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実は、天使は家事が得意なんです

今回は短いお話です

健太は何かの気配で目が覚めた。目を覚ますと身体のあちこちが痛む事に気付いた。


(あぁ、そうか。床に敷いた毛布の上で寝たんだな)


昨日、突然やって来た天上界の天使だというエリスと出会い、事の成り行きで同居する事になったのだと思い出した。


「起きた?朝ごはん出来てるわよ」


健太が起きる気配に気付いたのか、台所からエリスが声をかけた。


既にエリスの寝ていた布団は畳まれていた。


健太もそそくさと自分の寝床を撤収して、座卓を部屋の真ん中に設置した。


「さぁ、早く食べましょう。もうすぐ仕事でしょ?」

エリスの言葉に時計を見ると6時になっている。


トーストの乗った皿と昨日健太が買って来たお惣菜をのせた盆を持ってエリスが居間に入って来た。


「昨日晩ごはんに買ったやつだな」


「ちゃんと食べなきゃ、もったいないでしょう?」


エリスはなかなかしっかりしているようだ。


「いただきます」


健太はマーガリンを塗ってトーストにかじりつく。エリスも同じくマーガリンを塗って食べる。


「今日さ、お金渡すから、今すぐに必要な服とか買って来てよ」


健太は朝食を食べ終えて、食後のコーヒーを飲みながら言った。


「女の子の服がいくらするのか知らないけど、とりあえず2万円渡すから、それで買っといてよ。他に必要な物はネット通販で買えば安く買えるから、今日すぐに必要な物だけにしてよ」


「ありがとう。でも、どこに買いに行けばいいの?」


エリスが首を傾げながら言った。エリスは地上に来たばかりのようで、こちらの地理には詳しくないようだ。


健太が住んでいるマンションのすぐ近くには洋服を売ってる店がない。


「駅前あたりなら店もあるだろうから、福山駅に出るか」


「どうやって行けばいいの?」


「マンションの前の道を渡り、左に行ったらすぐに脇道があるから、そこを右に曲がってそのまま進めば踏切があるんだよ。踏切を渡ったらそこが備後本庄という駅なんだ」


「その駅から福山駅に行けるのね」


健太はエリスに備後本庄から福山までは1駅で運賃が140円である事、切符は自動券売機で買う事、列車に乗る前に必ず自動改札機に切符を通す事を教えた。


「福山行きという列車に乗れば3分くらいだから。帰りは福山駅の7番か8番乗り場の府中行きに乗ればいいよ。店はだいたい10時ごろからやってるから、10時になってから出掛けるのがいいだろうな」


健太はエリスに列車の乗り方を教えた。


「ありがとう。とりあえず、言われたようにやってみるわ」


エリスは笑顔で言った。


一方の健太は、そろそろ出勤しなければならない時間だと気付いた。


「じゃあ、仕事行って来るよ。夜は7時くらいには帰るから。出掛ける時にはカギをかけといてな。カギは俺のと同じのがあるから渡しとくよ」

健太はそう言ってから部屋を出た。


まだ時間は7時すぎである。出掛けるのは10時すぎてからと言われたので、それまで何をしていようかエリスは考えていた。


(出掛けるまで3時間、掃除や洗濯は全部出来そうね)


エリスは出掛けるまでの時間を無駄にしないように、まずは、ユニットバスの入り口脇のカゴに入っていた洗濯物を洗濯機に放り込んだ。洗剤を入れ、洗濯機のスイッチを押した。


次いで、居間の座卓を隅に立て掛けると、掃除機を探しだして掃除を始めた。


洗濯が終わるまではまだ時間がありそうなので、今度は雑巾を探して台所の床を拭いた。


ついでに、トイレもスポンジタワシできれいにして、風呂場も洗剤でしっかりと水垢を落とした。


そうするうちに、洗濯機が止まり洗濯物を中から取り出してベランダに干すためにカゴに入れた。


狭いベランダに物干し竿が一本あるだけだが、一人分の洗濯物を干すには充分だ。エリスはテキパキと洗濯物を物干し竿に通して行った。


これでようやく家事が終わった。


エリスは天使ではあるが、天上界の住民も当然ながら家事をやらなければならない。天使だからといって、魔法が使えるわけではないのである。


家事が終わり時計を見ると時刻は9時40分、健太は店は10時に開くと言っていたのを思い出し、とりあえず飲み物でも飲んで、それから出掛けようとエリスは考えた。


エリスは飲み物を探して台所に行った。冷蔵庫にペットボトルに入ったお茶を見つけそれを取り出すと、その場でフタを開けてグイグイと飲んだ。労働の後だけに、よほどうまかったのか500mlのペットボトルがあっという間に空になった。


空になったペットボトルをゴミ箱に入れて、何気なく冷蔵庫の脇の戸棚の一番下の段を見ると、そこには炊飯器があった。


天上界は主食はパンであり、米を食べる人は極めて少ない、しかし、炊飯器は噂に聞いた事があったし、実際にご飯を食べた事もある。なかなか米が手に入らないので、天上界ではご飯は気軽に食べられないのだが、とても美味しかった記憶がある。


まさに、目の前に炊飯器を見つけエリスは心が踊った。


(炊飯器があるなら、米さえあればご飯を毎日作れるわね。健太の昼のお弁当も私が作らなきゃ♪)


(天上界では貴重な料理であるカレーライスとか、簡単に出来ちゃうわね)


エリスはいろいろ想像が膨らんでいった。


しかし、いつまでもワクワクしているわけにはいかない。今日は買い物に行く日なのだ。



次回はエリスの鉄道初体験とお買い物です。エリスの金銭感覚が明らかに…


次回をお楽しみに

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