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某有名ゲーム会社、本社ビル会議室


 その日、突然チーフリーダーに会議室に呼ばれた。


 四人くらいしか入れない小さな会議室。窓から差し込む日の光が眩しい。

 開発中の新しいRPGは、テストプレイ段階に指しかかり、完成が間近だというのに……チーフリーダーは一人不安を抱えていた。


「率直に言う。――なにかが足りないんだ」

「え?」

「これじゃ市場に出回っているRPGと、なんら変わらない」

 え?

「今更……」

 イケメンの勇者と美人ヒロイン。ただただドス黒い卑怯者の魔王。裏切りもザマアもない今回の若い世代向けのRPGは……王道といえば王道だ。


 ――鬼を退治しに行く「桃太郎」級に分かりやすい設定だ。


「シナリオはいい。CGも美しく世界観も素晴らしい出来なんだが……、勇者がパッとしないと俺は思うんだ」

「勇者がですか?」

 イケメンで甘い声。サラサラの金髪に青い瞳。人に優しく自分に厳しい。時折見せる弱いところは母性本能をもくすぐる。

「完璧すぎるくらい恰好いいと思いますけど」

 日本全国どこを探したって、こんな「絵に描いた餅」のような勇者はいない――。

「じゃあ、今、まさにこの現実で完璧な勇者って、なんだ? イケメンで優しいだけか?」

「え? 現実で完璧な勇者? リーダーは、現実とゲームをゴチャ混ぜにしてしまうんですか?」

 そう反論するが、……少し考えてみると、ゲームの世界も現実世界と共通する部分が多々あるのも事実だ。


 現実の勇者といえば、やはり……。


「金持ちの……政治家とかですか? タイトルは、「勇者は政治家」。サブタイ、「権力は魔力よりも強し」……いや、ちょっと違うかなあ」

「権力なんて若い世代は興味ないだろう。若い層の女性に人気を集めることができる今までにない勇者を創造しなくてはいけないんだ――。だが、そもそも女性が憧れる新しい勇者像って、なんなんだ?」

「女性が憧れる新しい勇者像――」

 二人して頭を抱える。

 草食系マッチョか……。いや、それも好き嫌いがあるだろうし、これまでにもたくさん出回っている。

「女性に絶大の支持を得られる勇者でないとダメなんだ――。どんなに格好よくても、甘いボイスや逆に低いいい声の声優を抜擢しても、それは当たり前。――いわば普通なんだ!」


 普通勇者――! 


 リーダーの言いたいことは分ったのだが……。

「じゃあ女性の憧れって、なんなんすか」

「そりゃあ、やっぱり「白馬に乗った王子様」だろ」

「ふっる!」

 これだから……昭和生まれの考え方にはついて行けない……。

「いやいや、人類の営みは今も昔も大差はない。本質的な部分はそうそう変わらないはずなんだ」

 本質……。たしかにそう言われれば、白馬ではないとしても、競馬場では有名な騎手が甘い声援を独り占めしている。乗馬クラブに通う人も、それなりに人気があるかもしれない。お金持ちなのだけは事実だろう。

 馬じゃなかったとしても、ジェット機のパイロットやブルーインパルスの隊員は男の僕が見ても格好よくて憧れてしまう。航空機以外でも、赤色のフェラーリやカウンタックやウィッシュに乗っている男達は、

 ただ乗っているだけで憧れてしまう――紛れもない事実だ――!


「――あ、なるほど! 勇者にはやっぱり、胸がキュンキュンするような乗り物が必要ですね!」

「――その通りだ! 勇者が格好いい乗り物にまたがる姿こそが凛々しいのだ」

 そよ風に揺れる金髪の勇者を想像してみる。

 その勇者は、いったい何に乗っているのだろう……。馬では駄目なんだと思う……。


「女性にまたがるのはどうだ?」


 ……。

「その一言で、勇者像が――どん底までダウンしましたね。女性が見向きすらしないエロロープレになりますよ。創作費一億円掛けたRPGが、今世紀最大のクソゲー扱いされます」

「ハッハッハ、冗談だ」

「冗談は顔だけにしてください」

「……」


「どうせ乗るなら、普通の人が乗りこなせない物がいいでしょう。ドラゴンとか、狂乱龍とか」

「却下だ。ドラゴンに乗って戦う勇者なんて、メジャー過ぎる」

「そんなにメジャーなキャラ、いましたっけ?」

「ああ。ヨッシーに乗るスーパーマ〇オがいるじゃないか」

「ああーっと! 確かにメジャーっす!」

 あの帽子を被った赤色のヒゲおやじは……勇者だったのか。


「じゃあ、RPGで誰も乗りこなせない物って、何かありますか? ロボットとか兵器とかは度が過ぎると世界観が壊れちゃいますし」


「一輪車は?」


 あーソレね。僕も一メートルしか乗れねーわ。

 キコキコ音立てて一輪車をこぐ勇者……?

「ありかもです!」

「ねーよ、バカ」

 ……チクショウ。「バカ」は酷いじゃないか~。せっかく話に乗ったのに。

 一輪車で走り去って行く勇者の後ろ姿、広がるマントが格好いいと思ったのにー!

 ……僕は乗れないから……。

 いや、乗らずとも押しているだけで恰好いいかもしれないのに……。


「……だったらもうこの際、乗りこなすのが一番難しいゲームに登場する最強のキャラでいいんじゃないですか?」

「最強のキャラだと? ……最強のキャラといえば……ラスボスの魔王か?」


 ラスボスの魔王にまたがる勇者の冒険って……どうなるの?



読んでいただきありがとうございます!

第二話では、実際に「魔王に肩車された勇者」の世界観へと移り変わります。

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