オーク族殲滅作戦。ムチャブリを君に。
東の森に入ってすぐ。
街からこっちが見えなくなったあたりでラッキーと相談する。
「ラッキーやばいよ。オークと戦うなんて無理だよ。」
「??マスターなら大丈夫です。魔剣があるです。」
いくら切れ味がいいとは言え魔剣でもなんでもない。ましてや戦ったことすらない。
こんな状態で戦えという方が無理だろう。
とりあえずラッキーのスキルを確認したい。それ次第でもしかしたらば戦闘も避けられるかも知れない。
そう思ってラッキーへ声をかけると、
「ブヒッ!」
そこには本物のオークの姿があった。
身長は2mを超え2足歩行で石槍やこん棒などを装備している。
多少の知能はあるようだ。
やばい。やばい。やばい。
まじでこれ死んじゃうやつだよ。
魔物となんて戦えないよ。
足がガクガクと震え、汗がとまらない。
オークは俺の方を見るとブヒブヒと笑っているようだ。
動悸がものすごく自分の心臓の音で頭の中が一杯になっていく。
「ブウォーー!」
オーク族はいきなり雄たけびをあげたかと思うとこちらへ突進してくる。
「ヒィッー!」
変な声がでる。ダメだもうやるしかない。俺は剣を抜き前へ突き出し振り回す。
オーク族は余裕だと思ったのか剣をこん棒で受けようとするが一瞬でこん棒ごと刃先にあたったオークは何の抵抗もなく切られていく。
「へっ?」
動かなくなるオーク。突進してきたせいか完全に頭と身体が分離している。
感触はまるで絹豆腐に包丁をいれた時の感覚のようだ。
あたまの中に声が聞こえる。
シェル―です。ウィンドウだと危険なのでこのまま話します。
倒した魔物はマジックボックスへ自動収納処理をさせて頂きますので
安心して戦闘をしてください。今夜は焼き肉パーティですね。
マスターご武運を。
次の瞬間俺が殺したオークの死体がなくなり、他のオークもそれが理解できなかったのか一瞬動きが固まったところへラッキーは体当たりでオークの首を一瞬で変な方向へと捻じ曲げていく。
一度に3匹ものオークは一瞬で肉の塊になりそれらもマジックボックスへ収納されていく。
「マスター強いです。僕も負けてられないです。」
ラッキーはそう言い残すといきようようとラッキーはオークを狩っていく。
オイッ超えられない種族の壁はどうした。
そこから先は正直あまり覚えていない。
オークの1匹が雄たけびをあげたかと思うといっせいに俺とラッキーへ敵意をあらわしながら突撃をしてきた。俺は豆腐を切る感覚でオーク族に刃を当てていく。
ほとんどのオーク族は何が起こっているのかわかっていなかっただろう。
刃先に当たり切られて絶命すると死体ごとなくなり、それに気を取られていればスライムによって蹂躙されていく。
逃げるという選択肢がないのかオーク族は数にものを言わせてこちらへ突進してくる。
数は多いが1匹、1匹剣を首にあてできるだけ苦しまないように殺していく。
途中からはもう作業のようになっていた。
殺しても何も感じない。
ただ、ただ返り血を浴びながら自分がなんのために戦っているかも、誰の為に戦っているかもわからない。頭の中で思考が停止していく。目の前に豚が来るから機械のように首をはねていく。
足元の血までは回収してくれないせいか足元は血と泥でまざり、ラッキーも半透明がうりなのに全身が赤黒くそまっている。
永遠に終わらないかと思っていた作業もやがて終わりをつげることになる。
ラスト10匹くらいになったときにそいつはあらわれた。
あきらかに他のオークとは違う。
鑑定でみるとオークキングと表示されている。
オークキングはいまいましそうに言葉を発した。
「人間ごときに我々オーク族が滅ぼされてたまるか。やっと魔物が人間を支配する時代へ突入するというのに。我が同胞を…殺してやる。絶対に殺してやるぞ!」
オークキングは俺の方へ突進してくる。
そこへ無慈悲にも横からあらわれたラッキーはオークキングを一撃で沈める。
さすがに1発で死にはしなかったが気絶をしたようだ。
残りのオーク族はもはやオークキングがやられたとわかると戦意をなくし武器を地面に落とした。
さて、こうなるとどうしたらばいいのだろうか。
戦意のなくなったものを皆殺しというのもどうかと思うし。
考えをまとめているとラッキーはオークキングを叩き起こす。
「ねぇねぇおじさん。どうしたい?」
無邪気な感じだが、かなり極悪に見える。
オークキングももはや心を折られたのか、
「スライムに負けるようならばどのみち上手くはいかない。」
そういうと自分の首に剣をあて自死を選ぼうとする。
ラッキーはその剣を払いのけ、
「おじさん。責任の取り方が間違ってるよ。まだ残りのオーク族が残っているのに見捨てるんですか?」
ラッキー…なんかすごいまっとうなことを言ってる。
普段の会話も偽装なのか?
「そこの人間。残りのオーク族は俺の命と引き換えに助けてやってくれ。どのみち、この場所で繁殖してしまった俺達に未来はなかった。人間を滅ぼしでもしない限り俺達は食べるものがなかったからな。」
ラッキーが
「マスターどうしましょ?殺します?それとも従魔にします?」
オイッ!従魔にオークキングって反則のようなものだろう。
それにこれどうやって説明するんだよ。
「いや…従魔は…」
「じゃあ一族全員皆殺しにするしかないですね。」
いやラッキー怖いから。決断も早いし。
なにその会社の幹部みたいな。
決断はスピードが命だみたいなのいいから。
「…はぁ…わかったよ。こいつらに選択肢をやるよ。オークキングとその他10匹どうする?俺の従魔になるならば命は助けてやる。でも従魔にならないならばここで殺すしかない。もちろん仲間の恨みなどもあるかも知れないがそこはお互い様だから水に流してもらうしかない。」
オークキングは深々と頭を下げる。
「一族は生き残りさえすればまた復活することができる。あなたの従魔として我々を受け入れてください。」
ピロリンという音が頭のなかで響く
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「オークキングが仲間になりました。」
「オークジェネラルが仲間になりました。」
「オーククイーンが仲間になりました。」
「オーク(亜種)が仲間になりました。」
「オーク(鬼人種)が仲間になりました。」
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オークキング以外にも不吉な名前なのがたくさんいたー。
確かに外見が他のオークたちとは違う。
持っている武器などはさほど強そうには見えないが。
こうしてオーク殲滅作戦は幕を閉じた。
ただ、どうしようこのオーク11匹。
従魔って言ってもダメだよね?