乗り鉄は食事も車中で済ませるのは普通です〜青春18きっぷで山陰の旅〜
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8月半ば、世間では盆休みと呼ばれる時期である。
しかし、路線バス運転手の中野健太にとっては、毎年盆休みにゆっくり休む事など出来ないのである。
盆期間も本数はやや少なくなっているものの、バスは運行しているし、福山市ではお盆に花火大会があり、観客を運ぶシャトルバスを出さなければならないので、世間が盆休みだからといって健太が休めるわけではない。今年も一日だけ休む事が出来るだけである。
この貴重な休日に、健太はエリスと青春18きっぷを使い山陰地方に出掛ける事にした。今回は日帰りで鳥取駅と松江駅を訪問する。これで、中国地方の県庁所在地の代表駅は完全制覇となる。
この日は出発が早いので、前日は早寝していたため、健太は早めの起床も問題なかった。エリスは元々早起きなので、普段と何ら変わりない。
健太は起床してすぐに顔を洗い、エリスが用意したトーストとコンソメスープの朝ごはんを食べて、それからパジャマから出掛ける服装に着替えた。エリスは健太よりずっと早く起きていて、着替えと化粧はとっくに済ませてある。
「そのネックレス、ずっと付けてくれてるのね。嬉しいわ」
パジャマを脱いで肌着になった際に、健太の首から先日エリスが誕生日プレゼントとして渡したネックレスが掛かっていた。
天上界では、女性は結婚出来る年齢になると自分がデザインしたネックレスを作る習慣があり、結婚したい男性が現れるとそれを渡す。つまり、ネックレスを渡すという事は女性からのプロポーズである。
男性がそれを受け取れば結婚する意思があるという事であり、結婚する意思が無い男性はネックレスを受け取らない。
健太がエリスからネックレスを貰ってそれを付けているという事は、健太がエリスからのプロポーズに同意したという事になる。
しかし、エリスは天使というか、天上界から派遣され地上界が滅亡したりしないように、水面下でいろいろ活動する諜報員もしくは工作員となるための試験として健太の所に来ているのであり、試験が終われば地上界のどこに赴任するかわからない。都合よく健太の近くに赴任出来るとは限らないのである。
エリスがそのあたりをどう考えてこのネックレスを健太に渡したのかはわからないが、健太からはあえてエリスに問いただす事はしなかった。聡明なエリスの事だから、何らかの考えがあるだろうと健太は思っていたからである。
普段、お洒落に興味などがなく、ネックレスを付けるような事はありえないようなタイプの人間である健太が、エリスから渡されたネックレスをいつも付けているので、それを見たエリスはとても喜んだ。
「風呂に入る時以外はずっと首に掛けてるよ」
健太は寝る時も仕事中もこのネックレスを付けるようにしていた。
例外は寝る前に健太とエリスがイチャイチャする時である。激しくイチャついてネックレスを傷める事がないように、その時だけはネックレスをしないようにしていた。
「このネックレスはエリスがデザインしたの?」
「そうよ。天上界にはこのようなネックレスを作る専門店があって、材質とか装飾とか、自分で考えて注文するのよ。凝った人だと、ネックレスというよりペンダントみたいなのをデザインする人もいるわ」
健太はエリスがデザインしたネックレスを外してじっくりと見つめた。
材質は何かわからないが、シンプルなデザインで特に目立つ部分はない。しかし、よく見てみると、チェーンの輪っか一つ一つがメビウスの輪になっている。
メビウスの輪とは帯を捻って繋げた輪で、表と裏が繋がっている。
「これはメビウスの輪だね」
健太がエリスに尋ねた。
「地上界ではメビウスの輪というの? 天上界ではシュレムンドって呼ばれているのよ」
「エリスがこのデザインにした理由はあるの?」
健太が一番知りたい事を質問した。
「一番の理由は安くつくからよ」
エリスが苦笑いしながら言った。それを聞いた健太はズッコケそうになった。
「私もお金があるなら、もっと凝ったデザインにしたかったんだけど、うちは両親が学歴がなく、父は工場で単純労働、母は清掃会社の清掃員で、収入があまりないのよ。だから、そんな高いネックレスは作れなかったのよ」
エリスの生まれた天上界は完全な学歴社会であり、全ての職業に試験がある。学歴の無い者がひと山当てて一攫千金などは望めず、学力の無い者は収入の低い職業にしか就けないシステムになっている。
「安いなかで、あえてこのデザインにした理由ってのを知りたいな」
