リリーとミムラの学校見学
ギルドマスターの部屋でギルドマスターからいきなり頭を下げられる。
「本当に助かった!!今回もし君が来なかったらばこの街は滅んでいたかも知れない。」
ギルドマスターは目に涙を浮かべながら俺の両手を握ってくる。
俺はこんな芝居には騙されないぞ。
ここから前回のような報酬を値切られるに決まっている。
「それで報酬のことなんだが、ビックビーの通常の討伐報酬が300リンなんだが、今回は3000リンの計算で6753000リン支払わせてもらいたい。これがその報酬だ。」
そういうとギルドマスターは目の前に全額を一括支払いしてくれた。
…あれ?ここから値切られ…。
結果全然値切られなかった。
うん。ごめんなさい。こんな汚い大人になってしまって。
人を信じるのって大事だよね。
「ありがとうございます。」
俺は報酬を受け取りマジックボックスへしまう。
「次に本来回復薬の買い取りはしていないんだが、今回は特別処置として回復薬代としてこれを受け取って欲しい。」
そう言うとギルドマスターは1万リンを俺に渡してきた。
「いや、回復薬は善意の気持ちですのでこのお金はこの街の冒険者の為に使ってください。」
そう言ってギルドマスターに返そうとするが、それではギルドの意味がなくなると言って頑なに受け取ってはくれなかった。
この世界でギルドというのは冒険者を支援して、正規兵よりも柔軟に魔物への対応ができる要は派遣所のような意味合いがあるようだった。
その為支払いが悪いギルドというのは冒険者から見放され、素材の買い取りができなくなったり、今回のような災害があった時に真っ先に見捨てられてしまうということだった。
確かに前回俺が一人でオークを倒しに行ったが、普通ならばありえないだろう。
危うくこっちの世界でもブラック企業に勤めることになりそうだった。
それ以外にもギルドマスターから色々なギルドについての説明を受けた。
ただ、ギルドで値切るという話しを聞いたこともなければ大規模侵攻があったとしてもよほどの成果をださなければ王様からの感謝状や国宝級の武器、ましてや貴族へなるなんて話しは聞いたことがないということだった。
いっかいのギルドマスターレベルではそんな権限はないという。
なんか話の流れがかなり怪しくなってきている。
暗殺者の話しもある。罠の可能性が高いので気をつけて行動することにしよう。
ギルドマスターに根負けして1万リンを受け取る。
ちなみに、この街の学校について聞いてみると約半年後に廃校が決定しているということだった。
その為今から入学は難しいかも知れないがあんな優秀な二人ならば最後を飾るにしてもいいから、もしよければ紹介状を書かせて欲しいというので、コチラからもお願いをした。
半年間でも学校で学べればそれはかなりの財産になるはずだ。
もし、それで学校が気に入ればまた大きな学校に転校することも考えればいい。
ただ、学ぶシステムや学校の状況次第ではもちろん考える必要がでてきてしまうが。
ギルドマスターから何かあればいつでも力になるからと言われ俺は部屋をでる。
最初からこっちの街にくれば詐欺に騙されることもなかったのにと考えながら下の受付に行く。
下ではリリーたちが他の冒険者に囲まれて楽しそうにしていた。
リリーたちは俺が降りてきたのがわかると他の冒険者に俺のことを紹介してくれた。
冒険者の人はもっと野蛮でダメな大人のような人が多いのかと思ったらば、みんないい人で口々に
「本当に助かった。」
「あの剣は魔剣ですか?」
「従魔をあそこまで強くするにはどうしたらば?」
「奴隷の2人をどうやって育てたんですか?」
「魔法使おうとして失敗してませんでした?」
あっ見られてた…恥ずかしい。
「おめぇつぇなぁ。オラワク…。」
どこかで聞いたようなセリフやちょっと恥ずかしい場面を見られてたりしたが好意的に受け入れられてもらった。この後に今日は討伐依頼の飲み会をやると言われたが、先に本来の目的の学校見学をしてから帰りに寄らせてもらうと言って一端ギルドを後にする。
冒険者の人たちはみんな優しい人たちばかりだった。
ただ、少しその中で嫌な噂を聞いた。
他の街でも同じように魔物の大群に襲われ滅びた街があったそうだ。
この街がそうならなくて良かったという話しと国がいよいよ動き出し、各街に騎士団を派遣する準備をしているということだった。
