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ノベル:ほんの少しでいいから。
同じ星花女子学園の高等部に通っていても、一年生と三年生、違う学年の私と麗蘭は、あまり会う機会に恵まれていない。
だから、いつも休み時間のちょっとした合間を狙う。
本当に少ない時間。そのときだけ私は、めいっぱい甘えることができる。
身長にして五センチ、学年は二つ。学生の私達にとって、その差は大きい。私は麗蘭の胸元に顔を埋めて、その温もりを感じとる。
「……なにか、辛いことでもあったの?」
優しく、包み込むような声で、麗蘭が聞いてきた。その言葉があまりにも温かくて、心の奥底に染み込んできて、私は思わず、自分の秘め事を打ち明けてしまいそうになる。
……でも、私が結婚していて、そのうえその相手と唇を交わしてしまったなんて知ったら、麗蘭はどう思うのだろう。そう考えただけで、体が真っ二つに裂かれてしまいそうな感覚に襲われる。
言えない。絶対に。
でも、このままだと自分自身が壊れてしまいそうで。なにもかも全て、吐き出してしまいたくなる。
相反するこの気持ちの中で、私は今日も彼女とのやわらかなひとときを過ごした。