表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

歯ブラシ

作者: 白蘭
掲載日:2018/08/28



「じゃ、また今度。」

「うん!お仕事頑張ってね!」



健気な彼女。俺のことを一途に愛してくれる、優しい人だ。

でも俺は君に1つ、嘘をついていることがある。




















俺は君のことを愛していない。























「よ。」

帰ってきても、玄関まで迎えに来ることなんて滅多にない。

「遅い。」

ここはこいつの家。

短気なこいつは、いや、こいつも、俺の彼女だ。

「悪い。」

俺はジャケットを脱ぐと慣れた手つきでラックに掛けた。

ソファーに座ってスマホをいじれば、隣に来るこいつは俺の愛する人。






始まりはこいつの浮気だった。


それを知ったと同じくらいの時期に、君に告白された。

返事を待ってもらってる間にこいつと話をつけるつもりでいた。だけど、なかなか話せなかった。忙しかったんだ、お互い。そう思いたかった。


だから、俺は先に君に返事をした。俺でよければって。君は嬉しそうな笑顔でよろしくお願いします、そう言ったんだ。これであいつの事もあきらめられると思っていた。




でも俺の愛は想像以上に強固なものだったらしい。




それからしばらく経って久々にあいつと会った。真っ先に別れ話をするつもりでいたんだ。だけど、別れよう、たったこれだけが喉につっかえて出てこない。



自分でも驚いた。こいつなんて、すぐに諦められると思っていた。

いざ目の前にすると、今まで気づかなかったこいつの魅力にどんどん惹かれて…



「で、話って何。」


何も気にしていないようで、いつも飄々としていて、滅多に甘えない。

俺にだけ甘えていてほしいと、君のことなんてどうでもいいと、そう思ってしまった。


それでも、問わずにはいられなかった。もしもこいつが本当にその浮気相手のことが大好きなら、俺は別れる覚悟でいた。



「…浮気、してるだろ。」



俺はこいつの目を見れなかった。

どんな顔をしてるだろうか、次はなんて言うだろうか、そんなことばかりが過ぎって、不安でいっぱいだった。なんだか女々しい気分だった。


「そーだよ。」


でもこいつは、何を言うでもなくただ認めた。


「でももう別れた。」


これでいいでしょ?そう言いたげにこちらを見る。


「…そっか。」


俺はそれしか言えなかった。たとえ浮気をしたとしても、俺はこいつのことが愛おしくて愛おしくてたまらなかった。







それから、こいつにも君にも、俺は嘘をつきながら生きている。今度は君と早くケリをつけなきゃいけないらしい。


























「じゃ、また今度。」

「うん!お仕事頑張ってね!」




かっこよくて、優しくて、大好きな私の彼氏。

いつもふらっと来ては私の家に1泊だけして帰っていく。
























でも私は知ってるよ。君が私を好きじゃないこと。
























きっかけはある休みの日。



私は休みの日は外に出て買い物するタイプだから、いつもの休日と同じように、とあるショッピングモールで買い物をしていた。


いつものように、気になるお店見て、いい物があったら買って。



いつも通りの日になるはずだった。



そしたら、君の姿が目に入って、偶然だなって思って、声かけようと近づいた、気づかれないようにね。



でも途中でやめたよ。だって女の人といるんだもん。



その人はすごくかっこよかった。凛としてて、大人っぽくて。

私なんかとは大違いでさ。


それに君の顔も、全然違った。

私といる時なんかよりずっと楽しそうで、幸せそうで。

勝ち目なんてなかった。

きっと君は優しいから、私の告白を断りきれなかったんだと思う。





それからは、いつ別れようか、そんなことばかり考えて。

毎日のように悲しくなって。

でもいざ会った時には別れようなんて言えなくて、もう今日で5回目だよ。別れようって言わずに終わったの。


「わかってるのに、なんで早く振ってくれないの…」

閉まったドアの前でそう呟いた。

涙ももう出なくなったよ。強くなったのか、はたまた脆くなったのか。


時刻は午前8時。今日は日曜日だから仕事も休みだ。

「もう1回、寝ようかな…」

そんなことを考えながら洗面所を通ってトイレへと向かう。




ふと、気づいた。


いつもは置いていっているはずの君の歯ブラシがないことに。


「また来るんでしょ…」


涙が零れそうになる。私は分かっていたはずなのに、この恋の結末が急に訪れたような気がして、悲しくて辛くてどうしようもない感情に襲われた。




「また来るなら、歯ブラシ、置いてってよ…」


























君からのメッセージ:

「別れよっか。」


俺は、少し迷ったが、

「うん、今までありがと。」

そう返しておいた。





きっと君は気づいたんだろう。

いつかの日に、俺があいつといた事に。

俺が持って帰った歯ブラシの意味に。


fin.

ご無沙汰してます、白蘭です。

夏もいよいよ終わりが近づいてきました!

残暑の季節はすぐそこです!!(?)


最後まで読んでいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