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わたしのぱんつ買ってください!

作者:平尾樹
2030年――日本は国家存亡の危機に陥っていた。
進む少子高齢化。税金の値上げ。ブラック企業の横行。教育の停滞。第二次ゆとり世代。人口減少。危険ドラッグの合法化。
この物語はそんな世界のお話。

 ある日の夕暮れ時。
オンボロアパート『たまたら荘』の307号室の住民である吉野は悩んでいた。

「こ、今週の家賃払えないよぉ〜」

 吉野はニート。働いたら負けという価値観の持ち主である為、働いてはいない。おまけに彼女は親からの仕送りを毎月貰いそれを使って暮らしている。しかしそれは先月までという約束で、今月からは自分の働いたお金で払うということになっている。
しかし彼女は働いてはいない。バイトも何もしていない。ただ家でのんびりと寝て、好きがってして、食って、寝る。そんな生活を繰り返している。
自分でもダメだ、自分はクズだと何度も思うもそんな気持ちが続くも寝て起きれば、すぐに明日から本気出すの一言である。

「お金が欲しいお金が欲しい」と念仏を唱えるかのごとく何度も繰り返す。勿論お金は空から降ってくることも家賃が今回払わなくていいよということも無い。

「そ、そうだ。もうアレしかない」
 突然立ち上がり、吉野は自分のタンスから二番目にある引き出しを開けた。中にあったものを取り出し、バックの中に詰め込む。そして吉野は家を出た。

 吉野が向かった先はパンツ専門店『おぱんちゅ中野』。マニアからは聖地と呼ばれている程凄いお店である。しかし一般客からは危ない場所と言われ子供も愚か、大人さえ立ち入ることはしない。おまけに警察でさえ取り締まることをしない。何故かというと『パンツ』が経済を回しているからだ。もしもここでパンツの取り締まりをしてしまうと国家崩壊の恐れも見受けられ、取り締まりができないのだ。

「それにしても本当にここは怪しい……」
 吉野は目を細めて建物を見ていた。
どこかのゲームに出てきそうなお城の形をした建物。所々に赤や青などの色が付き、不気味が雰囲気を醸し出している。

「お嬢さん、何か用かな?」
 後ろから声をかけられた吉野はビックリして声が漏れた。後ろを振り向くとそこにはサングラスをかけ、アフロ頭のヒョロっとした男が立っていた。

「い、いや……別に」
 吉野は答える。

「クンクン……これはパンツの匂いだねぇ〜。もしかして君、取引(見せ)に来たのかい? それにその服。お嬢さん、お金に困ってるんだろ?」
 男はニヤリとして、そう言った。

取引――それは即ち、売りに来たということを示す。

 吉野はこくりと頷いた。
すると男は吉野の肩に手を置いて、ご機嫌そうに建物の中へ導いてくれた。
 建物の中は通気性が良いのか、涼しかった。

「お嬢さん、とりあえず座ってくれよ」
 男はヒヒッと笑いながら言う。
吉野はいわれるままに椅子に腰掛けた。

「お嬢さん、見かけない顔だけど初めてだよね、ここは? もし間違ってたらごめんよ」

「あ、はい! 初めてです!」

「そうだよね。良かったよ。新入りはお客様も喜ぶんだ」

「あ、そうなんですかぁ〜」

「それで今回はどんな下着を――」

 ――男と共に会話して30分。

何故か吉野は持ってきていた下着に着替えさせられていた。ここを何度も使用しているというベテランの30代OL冬美さんに励まされながら、吉野はステージへと向かった。ステージには何百人という人だかりがあった。

「新入りの娘だぁぁぁぁぁーー!」

「新入りのパンツだ! パンツ!」

「新入りのおぱんつよぉぉぉ〜!」
 などの声がステージの中を覆い尽くす。

 吉野は人前で下着を見せるということに羞恥心を感じながらも今月の家賃の為と思い、自分を奮い立たせた。
なぜこんなことになってしまったかというと――三十分前。 

「それで今回はどんな下着を見せに来たのかな?」
 吉野は自分が持ってきたバックからパンツを出した。
テーブルの上に置かれたパンツは数十枚はある。

「はははっ、こんなにパンツを持ってくるとは君も変態さんだねぇ〜」
 男は高らかに笑う。

「そうですかね……? こんなに持ってくるのは珍しいんですか?」

「珍しいよ。あ、だけどたまにいるかな? そんな女の子を俺達は専売人ビッチと呼んでいるよ。あ、専売人ってのは悪い意味じゃないから安心してね。良い意味で言ってるから」

「そ、そうですか」

「そんなことはさておき、それじゃ始めよっか。オークションを」

「お、オークションですか?」

「そうだよ。オークション。もしかして、君さ。おぱ中のこと何も知らずに来たの?」
 驚いた表情で男は吉野に尋ねる。

「は、はい……」
 男は呆れたという様な顔をして、吉野を一瞥して「まぁ、いっか。それじゃ説明するよ。うちはオークション方式なんだ」

「なるほど。オークションですか。それならこのパンツを全部オークションに出品して、後日お金をってことですか?」

「いや、違うよ。お嬢さん。そんな後日なんてくだらないことはしないよ。新鮮さ(・・・)が落ちるじゃないか。毎日、どんな時間にもここおぱ中はオークションを専売をしている。だからこそ、聖地と呼ばれてるんだよ」
 男は口を円滑に回し、更に話す。

