表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

ノベル:この世界というものは

『私はここに宣言します。私、平菱イアナは……お母様と今後一切接触しないことを。もう二度と……『平菱登和子さん』に屈しないために』


 言った。ついに。

 これで目にもの見せてやることができた。あの憎い女に。


 あんたにとって「道具と思っていた娘に反抗される」ことは最大の屈辱に違いない。平菱イアナが解放された今、私達の復讐が完結する……!


『……なんじゃ。話は、それだけかね?』


 ……『それだけ』?

 今のしわがれた声……「熊井(くまい)重工」の会長、熊井兼端(くまいかねはし)のものだ。一体、どういうこと……?


『イアナちゃん。ワガママ言わないで、家に帰りなさい。いいね?』

『まったく、何の騒ぎかと思ったら……とんだ茶番』

『私は帰らせてもらいます。こんなくだらないことに時間を割いていられるほど、私達は暇じゃないのでね』

『イアナ君、よーく聞きなさい。この世界というものは、それが当たり前でね。表沙汰にこそならないが、産みたくない相手の子を産んだ女子(おなご)などいくらでもいる。そうして一人の妻として、女として、生涯努めてきたのさ』

『それが()(ことわり)。それが……少女らの世渡り術だったのじゃよ』


 イヤホンから、株主達の信じられないような言葉が次々と耳へ入ってくる。


『そういうことよ。さて…………平菱トレードカンパニー社長、平菱登和子が命じるわ。今すぐ私の娘を返しなさい。さもなくば……。よろしくて? 専務?』

『わ、わかりました。今すぐ社長とコンタクトをとり、身柄引き渡しの手続きを……!』

菜琴(なこと)、車の準備をしなさい。私は他の株主の方々と、今後こんなことが起こらないようにすり合わせをしておくわ』

『かしこまりました、登和子様』


 そんな、馬鹿な。


 私、裏見晴朱(うらみはらす)は愕然となり、全身から力が抜けていった。


「せっかくの計画が……」



 ◆



 天寿本社ビル、その地下駐車場。


 このご時世としては古臭いであろうプッシュホン付きの折り畳み式携帯電話で、わたしは伊ヶ崎社長直通電話へコールした。


「……申し訳ありません。作戦は失敗しました。ええ……ええ、まさか株主連中があのような反応をするとは思わず。不覚でした。もう手立てはありません。わたしは姉と共にこの身を貧しい子どm………………え? 想定内? プランB? ……かしこまりました。この世桂菜琴(よけいなこと)、必ずや、遂行してみせます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