サンドビーたちとの戦い。従魔が俺のこと応援して戦っていなかったので従魔にも戦わせてあげることにしたらば…。
サンドビーたちは街から数キロ離れた岩場の中に巣を作っていた。
―――巣というにはそれはあまりに大きすぎるものだ。
俺達が街で退治したサンドビーがおよそ数百匹だったのに対しこの巣の中には幼虫から成虫まで数千〜数万匹までいる。
よし。これはラッキーとオーク、オーガたちを連れてこないと戦えないレベルだな。
もう、誰だよ。巣を見つけ出して殲滅してやるだなんて思ったの。
この勘違いさん♪
俺が見なかったことにして巣からでると、そこには別の場所から戻ってきたサンドビーの群れがやってきた。やばい!どうしよう!
戦うか!逃げるか!
判断は一瞬だった。
この数は無理。俺は急いで岩陰に隠れサンドビーをやりすごす。
サンドビーたちは俺に気が付くことがなく通りすぎていく。
「よし!上手くいった!蜂ごときかわすのは簡単なんだよ。バカめ。」
そう思って俺が足を1歩踏み出したところ。
プチッ。
足元にはサンドビーの幼虫がいた。いやなんでこんなところに!?
どうやら巣穴から落下した幼虫だったようだ。
ブーン!!
「俺じゃないよ。勝手にプチッといったんだよ!」
もちろん言い訳なんて通じなかった。
大量の羽音と共に俺がロックオンされる。
あぁ!もう結局こうなるんだよー。
サンドビーは容赦なく襲い掛かってきた。
うん。絶対に魔法を覚える。間違いなくこの戦闘が終わったらばすぐに魔法を覚える。
オークやオーガなんかに調子にのって上から目線で指導なんてせずに俺も謙虚になろう。
ちょっと自分が強くなった気になって調子にのっててごめんなさい。
向こうからの攻撃はこちらには当たらないが、数が多い。
体力も暑さになれてきているので全然気にもならないが、それでもちょっとめんどくさい。
何かもっと効率よく狩れる方法を考えよう。
火の魔法は…素材をダメにしてしまう可能性があるのでやっぱり素材を考えると風魔法だろう。
ただ、風魔法は前回失敗している。
それで非常に恥ずかしい思いをした。
だから今回攻撃としてはやめておく。
魔法がダメとなると…。
よし剣技のスピードをあげよう。
体力的には全然余裕があるから大丈夫なはずだ。
今までの1振りの時間に2振り、3振りと回数をあげていく。
うん。なかなかいいスピードだ。
今までの自分で自分の限界を決めてしまっていたらしい。
これくらいが適正だと思っていた自分の剣のスピードはいつのまにか手を抜いてしまっていたようだ。
まだいけるな。どんどん剣速を早めていく。
次に、剣速を早めたらば今度は効率のよい狩場を探す。
いちいち背後を気にして振り返りながら剣を振っていたのでは、いくら剣速が早くなったとはいえやっぱりロスがでる。
一番は壁を背中にすることだが、まっすぐ平坦な壁などない。
どうしても隙間からサンドビーが入って来てしまう。
まわりを見渡す。走りながら切り付けるか?
いや、でもそれだとどうしてもスピードで飛んでいるサンドビーに負ける可能性がある。
空だったらばどうだろうか。
ジャンプして…はさすがに無理か。
空を飛べないだろうか。
例えば足場を空気で固定するとか。
俺は軽くジャンプして足場を風魔法で固定する。
ドテッ!
見事にすっころぶ。
サクッ!サクッ!サクッ!
サンドビーは容赦なく攻撃してくる。
うぉい!くそ!殺す気か!
いや、殺す気だろうね。
でもなんか行けそうな気がする。
もっと堅いイメージ。
そう思ってジャンプしながら足場を固定。
今度は少し不安定だが足場を固定することができた。
よし。これならば!
風を操りながらサンドビーよりも高く飛びあがっていく。
サンドビーは横移動にはそれなりのスピードがでるようだが、空高く飛びあがるのは慣れていないらしい。ましてや頭の上からの攻撃にも。
今まではサンドビーが攻撃してくるところをカウンターのように攻撃していたが、風魔法を使って飛ぶことで今度はこちらから攻撃をすることができるようになった。
風でサンドビーを集めてまとめて一気に切り裂いていく。
これはいい。
かなり楽に切れる。深夜のテレビショッピングのジョニーもこれには驚きを隠せないはずだ。
「やぁジョニー!サンドビーに大量に囲まれた時の対処法を知っているかい?」
「やぁマモル!全然わからないよ。僕も対処に困っていてさ。」
「こうすればいいんだよ。」
そんな一人脳内テレビショッピングをしているとサンドビーよりも一回り大きいサンドビーキングやサンドビークイーンという魔物があらわれた。
こいつらは次世代の王と妃なのだろう。
今まで襲ってきていた働き蜂と違いスピードも毒の威力も桁違いにあがっているが、当たらなければ意味はない。この巣は残念ながらお前たちの代で終わりだ。
それから…しばらくしてラッキーたちが応援にきてくれたが俺が空を自由自在に飛んでいるのを見ると、
「ついにうちのマスターは人間辞めたんだな。」
とオークたちが話をしていたのでやっぱり後で少し話をする必要がありそうだ。
お前らのようにホイホイ人間は進化しないんだから、能力を高めるしかないんだよ。
戦闘が空の上になるとラッキーは飛び上がって戦闘に参加してくれたが、オークとオーガにいたってはただこっちをみて応援しているだけだった。
あっなんか座りだした奴がいるぞ。
武器を地面に置いて…。
いや、お前らも少しは戦えよ!
俺はあえてサンドビーキングたちを引き連れてオーガとオークたちのところへ飛んでいく。
ケケケ…従魔が戦わないなんてそんな楽ができると思うなよ。
オーガとオークたちはかなり油断していたのか慌てて武器を拾うが間に合わない。
数人のオーガたちが速攻で麻痺と毒になり動けなくなる。
…足でまとい増やしただけだった。
他のオークとオーガからせめて連れてくるならこっちにも声をかけてくださいよ!
とか文句を言われる。
うん。ごめん。俺がちょっと大人げなかった。
だけど…。
「お前らも俺の従魔ならば少しはラッキー見習って働け!!」
それからみんなで仲良く外にでてきたサンドビーたちを退治し、いよいよ岩場の中の本拠地に入っていくことにした。
もうほとんどサンドビーの姿はない。
ただ岩場の奥になにやら不思議な部屋がある。
ゆっくり慎重にその部屋を確認してみると、そこには黄金色の液体に包まれた不思議な生き物が閉じ込められていた。




