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ダイアリー:友達が、いたはずなのに。
四月二十日
四月に入ってから、一度も友達と遊べていない。
お母様が、遊ばせてくれない。入学式と始業式のあとに行われる新入生合宿にも参加させてもらえなかった。
習い事の量は減ったけれど、その代わりに成也さんとの時間が増えた。増やされた。
毎日、お母様が屋敷にやってきて、早く後継者を作れと催促してくる。なんとか今ははぐらかすことができているけれど、今のところあまり関心が無いらしい成也さんがいつその気になるか分からない。
お母様には、「妊娠したら学校を中退してもいい」と言われている。そうなったら、ただでさえ学校の人との交流が制限されつつあるのに、本当に誰とも話せなくなってしまう。
茉胡里。
安寧。
美兎。
みんなと遊びたい。麗蘭とのお付き合いが「不倫」という形になってしまっているのも嫌だけれど、友達と会えないのも嫌だ。
会いたいよ、みんな。
また、みんなとトランプがしたい。
でも、私がお母様の娘である限り、それはもう二度と叶わない。