健太は安いからという回答をされるとは思っていなかったので、いささか拍子抜けしたのだが、気を取り直して尋ねた。ここで、エリスが安ければ何でも良かったから特に理由は無いと答えたら、健太とすればガッカリしてしまうだろう。
「シュレムンド……こちらではメビウスの輪っていうのよね? そのメビウスの輪って表と裏が繋がっていて、どちらが表でどちらが裏かわからないでしょ?」
「うん」
「つまり、表も裏も無いわけよ。このネックレスを渡す人とはそんな関係でありたいという意味を込めてあるの」
エリスが少し頬を赤らめて言った。エリスも改めて説明するとなると、やはり照れてしまうのである。
「表も裏もないねぇ……」
健太はエリスの考える夫婦のありかたを考えた。
「つまり、隠し事をしない夫婦関係って事かな?」
健太が自分の解釈を披露した。それを聞いたエリスは大きくうなずいた。
「そう、そんな夫婦関係でありたいわ。嘘をついたり、隠し事の無い夫婦が私の理想なの」
エリスが微笑みながら言った。確かにエリスは普段から嘘をついたりしないし、隠し事もしない人間である。
「なるほどねぇ……」
健太はエリスの言う理想の夫婦関係についてと考えてみた。
(縛りがキツいタイプの人間かもしれないな)
裏表無い夫婦関係というのは、聞こえはよいが、夫婦とはいえ隠し事の一つや二つあってもいいと健太は思う。社交的ではない健太はむしろ夫婦とはいえ知る必要の無い事は知らなくてよいと思っていた。
ずっと彼女がおらず、友人も少なかった健太は一人で行動する事が多く、どちらかといえば個人主義である。エリスの言う理想の夫婦関係は個人主義とは対極とも言えるものであり、健太にとってはやや重い。
健太はエリス自身が誠実な人間なので、パートナーにも誠実さを求めるのだろうと考えた。
もっとも、エリスが大人しくて優しいと健太が思っているのは、エリスが猫を被っているからであって、エリスは本来は気性の激しいタイプなのである。しかし、健太がそれを知るのはもう少し先である。
「そろそろ、出掛けないといけないんじゃない?」
エリスが時間を気にしていた。健太が壁に掛けてある時計で時間を確認した。
「そうたな。出発しないといけないな」
早速、アパートの部屋を出た二人は、早朝から照りつける夏の日差しのなかを備後本庄駅に向かった。
備後本庄8時02分発福山行きに乗り込んだ。備後本庄から福山までは1駅しかなくわずか3分で着く。
8時05分に福山駅に着いた健太とエリスは改札口に行き、駅員から青春18きっぷに二人分のハンコを押して貰った。普通は最初に乗車した駅でハンコを押してもらうのだが、備後本庄駅は無人駅なので最寄りの福山駅でハンコを押してもらう事になる。
健太とエリスはハンコを押してもらうとすぐに山陽本線のホームに上がる階段に向かった。
盆休みのため通勤ラッシュ時とはいえ通勤客の姿は少ない。代わりに、遊びに行く若者や家族連れ、また盆の帰省客で福山駅は混雑していた。
山陽本線のホームにも普段の通勤ラッシュ時には及ばないが、それなりに混雑している。健太とエリスは乗車口案内表示に並ぶ列に付いた。二人の前には既に数人並んでいる。
数分後、福山駅8時18分発普通列車相生行きが到着した。6両編成で車内はそれほど混雑していないようである。健太とエリスは並んで席を確保した。平日のラッシュ時にはとても混雑するので、まず座れないのだが、やはり今日は普段よりは乗客が少ないのだろう。
福山駅で大勢が乗車したため、車内はほぼ満席となって列車は岡山へ向けて出発した。
福山から岡山までは1時間ほどかかる。健太は当然だが、エリスもこの区間は何度か利用しているので、車窓も特に目新しい物はなく、二人はお喋りをしながら岡山までの1時間を過ごした。
岡山に着いたのが9時17分で、次に乗る津山線の列車は9時42分発なので乗り換え時間は25分ある。
しかし、二人とものんびりしていられない。トイレを済ませてから構内のコンビニで昼ごはんを調達しなければならないからだ。
今回の旅行は乗り換えがタイトなためレストラン等に入る時間がない。そのため、昼ごはんは列車内で食べる事になった。
健太はおにぎり数個と飲み物を買った。一方、エリスは菓子パンが二つと飲み物である。
昼ごはんを調達してから、ズラリとたくさん並ぶホームの一番隅っこにある津山線のホームに向かった。
二人がホームに現れるのを待っていたかのように2両編成の列車が入線した。
二人は一番近くのドアから車内に入ったが、二人より先に大勢が並んでいたので、向かい合わせの4人がけのボックス席に並んで席は確保したものの、進行方向に背を向けて座る事になった。
二人の向かい側には、こちらも青春18きっぷを使っていると思われる高校生くらいの少年の二人組が座っていた。
