ノベル:二人の使用人
「お父さん、お母さん!」
一家心中をしようとした両親は、私達を残して逝ってしまった。
私達は父につけられた傷が浅く、死に損なった。
そして残された私達は誓った。利権を奪うだけ奪って負債は両親に押しつけ、両親の会社を乗っ取った憎いあの女に…………平菱登和子に復讐すると。
◆
「………………」
「裏見さん、また怖い顔してますよ?」
私がスッポンのスープの調理中に包丁を見つめていると、私と同じく平菱家で使用人として働いている世桂菜琴に話しかけられた。
「……あっ! さてはまた悪いこと考えているんですね! ダメですよ復讐なんて!」
私が怪しい行動を繰り返していたせいもあって、彼女には私が復讐のためにこの屋敷に潜り込んでいることがバレている。
「私は許さない。絶対にあの女に目にもの見せてやる」
「登和子様に変なことしないでくださいね? 母親を失ったら、きっとイアナお嬢様が悲しみます。ばかなことはやめましょう」
「あの女がどうなったところで、お嬢様は絶対に悲しまないわよ」
「もーなんてこと言うんですか! 親を愛していない子どもなんていませんよ!」
「どうだか。……とにかく、私のやることは変わらないわ」
「……どうなっても知りませんよ?」
◆
ただ殺すだけじゃ、私の気が晴れない。もっと屈辱を味わわせないと。
私は、復讐の方法を模索していた。
お嬢様の部屋を掃除していた、そんなある日。私は偶然「それ」を見つけた。お嬢様の「日記」だ。
そこには、お嬢様の恋仲の存在が記されていた。復讐の手段に、これを利用しない手は無い。
「……イアナお嬢様の恋人、ねぇ…………」
私は、読んでいた日記帳を元通りクローゼットの奥へ戻した。