「それでね、お嬢さん。パンツっていうのは新鮮さが命なんだ。上位階層(特殊)マニアに至っては色んな要望をしてくる人だっている。ここで稼ぎたいと思うなら、お客(リピーター)をつけることが大事なんだ。それに新入りの女の子はお客にとって、それも君みたいな可愛い女の子はすぐに儲けることができる」

「なるほど。そうですか。お客(リピーター)をつけるか。なるほどなるほど。勉強になります」

「勤勉な娘は好きだよ。色々と説明をしたいけど、それはショーが終わってからにしよっか。それじゃあ、脱いでもらっていいかな? その服を」

「えっ?」
 吉野の頭の中は疑問符が大量に溢れた。

「脱いでもらっていいかな? 服を」

「あの、なんで脱がないといけなんですか?」

「そうか、一般人には分からないか」
 男は大きく溜息を吐いた。

「例えばの話だよ。新鮮な魚と新鮮ではない魚、君はどっちが食べたいかい?」

「それは勿論、新鮮な方ですよ!」

「だよね。それと一緒だよ。マニアにとっては新鮮さが大事なんだ」

「あの、パンツをマニアの人は食べるんですか?」

「はははっ、パンツを食べる人かぁ〜。居るには居るけど、それはかなり特殊な人だよ」

「居るんですね……パンツを食べる人」

「そりゃあーね。でも大半の人は飾るだけだから安心してね」

「パンツを飾るのも安心できないんですけど……」

「まぁまぁ、そう言わないでよ。それで覚悟は決まったかい?」

「分かりました。やります!」
 吉野はそう宣言した。
すると男が電話をかけた。
そして言う。
「じゃあ、僕は先に行くから。すぐに女の人が来るからその人に色々と聞いてね」と。

――そして現在に至る。

 吉野は胸元を手で隠しながら、歓声が響くステージの上で立ち尽くしていた。

「ほらほら、新入り! なんか言わないと!?」
 ステージの裏から冬美さんに声をかけられ、どうしようと後ろを振り向く。

「ポーズ! ポーズ!」
 冬美さんからアドバイスを貰う吉野だったが、どんなポーズをすればいいのか分からない。
だけどお金の為だ。何かしないと。
吉野は自分を奮い立たせ、おしりを観客の方へ向ける。

「わ、わたしのぱんつを買ってください!」
 白を基調とし、赤の水玉模様が入ったおぱんつ。
吉野がぎこちなく、おしりを動かす。
 その度に観客達から
「水玉が動いた! 動いたぞぉぉー!」
「世界最強のおぱんちゅだぁぁー!」
「パンツパンツパンツパンツパンツ」などの声援が送られた。 

 吉野のおぱんつショーは多大なる拍手と共に終わりを告げた。それとおぱんつコールと共に。
 色んなポーズを取り、疲れた吉野はすぐに服を着て、椅子に腰を下ろし、テーブルにもたれかかる。

「はぁー……それにしても疲れたな」
 吉野はぽつりと呟いた。

「それにしても……わたし、色んな人が居る前で下着とかを見せて、何やってたんだろ」
 冷静になって考えれば考えるほどに吉野の顔は赤く染まり上がった。あのときはあまりの緊張で何も考えていなかったけど、流石にアレはおかしいと我に返り、自分はなんて馬鹿なことをしたのだろうと後悔した。

「お、お嬢さん。今回はおつかれぇ〜」
 あの男が大きなキャリーバッグを持って、吉野とは反対側の席に着く。

「もう疲れましたよぉ〜。足腰が外れそうです」

「はははっ。足腰が外れそうですか。そりゃそうだよぉ。あんだけの量のパンツを客に見せたんだからね。ガールズショーのモデルでもあんなに何度も行き来できないからね」

「……あのところで、お金は?」

「やっぱり気になるよね。はい、これが君の働いた額だよ」
 そう言って、男がキャリーバッグを開けて、吉野に差し出した。

「こ、こんなに……」
 キャリーバッグには札束が何個も入っていた。
額的には凄いことになりそうだ。

「あのこれ全部でどのくらいあるんですか?」

「全部で軽く1000万だね」

「10000000!!」
 吉野はテーブルはあまりの金額に驚き、テーブルを叩いて立ち上がった。

「あ、だけどね。ここで仲介料が発生して、金額の10%はうちが貰ったけどね。あ、それとこのお金はお嬢さんの売れた金額だけでなく、チケット料金やお客様(リピーター)さんからの月会費みたいなものも入っているから」

「は、はぁ……」
 吉野はあまり良くわからなかったが、あんな短期間でこれだけの金額を稼げると知り、ニートでも良いと思った。

「あ、ちなみに正雇用もここしてるんだけど働くかい?」

「正雇用もしてるんですか!」

「まぁ〜ね。お嬢さんみたいな可愛い女の子なら大歓迎だよ。あ、それに最近は提供者も少なくてね」

「そうなんですかぁ〜。こんなに儲かるのにね」

「色々と問題があるんだよ。儲かる裏側みたいなものが……おおっと口がついつい滑ってしまったね。すまないね、お嬢さん」

「ん? なんですか? 裏側って」

「ん? なんのことだい? お嬢さん。俺はそんなことを言った記憶は無いけどね。あ、それにしてもこんな時間だ。もう帰った方がいいよ。送っていこうかと言いたいところだけど、生憎俺はまだまだ働かないといけないからね。じゃあー一人で家に帰ってね」
 吉野は男からそのまま追い出されてしまった。

「はぁー……それにしてもこんなに楽してお金稼いでいいのかな?」
 吉野はそんなことを思いながら、大きなキャリーバッグを片手に自宅へと戻る。

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