この少年達はお喋りの内容から、四国のどこかから乗車したようで、鳥取に向かっているようだ。鳥取からどうするかをしきりに気にしているあたり、帰りの行程がまだ決まっておらず、とりあえず鳥取まで行ってみるようである。という事は、健太とエリスも鳥取を目指しているので、この後も鳥取までは彼らも二人と同じ列車に乗って来るはずである。
(鳥取から四国まで帰るのは大変だろうな。計画をちゃんと立てないと帰れなくなるぞ)
少年達の会話を聞きながら健太は思った。
中国地方は、瀬戸内海側の山陽地方と日本海側の山陰地方は、中国山地を挟んで完全に分断されている。特急列車を使うならまだしも、青春18きっぷで普通列車のみを使って移動するのは極めて困難である。
健太の目の前にいる少年達が、鳥取からどのような行程で四国に帰るつもりなのかわからないが、少なくとも事前に計画は立てておくべきである。
健太は充分に知識があるので、少年達にアドバイスをしてあげるくらいは出来るのだが、向こうから求められない限りアドバイスをするつもりはない。ヲタクというのは他人からあれこれ言われるのを嫌うからである。健太自身も他人からアドバイスなどされても、余計なお世話だと腹が立つのである。
岡山駅を出発した列車はすぐに法界院という駅に停車した。ここは大学が近くにあるので、盆休み期間でなければ学生の乗り降りが多いはずだが、この日は乗降客も少なかった。
この列車は快速列車なので、法界院を出発すると次は金川まで停まらない。
法界院を出発した快速列車はしばらくは住宅地を走っていたが、ほどなくして山際を走るようになり、住宅地の間に田んぼが見えるようになった。
山とは反対側の車窓には大きな川が見えるようになる。この川は岡山県の三大河川の一つに数えられる旭川である。ちなみに、あと二つは高梁川と吉井川である。
小さな駅をいくつか通過した後金川駅に停車した。この駅もそれほど大きな駅ではなく、数人が下車したものの乗って来る客はいなかった。
金川を出発してからは車窓は本格的な田園風景となる。次の停車駅は福渡である。途中、建部という駅を通過して福渡に到着したのだが、駅の周囲は建部の方が人家も多く、なぜ建部に停車しないのか不思議である。
健太とエリスの向かい側に座っている二人の少年は相変わらず帰りをどうするか話し合っている。どうやら、来た時と同じルートは嫌なので別の路線に乗って帰りたいようであるが、列車の時刻もわからずどうすればいいか決めかねているようである。
(この様子では、来たルートをそのまま帰るしかないだろうな)
健太は少年達の会話を聞きながら、別のルートを見つけるのは無理だろうと思った。ローカル線は列車の本数が少ないため、乗り継ぎをきちんと調べておかないといけない。行き当たりばったりに乗っていると、乗り継ぎがうまくいかず無駄な時間を使う事になってしまう。
しかし、健太は少年達にアドバイスをしてもよいが、余計なお世話にならないよう助言は控えていた。
「ねぇ君達、この後の予定が決まらないのかしら?」
エリスが突然少年達に話しかけた。これには助言を控えていた健太は驚いたし、見た目が白人のエリスが流暢な日本語を話したので少年達も驚いていた。
「あ、はい……」
「そうです……」
一般的な日本人は白人の美少女と話す機会もないので、少年達は緊張しているようである。
「ねぇ健太、力になってあげて」
エリスが健太の方を向いて懇願した。
「力にはなれると思うけど……」
健太はエリスに言われたら承諾するしかない。
「鉄道詳しいんですか?」
少年のうちの一人が健太に尋ねた。
「まぁ、少しはね……」
「健太は全国の鉄道に乗りに行ってるから、とても詳しく知ってるわよ」
健太は謙遜していたのだが、エリスが自分の事のように健太が鉄道にとても詳しいと言ってしまった。
ヲタクは知識をひけらかすのを嫌うし、ヲタク自身も知識を自慢したりはしないものである。知識を自慢したところで、上には上がいるのだから、知識を自慢した相手が自分より豊富な知識を持っている可能性もある。
「君達はどこから来たのかしら?」
エリスが勝手に場を仕切っていて、司会進行役となって話を進めた。
「シドです」
「シド?」
少年が言った地名がエリスには理解出来なかった。
「志度か、高松の先だね。エリス、こないだ徳島へ行った時に、高松から徳島まで乗った普通列車で志度は通ったんだよ」
志度とは高松から高徳線で少し行った所にある駅の名前である。
健太が少年達から話を聞いたところ、二人は高校生で夏休みの思い出作りにどこか遠くへ行ってみようという事になったが、あまりお金がなくどうしようかと思っていたのであるが、少年のうちの一人の大学生の兄が青春18きっぷというのがあると教えてくれたらしい。
