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ダイアリー:いなくなった使用人と、すぐそばにいる使用人。
五月十三日
学校から帰ってきたら、使用人の女の人が一人、いなくなっていることに気づいた。その人の名前は……確かうらなんとかさん。あまり会話をしたことはなかったけれど、お母様にいつも向けていたあの鋭い視線は、一度見たら忘れられない。勇気を出してお母様にこのことを聞いてみたら「何十人といる使用人ごときの顔を覚えている暇があるなら、成也さんと子育てについて話し合いなさい」と言われて取り合ってくれなかった。お母様の側近の世桂さんも、相槌を打つだけでまるで話を聞いていないようだった。うらなんとかさんと世桂さんは二年くらい前に一緒に平菱家に来たはずなのに、どうしてこうも扱いが違うのだろう。お母様は、世桂さん以外はどうでもいいの? 私は、うらなんとかさんもこの家の一員だって、思っていたのに。