと練習しろと言ってくるのです!だから少し休みたくて...あの1日でいいのであの監督から離れたいです。だからお願いします!」
嘘だろ...1時間も休みをくれない監督の元で働かないといけないのか...。
「わかりました。ただ値段はこのくらい張りますがよろしいですか?」
まあ1日だしな。
「15万ですか...わかりました。お願いします」
「ありがとうございます。ではここにサインを」
「はい」
10分後...
「ではよろしくお願いします!」
玄関から出て行った。あまり元気がない、大丈夫か?
「憑蚊!仕事よ」
「わかってる!いつものだろ」
「わかってるじゃない。じゃあいくわよ」
そう言って真理火は力を使う。
(うっ、入ってくるコイツの力が。)
俺も聞いたことだが、コイツ、三波真理火は幼少期からいわゆる超能力というものに目覚めていたらしい。
その超能力とは、すなわち『任意の体になること』らしい。その力を使い毎度依頼人に俺が変身している。
ここである疑問が生まれるだろう。何故俺がするのか、表面上では役割分担となっているが本当は違う。
三波真理火は演技が下手なのだ。だからすぐバレる。
(うっ最後の瞬間だ。この時が一番痛みが走る。)
「あがぁぁぁぁあ....はぁはぁ毎度のことだがもっと優しくできないの?」
「できない...というか好きな人を乱暴に扱うわけないじゃん...」
「えっなんだって?小声で聞き取りづらくて...」
「もういいよ!それより設定!その子の名前は役未 雄吾俳優を目指してるらしい。監督は花水 幸太郎、確かに実力で人気は得ているらしいけど、いかんせん人と話すのが苦手らしい。でも、監督の時だけは声を荒げるらしい。厄介ね」
(…他は、情報それだけ?)
「真理火?それだけ?」
「後は自分で見て。じゃよろしく頼むよ鎌倉くん!」
今...
そして現在に至る。
どうするべきなんだ...確かに演技をしようと思えば凡人以上にはできるだろう。だがやってもいいのだろうか。俺らに任されたのは休むための時間稼ぎに過ぎない。映画を完成させろとは言われていない。
まったく難しいところだ。………せめて、あと四日あれば。
「――まだか雄吾!」
「はい!今すぐ行きます!」
とりあえずこの場を乗り切ってから考えることにしよう...