そこで、さっそく購入して、先週に松山まで行って来たのだが、まだ青春18きっぷの使用回数が残っているので、今度は瀬戸大橋を渡り本州に行ってみる事にしたとの事。
当初は広島に行くつもりだったのだが、広島は二人とも過去に行った事があったので、これまで行った事がない所にしようという事になり、あれこれ意見を出し合った結果、こういう機会でもないと行く事がなさそうな鳥取に行ってみる事にしたと少年達が言った。
少年達は時刻表を持っていないので、とりあえず今朝早くに志度駅に行き、青春18きっぷにハンコを押してもらう際に駅員に鳥取に行く方法を尋ねた。駅員から岡山まで行き、津山を経由すれば行けると聞き、現在津山線の列車に乗っている次第である。
健太は鉄道に乗りに行く際には、極めて綿密な計画を立てて行動するタイプなので、少年達のずさんな計画に内心あきれていたものの、とりあえず、少年達が鳥取からの帰りにどのようなルートを希望しているのかを尋ねてみた。
少年達は健太に自分達の希望を伝えた。
①…行きと帰りは違うルートを使いたい
②…出来れば夜9時頃までには志度に帰りたい
③…別料金を払わず青春18きっぷのみで乗れる列車を利用したい
健太が少年達から聞き出した彼らの希望は上記の三つだった。
健太は難しい顔をしながら少し考えてからおもむろに口を開いた。
「これは無理だよ」
健太の口から出た言葉に一番驚いたのは少年達ではなくエリスだった。
「えーっ!? 無理なの?」
エリスは健太の鉄道の知識を駆使すれば絶対に良い方法を見つけられると思っていた。だからこそ、彼女の方から少年達に声をかけてみたのである。
「困ったなぁ……」
少年達のうちの一人の眼鏡を掛けた小柄な少年がため息を吐いた。
「どうしようか?」
もう一人の髪を茶髪に染めたヤンキーっぽい少年が眼鏡の少年に話しかけた。
「健太、この子達困ってるじゃない。どうにかならないの?」
エリスが少年達以上に困った顔をして健太に懇願した。
「どう考えても、この三つの条件を全部満たす方法は見当たらないんだよ。どれか一つを諦めなければならないよ」
健太が困り果てている少年達に言い聞かせた。
「今は夏休みだから、帰るのが遅くなっても大丈夫だろ」
ヤンキーっぽい少年が眼鏡の少年に言った。
「そうだな」
眼鏡の少年が答えた。
「あの、帰るのは遅くなってもいいので、違うルートを通って、余分なお金をかけない方法はありますか?」
ヤンキーっぽい少年が健太に尋ねた。
「それなら、鳥取まで行ったら米子に向かい伯備線だな。新見で乗り換えて岡山まで行ってマリンライナーで高松まで行ける」
健太が頭の中でルートを思い描きながら言った。少年達はピンと来ないのか、きょとんとした表情でそれを聞いている。
健太は少年達に詳細な行程を説明した。
津山→智頭→鳥取→米子→新見→岡山→高松→志度の順に乗り継げば22時過ぎには志度に着く。難点は新見で1時間近い待ち時間が発生する事と、岡山での乗り継ぎ時間が5分しかない事である。
「なるほど、少し遅くなるけど、これならいいんじゃないか?」
ヤンキーっぽい少年が眼鏡の少年に言った。
「そうだな。10時過ぎに帰れるならいいだろうな」
眼鏡の少年も納得したようだ。
「教えてくれて助かりました。メモを取りたいので、もう一度言ってもらえますか?」
ヤンキーっぽい少年がスマホを出して健太に言った。メモを取ると言えば、紙とボールペンという時代ではなく、今ではスマホにメモを保存するのが主流である。しかし、健太は紙にボールペンでメモを取る派なので、少年が一向に筆記用具を出さないので、乗り継ぎ時間を言うのを待っていた。
「どうぞ、お願いします」
ヤンキーっぽい少年に言われて、健太は少年がスマホにメモを保存しようとしている事に初めて気付いた。そして、ゆっくりと乗り継ぎを少年に教えてあげた。少年はそれをしっかりとスマホに保存した。
「これで間違っていませんか?」
少年がスマホを健太に渡し、健太がそれを確認した。健太はメモを取るなら紙にボールペン派だし、小説を読むならオンラインより活字派である。健太はスマホやPCのディスプレイに表示された文章より、紙に書かれた文章の方が頭に入るタイプなのである。そのため、少年にスマホを渡されて彼が取ったメモを確認したが、なかなか頭に入らずゆっくりと確実に見てようやく間違いが無いと確定出来た次第である。
「これでいいよ」
健太が少年にスマホを返しながら言った。スマホを返されたヤンキーっぽい少年は、今度はもう一人の眼鏡の少年にスマホを渡した。眼鏡の少年はスマホ画面をじっくりと見つめていた。