ただ、この騎士団はあまりいい噂を聞かないらしくもめ事にならなければいいなということだった。
俺は絶対に国家権力には逆らわないようにしよう。
触らぬ騎士団にたたりなしだ。
そんなこんなで今度は二人の学校へ見学へ行く。
紹介状もあるので話しくらいは聞かせてもらえるだろう。
★
学校へつくとかなりさびれた状況だった。
校庭の草は伸び放題だし、遊具などはない。
日本で言う小学生から高校生くらいまでの子供の勉強をみてくれるところらしいが全然活気がなかった。
入口を入り職員室のようなところへ行きそこにいた人にギルドマスターから渡された紹介状を見せる。
「ちょっとお待ちください。」
そう言って横の部屋に行きこの学校の責任者の方を呼んできてくれた。
その人は30代くらいだろうか。女性で青い髪に青い目が特徴的だった。
「初めまして。私はこの学校の校長をしているミルキキと言います。よろしくお願いします。」
とても優しそうな笑顔の方で育ちの良さが顔にでているようだった。
「よろしくお願いします。今この子たちが学べる学校を探していまして、とりあえず話だけでも聞かせてもらえればと思い本日うかがわせてもらいました。」
「そうなんですね。勉強のカリキュラムには自信がありますので…」
校長先生の話しでは12のクラスわけがされており、全員1クラス目からスタートをするということだった。
授業時間はおよそ50分くらい。大きな砂時計が全部下に落ちて鐘がなるまでが1つの授業時間だということだった。
この学校では前の世界の塾に近い勉強方法をとっていた。
先生は魔法や剣術の基礎、教科書の変わりになる資料を渡しそれによってそれぞれが勉強をする。テストは毎日実施できその試験に合格すれば上の問題にチャレンジできるということだった。
その為、何年で15年くらいかけて小さい時からゆっくり卒業していく生徒もいれば、最短で5年で卒業した生徒もいるということだった。
ただし、ここを卒業できた生徒はみんな基礎から応用までこなせる力をもっているのでどんな就職も思いのままということだった。
授業のカリキュラムとしては二人にうってつけだと思う。
ある程度実力はあるのに基礎がなっていないからだ。
でも、そんな優秀な学校ならばなぜ半年でなくなってしまうのだろうか?
それについて聞いてみると、一つは人材不足とあと学校の統合ということだった。
ここから更に3つ離れた街にも学校があり、そこの校長が非常に強欲な校長だという。
その校長は自分の学校が一番でないと気に入らないという理由で強かったこちらの学校の先生を引き抜き、引き抜けない先生には嫌がらせをしたりしたそうだ。
生徒自身も引き抜きにあったりしたため抗議をすると、自分の経営力のなさからとバカにされたあげく、この国の王に近隣の街に2つも学校はいらないと進言したらしい。
王様としてはこのまま学校を2つ運営していきたい方針だったそうなんだけど、人がいなかったり、実力がない人間が学校をでても意味がないということで今度の半年後に学校対抗の実技試験をして競うことになったそうだ。
ただ、むこうは金にものを言わせて教育をしているので武器や防具の性能から何からこちらでは全然勝てないのだという。
街の人も最初は応援をしていてくれたがもう敗戦濃厚で士気も高まらないということだった。
半年あればこの二人ならばそれなりに強くはなってくれるだろう。
でも二人の気持は…。
そう思い横を見て見ると二人は熱いまなざしで俺を見ていた。
「二人はどうしたい?」
「僕は…お金を持っている人間だけが得をするのはおかしいと思います。ただ、学校へ行くのはお金がかかることですしその間ご主人様の側を離れることになるので。」
「私もお兄様と同じ考えです。でもご主人様と離れるのは…。」
いい子たちだ~。
本人たちがやる気があるのならばとりあえず半年間ここで学んでもらってもいい。
「ここの入学して勉強したい?」
「もし可能ならば全力で学びます。」
「最短での卒業を目指します。」
俺は校長先生に入学試験があるのかと聞くと、ギルドマスターからの推薦状があるので入学基準は超えているが一応才能を見させて欲しいというので訓練場へ移動することにする。
どんな採点基準になるか楽しみだ。




