エピローグ
「ありえないでしょ! 魔王もやっつけていないのに、なにがめでたいんですか!」
「いーや、ありえる! これまでにない存在感と感動、世界の共有と共存だ! ――早速グループリーダーに報告だ」
グループリーダーに報告――!
「マジっスか? 万が一、通ってしまったら……そんな大幅な変更……今からできるわけないですよ!」
肩車をした魔王と勇者のデーターなんて、作成されていない。ブーイングの嵐が開発グループ全員から巻き起こる――。
「肩車ってさあ、大人になってもできるのかなあ」
僕の言葉に耳も傾けず、チラチラと視線を送ってくる……。
嫌な予感がする。
「え? なに言い出すんですか、いきなり。身体を鍛えている勇者だったら余裕でしょ」
「いや、魔王は魔法に頼っているからさあ、ひょっとすると筋力は一般人と同じかもしれないだろ」
パイプ椅子から立ち上がると、机の横から回って近づいて来る――。
「ちょっと、俺を肩車してみてくれよ?」
「ええー」
「ほら、どんな感じか確かめておいた方がいいだろ?」
「……」
仕方なく壁に手をつけてしゃがんだ。
リーダーが首筋に座る――。重い! そして、首筋に嫌な感触が温かい。
「これって、パワハラかセクハラじゃないですか?」
「よし、立ってみてくれ、ゆっくりだぞ」
「……」
太ももがカッチカチになる。鍛えていない僕の膝がピキッと音を立てた。
「ははーこりゃいい眺めだ! おお、天井に手が届くぞ、アッハッハッハ!」
……なんか腹立つ。
……でも、羨ましい。
「ちょっと、代わってくださいよ!」
「――おい、急にしゃがむなよ! フワッとしてゾワッとするだろうが――」
交代してもらった。
僕だって魔王は嫌だ。勇者がいい。二段ベッドは上がいい派なのだ――!
「あー、これいいっスねー!」
「ハハハ、だろ? ありだろ?」
「ありっス! 肩車勇者、楽しいっス! ああー天井に手が届く~!」
今の僕は、たしかに格好いい――!
まるで、勝利したスポーツ選手のように格好いい――。
白馬に乗った王子様の気分だ――!
ガチャリ――。
会議室の扉が急に開くと、グループリーダーと目が合ってしまった!
「あ、貴方達! ――仕事中になに遊んでるのよ!」
「うわわわ~!」
「おっと!」
バランスを崩して二人してドテッと倒れてしまった――。
大人同士の肩車は非常に危険だ――。会議室で労災を招く――危険作業だ――。
「こ、こ、腰がー」
「危ないでしょうが! 会議室で遊んじゃいけません!」
子供を叱るお母さんのようなグループリーダー。
「イテテ。これには訳があるんですよ……」
――肩車勇者、間違いなくきますから~!
読んでいただきありがとうございました!
本当に恰好よかったでしょうか……肩車勇者。
ご意見、ご感想、ごポイント評価、肩車体験談などなど、お待ちしております!!