「これだと、どこで昼飯食えるんだ?」
眼鏡の少年がヤンキーっぽい少年にスマホを返してから言った。ヤンキーっぽい少年はスマホを改めて見つめた。
「あ、そうか……」
健太が彼らに勧めた乗り継ぎとは
岡山発9時42分
↓
津山着10時50分
津山発11時35分
↓
智頭着12時43分
智頭発12時56分
↓
鳥取着13時42分
鳥取発14時02分
↓
米子着15時46分
米子発16時08分
↓
新見着18時02分
新見発18時50分
↓
岡山着20時37分
岡山発20時42分
高松着21時39分
高松発21時45分
志度着22時11分
このような乗り継ぎである。お昼時の智頭や鳥取では乗り継ぎ時間が短く、ゆっくりと食事をする時間がない。乗り継ぎ時間が長い津山だと昼ごはんには少々早いし、新見だと昼ごはんというより晩ごはんになってしまう。
「困ったなぁ……弁当でも買っとけばよかった」
ヤンキーっぽい少年も困っているようである。そこで、健太は助け船を出す事にした。
「津山で時間があるから、駅構内か駅前にコンビニの一つくらいはあるはずだから、そこで食べ物を買って車内で食べればいいんじゃないかな? 俺達も岡山で食べ物を買ってて、車内で食べるつもりだよ」
健太の助言に少年達は笑顔になった。
「なるほど、そうします。ありがとうございました」
ヤンキーっぽい少年は笑顔で健太にお礼を言った。
「本当に鉄道に詳しいですね。僕らも、もっときちんとした下調べをしておくべきでした。本当に助かりました」
続いて眼鏡の少年もお礼を言った。
「私達も米子までは同じ列車よ。互いに旅を楽しみましょうね」
エリスがお姉さんぶって少年達に言い聞かせている。エリスの家族構成については聞いた事はないが、年下相手に自然にお姉さんぶるあたり、天上界に弟か妹がいるのかもしれないなと健太は思った。
少年達と長話をしていたため、いつの間にか列車は終点の津山に近付いていた。車窓には津山市郊外の住宅地が見えていた。
すぐに車内に津山到着のアナウンスがあり、列車は10時50分に津山駅に到着した。
次に乗る因美線の列車は違うホームから出発するので、健太とエリスは跨線橋の階段に向かった。
「君達はあそこの改札口から出て、食べ物を買ったらすぐに改札口から入って一番向こうのホームに来るんだよ」
跨線橋へ向かう前に、健太は少年達の方へ振り向き声をかけた。
「はい、わかりました。じゃ、また後で」
ヤンキーっぽい少年が答えてから、もう一人の眼鏡の少年と共に改札口へ小走りに向かった。健太は少年達がちゃんと改札口から出たのを確認してから跨線橋を渡り、因美線の列車が発着するホームに向かった。
健太とエリスが因美線の列車が発着するホームに降りると、既に数人ホームで列車を待っていた。二人は乗り口の案内表示がある場所に並ぶ人の後ろに並んだ。健太はエリスに列の場所取りを任せ、タバコを吸うためにホームの隅にある喫煙コーナーに行き、そこでタバコを二本吸ってからエリスの所に戻った。
健太がエリスの所に戻ってからすぐに、食べ物を買いに行った二人の少年が跨線橋の階段を駆け降りて来た。
「君達、こっちよ」
エリスが少年達に声をかけて乗車口の列に並ばせた。
「駅にコンビニがあったので、そこでサンドイッチやお菓子や飲み物を買って来ました」
「次の列車に乗ったらさっそく食べようと思います」
少年達はそれぞれレジ袋を持っている。二人共急いでいたのだろう、改札口からホームまで走ったため喉が乾いたようで、それぞれレジ袋から飲み物のペットボトルを取り出してごくごくと飲み始めた。
「一度にそんなに飲んだら飲み物が無くなってしまうわよ」
ヤンキーっぽい少年があまりにも勢いよく飲み物を飲むので心配して言った。
「大丈夫ですよ。このお茶が無くなっても、まだコーラとサイダーがあるんで」
「馬鹿か、コーラやサイダーを後に残すとぬるくなって不味くなるぞ」
飲み物を余分に買って用意が良い事をエリスにアピールしようとしたヤンキーっぽい少年に眼鏡の少年がツッコミを入れた。
「あ……」
ヤンキーっぽい少年がしまったという表情で絶句した。それを見た健太とエリス、それに眼鏡の少年は大笑いした。
「飲み物は駅のホームに自販機くらいあるはずだから、慌てて買い込む必要はないのにな」
眼鏡の少年が笑いながら言った。
「もしも、自販機が無かったらとか、自販機があっても故障していたり、買いたい物が売り切れてるかも知れないと考えたのよね?」
エリスが恥ずかしそうに頭を掻いているヤンキーっぽい少年をフォローした。
「そうなんですよ。買える時に買っておくべきだと思ったんです」
