ノベル:お金持ちの集まり。
ここは、大都市のとある高級ホテル、その大ホール。
「お嬢様、一度食べるのをおやめください」
「なんですの翡翠。……あら、平菱さんのとこの」
「……ごきげんよう、厳島さん」
「あなたもこのパーティーに?」
「ええ。本当は、あまり行きたくなかったのだけれど……」
「最近、忙しいみたいですわね。権座令州成也との結婚生活は順調でして?」
「……ええ」
「……やっぱり、決められた結婚ですのね」
「…………」
「……まあ、私達のような家庭では決して珍しいことではありませんわ。気を強くもって?」
「……ええ。ありがとう」
「……ところで、あなたの結婚を強行した本人は?」
「お母様なら、あそこであいさつに」
「おほほほほほ。ええ、なんとかイアナを結婚させることができましたわ」
「はっはっは、平菱さんもなかなかやりますね。権座令州フーズの成也さんと娘さんを見事に結ばせてみせるとは」
「我々も心底驚いていますよ」
「うふふ。夫が死んだ今、イアナと成也さんが結婚して国内業界ナンバーワンの権座令州フーズと平菱トレードカンパニーが繋がれば、その親のとして私が日本の食品輸出入分野を牛耳ることができるんですもの。娘を利用しない手はないわ」
「我々にとっては、子どもは自分達の偉業を残すための存在ですからなぁ」
「「「あははははは!」」」
「……まあ、お互い息苦しい世界に生まれ落ちてしまいましたわね」
「お嬢様、そろそろ」
「そうですわね。それじゃあ平菱さん、また次の機会に」
「ええ、ごきげんよう」