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第4話 こじらせた初恋が終わった



 ……「と、いうわけなんだ」


 子供の頃の出会いから十年程、フェイは初恋相手との再会を目指しながら、かなりの苦労をして浄化巫女の護衛騎士となった。


 だが、実際目にした初恋相手はすっかり悪女になっていたため、幼いころから思い描いていたホムラの変わり果てた姿を目にしてショックを受けていた。


 その為に、毎回任務の後に同僚に愚痴をこぼすのが定例となってしまっている彼だが、一度ついた任務を投げ出すことはなかった。


 というのも浄化巫女の護衛騎士になるという事は、この世界では大層な事だったからだ。

 名誉な事だと言っても良い。

 フェイの育った町も、フェイを育てた両親も、護衛騎士になる事が決まった時はとんでもない喜びを示した。


 だから、初恋に敗れたからと言って、自分の都合で職を辞めてしまう事はフェイにとっては心苦しかったのだ。


 そういう事情があるので、フェイは上手く消化できなていない己の心情を、友人へと今日も打ち明け続ける


「あの方は本当にお変わりになられた」


 フェイの初恋相手との出会いから再会にいたるまでの詳細、フェイのの思い、そして顛末。

 何度も話すうちに、同僚騎士はそれら全てにすっかりくわしくなってしまっていた。


 それらの会話は、相手の同意と、共感を求めたものであったが、聞かされた方の反応は乏しかった。


 同僚の護衛騎士である同じ年頃の少女リシアは、ただ一言。


「へー」


 とだけ。


「リシア、それだけか? 俺に言う事は、それだけなのか?」

「あ、他にもあった。フェイ、お前初恋こじらせすぎなんじゃないか?」


 男勝りな口調で話す同僚の少女リシアは、フェイの発言をそうやってバッサリと切り捨てた。

 快活でさっぱりとした、割り切りの良い性格をした彼女は、フェイト同じく護衛騎士として、ホムラの傍に良く仕えているものだ。


 年数を見ればフェイよりもはるかにリシアの方が先輩であり、彼女は幼い頃からずっとホムラの傍に付き従ってきている存在だった。


 フェイは相手から返って来た言葉にさらにショックを受ける。


「こじらせって……。そんなに俺の行動、おかしいか?」

「おかしいっていうか、珍しい。うん、好きな女の子追いかけて、こんな所まで来る奴は中々いないと思うぞ」

「そうか……」


 リシアに言われた言葉にフェイは、肩を落として激しく落ち込む。


「俺にとっては大切な思い出だったんだけど、相手にとってはただ通りすがりの人間に、一つの親切を働いたに過ぎなかったのかもな」


 ホムラにとっての思い出の価値と、フェイにとっても思い出の価値が等分でない可能性。

 その事に今、思い至ったフェイは、空気と化して今にも空中に溶けていきそうな有り様だった。


 さすがに言い過ぎたと思ったらしいリシアが、励ます様にその肩を叩く。


「あー、その元気出せよ。終わった事考えるより、他の事考えてた方が絶対良いって」


 新たな恋を探せというのはさすがに無理だ。

 今は気をそらす方向で動いた方が、何倍も良いだろう。


 これだけショックなのだから、自分には恋愛は当分出来ないだろう……と、その時のフェイは思った。



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