エリスにフォローされた少年はエリスの言葉に合わせた言い訳を考えついた。
そうこうするうちに、因美線智頭行き普通列車がホームに入線して来た。キハ120系という小さな気動車が1両のみである。
健太は列車に乗り込むと、素早く四人がけの席に飛び込み座る席を確保した。エリスも続いて健太の所に急いだ。健太はエリスに窓際を譲り自分は通路側に座るのはいつもの事である。
「ほら、こっちこっち」
エリスが少年達に自分の向かい側の席に座るように手招きした。
「あ、すみません」
「ありがとうございます」
二人の少年はお礼を言いながら健太とエリスの向かい側に着席した。今度は健太とエリスが進行方向に向かって座っていた。
車内の座席の大半が埋まったところで出発時刻となり、列車は津山駅を出発した。
津山駅を出発した列車は、しばらくして大きな川を渡る。この川は津山線の列車から見えた旭川ではなく、吉井川という別の川である。この川を渡ってすぐに東津山駅がある。
この列車最初の東津山駅までは姫新線であり、この東津山を出てから因美線に入る。東津山では僅かな乗降があったが、車内の乗客数には大した変動はなかった。
東津山を出発してからも、しばらくは住宅地を走っていたが、右側の車窓に大きなショッピングモールが見えて、その先は住宅が減り一面の田んぼという風景に変貌する。
田んぼの中に住宅がちらほら見えるという風景の中をしばらく走り、ちょっとした集落が見えてくると美作滝尾に到着する。
そこから先はさらに田んぼが目立つようになり、たまに集落があるとそこには駅がある。そして、徐々に両側の車窓に山が迫ってきて。山と山の間の谷間のわずかな平地に田んぼがあり、そこを線路が通っている。
車窓には山と田んぼという風景が続き、いよいよ山間部に入って来たという感じである。
たまに小さな集落が見えるが、真っ昼間だというのに人の姿は見えない。線路から見える道路に走っているクルマが、かろうじて人の生活感を醸し出していた。
やがて、列車は和知という駅に停車した。この駅の周辺には人家が少なく、少し離れた山の中腹に工場か倉庫らしき巨大な建物が見える。しかし、あの工場か倉庫で働く人が不便な列車を使って通勤しているとは思えない。
車窓の風景は相変わらず寂しいままなのだが、それでも那岐駅と土師駅の間にはそれなりの規模の集落があり、商店も見えてちょっとした町になっていた。しかし、那岐と土師という駅はこの集落の両端にあり、このあたりに住む人からすれば、どちらの駅を使うにしてもやや不便な気がする。
土師駅の先は再び山と山の間を走り、人家が少なくなり県境を越えて鳥取県に入ると終点の智頭へと到着した。
結局、津山で乗った乗客の多くは智頭まで乗り通しており、途中駅での乗降は少なかった。おそらく、智頭まで乗り通した乗客の多くは青春18きっぷの利用者であると健太は想像していた。
つまり、青春18きっぷの使用期間外にはこの列車の乗客は極めて少ないと思われる。
智頭駅で列車を降りた乗客達は、鳥取行きに乗り換える者、改札口を出る者、智頭急行に乗り換える者に分かれるが、半数以上の乗客は健太達と同じく鳥取行きに乗り換えるようで、津山から乗って来た列車が到着したのと同じホームの向かい側で鳥取行きの入線を待っていた。
すぐにホームに案内放送が流れ鳥取行きの列車が入線して来た。今度は2両編成なので、乗客達はゆったりと座れるはずである。
この鳥取行き普通列車の車両はJRの車両ではなく、智頭急行の車両を借用して運行しており、JRの路線でこの型式の気動車が見られるのはここだけである。
列車が入線すると、次々と客が乗り込んで行くが、2両編成のためホームで待機していた乗客全てを飲み込んでも、列車はまだ満腹には程遠く、健太とエリスが並んで座った向かい側には誰もやって来なかった。例の少年達も健太達と同じ車両に進行方向に向かって座れる席を確保したようである。
しばらくして、智頭駅12時56分発鳥取行き普通列車は定刻に智頭駅を出発した。
車内の座席は半分程度埋まっていたが、大半は青春18きっぷの利用者のようである。
健太とエリスは列車が動き出すと、岡山駅で購入した昼ごはんを食べ始めた。
二人ともかなりお腹が空いていたので、おにぎりやパンを食べて満腹になると、眠気に襲われて少しウトウトしてしまった。
車窓のは山間部の農村の風景が単調に続いており、日本中どこの田舎でも見られる風景である事も余計に眠気を誘う。
二人はウトウトしながら時間が過ぎてしまい、健太がふと我に帰った時には列車は鳥取の市街地を走っていた。
健太はまだ眠っているエリスを起こしたが、それでもエリスは眠そうである。
それから、すぐに列車が終点の鳥取駅に到着した。
