ノベル:その男、○原系男子。
「……ただいま戻りました、成也さん」
「おかえり、イアナ」
家に帰って来た私、平菱イアナを待っていたのは、ニュース番組を観ながら白いソファーでくつろいでいる私の……夫の、権座令州成也さん。
「学校はどうだい?」
「ええ。今日も……平穏無事に」
「そうか。懐かしいな、学生生活は」
成也さんがため息混じりに呟いていると、メイドの一人が私に近づいてきた。
「おかえりなさいませ、イアナ様。上着をお預かりいたします」
「ええ。よろしく」
「そういえば、書斎にいくつか段ボール箱が置かれていたのですが、どなたの……」
「段ボール箱?」
「んんん待て待て! それは俺の物だ! 俺が、どこか別の場所に移動させておく! だから誰も触らなくていい!」
「しかし成也様、かなり重いようなのでわたくし達メイドが……」
「いやいやいやいや! 大丈夫だ! 問題ない!」
「そうでございますか」
「じゃ、じゃあ、移動させてくるかな!」
「ならば手伝いを数人……」
「一人でできる!」
◆
ふう、危なかった。もう少しでイアナとメイド達に見つかるところだった。
この……。
百合本コレクションが。
「やっぱりいいよなぁ! 百合は!」
そう、俺は大の百合……ガールズラブ好きなのだ。鍵付きの棚にしまっておこうと思ってすっかり忘れていた。
段ボール箱を開けて、その中の一冊を取り出す。表紙に描かれている二人の少女が、なんとも麗しい。
ああ、俺も……。
「百合に挟まれたい」
もし、イアナが百合女子であれば、イアナの恋人も含めた三人で仲良く交わりたいものだ。
百合厨の味方だと思ったら敵だった。