鳥取駅では米子行きの快速列車に乗り換える。乗り換えの前に、一度改札口を出て入場券を買い再び改札口から中に戻る。時間の無駄のように思えるが、エリスが鳥取駅を訪問した証拠を残す必要があるのでしかたない。
そのため、健太とエリスは大急ぎで快速列車の乗り場へ急いだ。
2両編成の列車が既に入線しており、健太とエリスはすぐに乗り込んで何とか二人並んで席を確保出来た。
四国から来た少年達はトイレにでも行ってたのか、健太達よりも後からやって来たが、二人並んで座る事は出来ず離れて座る事になった。
やがて、出発時刻となり、列車は14時51分の定刻に出発した。快速列車とはいえ、倉吉の先の赤碕という駅あたりまではほぼ各駅に停車する。駅をどんどん通過するのは米子の手前くらいしかない。
列車はしばらくは鳥取市街地の高架上を走っているが、すぐに地上に下りて車窓には田んぼが見えてくる。鳥取市は県庁所在地とはいえ、小さな街なのだろう。
田んぼを造成して造られたと思われる住宅地があちこちに見える。列車は湖山、鳥取大学前と停まるのだが、これらの駅はそんな住宅地の中にあった。これらの駅で少し乗客が降りたので、車内は幾分空席が見えるようになってきた。
鳥取大学前駅を出ると、すぐに車窓から大きな池が見えるのだが、その池を過ぎたあたりから山が近付いて来る。小さな山が点在しており、山の際を走ったり山の周囲の田んぼね中を走り抜けながら駅があれば停車する。これを何度か繰り返す。
山といっても、高い山ではなく、山がポツンポツンと点在し、田んぼを海に見立てると島が点在しているようにも見える。街は見えないが、人家はあちこちに見えており、山深い風景ではなく普通の田園風景である。日本海のすぐ近くを走っているはずであるが、車窓からは日本海は見えなかった。
「ねぇ、健太。この後どこかで乗り換え時間に余裕がある駅はないの?」
車窓を流れる景色を見ていたエリスが突然健太の方を振り向いて尋ねた。
「松江で高速バスに乗り換える時には30分くらい時間があるけど、どうしたの?」
「何か軽い物でいいから食べたいわ」
エリスは因美線の車内で健太と一緒に昼ごはんを食べたはずである。
「列車内では落ち着いて食べられないわ」
エリスに言われて思い起こしてみると、確かによく食べるエリスが列車内で食事をする時はあまり食べない。
「30分あればうどんかそばなら食べられそうだな」
「えぇ、うどんやそばでもいいから食べたいわ」
エリスは先程食べたパンでは足りないので、とりあえず何かを食べたがった。
「エリスは列車内で何か食べるのは苦手なの?」
健太は列車内で食事をするのは普通の事だと思っていた。
「他の人達がみんな食べてるならいいけど、私達だけが食べてるのって、何か変に思えるのよ」
「そんなの気にしてたら、乗り鉄は出来ないよ」
「私は乗り鉄じゃないもの……」
エリスは健太の事については十分に理解しているが、それでも、どうやっても理解出来ない部分もある。
「やっぱり、エリスから見れば、列車で何か食べるのはお行儀が悪く見えるのかな?」
「健太には悪いけど、お行儀が良くは見えないわね」
エリスは正直に言った。
「まぁ、世間一般からはそう見えるかもね」
健太もそれくらいはわかっているが、少しでも先に進むためには食事の時間も惜しまなければならない。
(エリスは鉄ヲタじゃないからしかたないか)
健太はエリスの考え方が間違っているわけではないと理解していたので、自分の考えを押し付ける気はなかった。
「あっ、海」
エリスが車窓から海が見える事に気付いた。列車は青谷から泊あたりを走っている。山と田んぼの間から一瞬であるが日本海が見えた。しかし、すぐに山に邪魔されて見えなくなってしまった。
山陰本線は日本海沿いを走る路線だが、実際に海辺を走っている所はそれほど多くない。もっとも、これは他の路線にも言える事である。山陽本線から瀬戸内海が見える箇所が少ないし、東海道本線から太平洋が見える箇所も少ないのである。
健太とエリスが住む福山市も瀬戸内海に面した都市と思われているが、福山駅は海から10㎞くらい離れている。
列車が泊という駅を通過すると左にカーブして内陸へ向かう。そして、鳥取と米子のほぼ中間にある倉吉へと到着した。
倉吉は鳥取第三の都市だけあって、列車から降りる客も乗り込んで来る客も多かった。
倉吉駅の周辺は街らしく、住宅地や商店が目立つものの、すぐに田園風景に戻り一路米子を目指す。
ちなみに、倉吉の市街地が列車から一瞬しか見えないのは、市街地が南北に細長いので、そこを東西に横切る列車はそれこそあっという間に通り抜けてしまうのである。
倉吉まではほとんどの駅に停車して、名ばかりの快速列車だったのだが、倉吉から先は通過する駅が多く快速列車らしくなってきた。
車窓の風景は延々と田んぼばっかりである。住宅地も山も海も遠く、一面に広がった田んぼのど真ん中を列車は軽快に飛ばして行く。
健太とエリスが座ったのとは反対側の車窓からは大山が見えてくるはずだが、今日は薄曇りに霞んでその姿を見る事は出来なかった。
そのうちに、鳥取とも倉吉とも違う密集した市街地が見えるようになってきた。山陰地方最大の都市である米子の市街地である。市街地をしばらく走ると終点の米子に到着した。
米子での乗り継ぎはわずか2分、すぐ目の前に止まる列車に乗り換える。他の乗り継ぎ客より早く次の列車に乗って席を確保するために、健太とエリスは列車が停まるまえにドアの前に立っていた。
「今日はお世話になりました」
「本当に助かりました。ありがとうございました」
健太が因美線の車内で四国に帰る乗り継ぎをアドバイスした少年達が健太とエリスの所に来てお礼を言った。
「岡山では乗り継ぎが短いから急げよ。仮に乗り遅れたとしても、23時頃には志度に帰れるから大丈夫だけど」
「気を付けて帰るのよ」
健太とエリスが少年達に声を掛けたところで列車が停車しドアが開いた。
「それじゃ」
健太は少年達に一声掛けてから列車を降りて、すぐ目の前に停まる列車に向かった。
やはり2両編成の車内には、既に多くの乗客が乗り込んでいたため、健太とエリスは席に座らず立ったままで松江まで行く事にした。
手すりに捕まって立つ健太にエリスが抱き着くといういつものスタイルで松江までの時間を過ごした。
米子から松江まではおよそ30分である。このくらいの時間なら立っていても苦痛ではない。
2両編成という短い編成のため、健太とエリス同様に鳥取発の列車から乗り継いで来た客が乗車すると空席はほとんど無く、立っている客も数人見える。
米子の次の安来駅で少し下車する乗客がいたものの、それなりに混雑したまま健太とエリスが降りる松江に到着した。
松江からは高速バスに乗り継ぐのだが、乗り継ぎ時間は30分くらいである。当初の予定では、駅を訪問した証明となる入場券を購入した後は休憩する予定だったのだが、エリスが食事をしたいと言い出したので、健太はエリスの手を引いて大急ぎで改札口を出て券売機に向かい、入場券を購入してから食堂を探した。
少し構内を歩くと喫茶店が見えたので入る事にした。喫茶店なので軽食も提供してくれる。エリスはメニューに大好物のカレーライスがあったので迷わず注文した。健太は因美線の車内で結構な数のおにぎりを食べたためお腹が空いていない。そのため、アイスコーヒーを注文した。
時間があまりないため、のんびりしていられないが、エリスは大好物のカレーライスをバクバク食べて、あっという間に平らげてしまった。
高速バスの発車時刻が近いので、すぐにバス乗り場に行き、案内図を見てどの乗り場から岡山行きが出るのか調べていると、岡山行きの表示のあるバスが乗り場に入って来た。
健太とエリスはそのバスが停車した乗り場に走った。乗り場に行くと、乗車する乗客が列を作っていたのでその列の後ろに並ぶ。列には10人以上並んでいたが、健太は席を予約してあるので席の確保に不安はない。
「お名前は?」
健太の番が来ると運転手が予約名簿と照合するために健太に名前を尋ねた。
「中野です」
「中野様……中野健太様、お二人分予約されてますね。席は3番のAとBです」
健太とエリスは指定された3番のAとB席に座った。こういう時はエリスが窓側で健太が通路側に座るのだが、今回に限っては道中エリスがトイレに行きたくなりそうだから、自分が通路側に座ると言うので健太が窓側になった。
車内の大半の席が埋まっており、この後米子にも立ち寄る事を考えると、最終的には満席になると健太は思った。
高速バスは席は狭いが乗り心地が良く、列車に比べ車内では静かにしている乗客が多い、しかも、エリスは食後とあってバスに乗るとすぐにウトウトし始めた。
高速バスでは車窓の景色を眺めるより、眠る乗客の方が多いので、健太もエリスに倣い眠る事にした。
途中のサービスエリアで休憩があったはずだが、健太は眠っていて気付かなかったし、トイレを心配していたエリスも眠っているうちに岡山に着いてしまった。
「ここからまだ福山まで帰らなきゃならんのか」
健太がため息を吐きながら言う。エリスも列車やバスに乗りっぱなしだったため、余程疲れたのかグッタリしている。
岡山から再び青春18きっぷを使い福山へ戻り、福山から福塩線で自宅に最寄りの備後本庄駅に着いたのは21時近くになっていた。
次回は中間報告のために一時天上界に戻る話です
お楽しみに




