処女童貞カップルの初エッチが気持ちいいわけないでしょ〜中部地方縦断の旅二日目・前編〜
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今回は少し短い話になります
長野市内のとあるホテルの一室。
就寝中のエリスは重苦しさに耐えられず目を覚ました。目を開けたエリスは一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
(あ、そっか。長野のホテルだったわね)
エリスは昨夜の出来事を思い起こしていた。さぁ、これから自らの裸で健太を誘惑するぞと一大決心をしてバスルームから出たは良いが、健太はアルコールが回っていたため、ダブルベッドのど真ん中で大の字になって大いびきをかいていたのである。
すっかりテンションが下がってしまったエリスは、残っていたワインをやけ酒として飲んでから、みじめな気分でダブルベッドの隅っこに猫のように丸くなって眠ったのである。
目を覚ましたエリスが感じた重苦しさは、健太がエリスに覆い被さっていて、エリスの乳房を枕にして眠っていたからである。
エリスが地上界に来て、健太のアパートに転がり込んだ直後、まだエリス用の折り畳みベッドを購入前のわずかな期間であるが同じ布団で寝た事がある。
眠り始めはちゃんと横に二人並んで眠っていたのに、朝には健太がエリスに抱きついていて、手でエリスの乳房をしっかりと掴んでいたり、胸の谷間に顔を埋めていたりしていたのをエリスは思い出していた。
どうやら、健太は抱き枕を必要とするタイプなのだろう。
無意識のうちにはこんなに大胆なのに、日常ではむっつりスケベなのだから始末が悪い。
ベッドの上で目を覚ましたエリスは健太の体重に耐えていたが、何とも複雑な気持ちだった。
「健太、ホントは起きてるんでしょ? 眠ったフリなんてやめて、堂々と私の体を触りなさいよ」
エリスは眠っている健太を起こさないように小さな声でささやいた。
「ゲッ! バレてたのか?」
突然、健太が目を開けてエリスから体を離した。
エリスは何が何だかわからずポカーンとしていた。寝起きのうえに昨夜のお酒がまだ残っているのか、頭がボーッとしていて冷静に物事を考える事が出来ない。
「起きてたの? だったら、続きをしましょうよ」
エリスは目を覚ましたとはいえ、半分起きて半分眠っているような状態である。普段のエリスなら恥ずかしくて絶対に言えないような事を堂々と言ってしまった。
エリスはスウェットの上を脱ぎノーブラの乳房を露にしてから下も脱いでショーツ一枚の姿になった。
健太も何が何だかわからず混乱していた。
「健太も服を脱いじゃいましょ」
エリスは健太の服……といってもトランクスと肌着だけであるが、エリスは手際よく脱がせてしまう。そして、エリス自身もまだ履いていたショーツを脱いでしまった。
「さて、私もずっと我慢してきたのだから、もうそろそろ楽しませてくれるわよね。これから、何をするのかわかってるでしょ?」
エリスは起きてはいたが、半分は夢の中にいるようなものである。自制心を失っているため大胆になっていた。
「わかるけどさ、この状態でやっちゃマズいんじゃない?」
健太の方が少しは冷静のようだ。当然、健太も妄想の中でしかありえないシチュエーションが現実となり、内心はパニック状態だが、変な態度を見せるとチャンスを失うような気がして冷静を装っていた。それでも、少なくともエリスよりは物事をちゃんと考えられる状態だった。
「どういう事」
エリスがクリッとした青い瞳で健太を改めて見つめながら首をかしげた。
「いや、だからさ……わからない?」
健太も緊張しているため、しどろもどろである。普段のエリスなら、頭の回転が速いので健太の言いたい事は察してくれるのだろうが、夢と現実が半々のような状態のエリスには健太の言いたい事を察する事は出来ない。
「…………」
エリスは健太が何を言いたいのかわからない。相変わらずクリッとした碧眼で健太を見つめながら首をかしげている。
(うわっ、可愛い!)
健太は襲いかかりたい欲望を必死に抑え込んだ。
「だから……その……用意してないよ」
「え?」
「避妊、しなくていいの?」
エリスはここで正気に返ってしまった。
「えっ? あっ……えぇと、その……」
エリスは自分のしている事に気付いて赤面どころでなく、全身の肌が赤くなるのを感じていた。しかし、この期に及んで後戻りは出来ない。
「用意してないから、マズいだろ?」
健太が改めて言った。エリスはゴクリと唾を飲み込み決心を固めて立ち上がった。あれだけ健太に見せたかった自分の体を実際に健太の前に晒すと妙に恥ずかしい。しかし、素知らぬフリでリュックサックを開く。
エリスはリュックサックから紫色の小箱を取り出して健太に渡す。正気に返っているので、恥ずかしさで顔から火が出るような気分だったが、もう後には退けない、なるようになれと開き直るしかなかった。
「エリス……」
渡された小箱がコンドームの箱である事くらいは健太にもわかった。わざわざエリスがこれを準備していた理由も察する事が出来る。
「……わかったよ」
健太も過去にこのような場面に遭遇した事はないので、どのように振る舞えば良いかは知らないが、ここで自分が尻込みすればエリスに恥をかかせる事になる。健太としても覚悟を決めなければならないようだ。
健太はエリスの手を取りベッドへと寝かせた。そして、エリスの体へ自らの唇を這わせて行った……
……数十分後。
事を終えた二人は、余韻を楽しむかのようにベッドの上で抱き合って互いの舌を絡ませ合っていた。
(噂には聞いていたけど、こんなに痛いとは思わなかったわ)
エリスは初めての時にはつきものの痛みに襲われたが、痛がれば健太がそこでやめてしまうと思い、悟られぬように努めていた。
健太が慣れていたのなら、初めての女の子を相手にする時は優しく慎重に行うに違いない。しかし、健太も初めてでそこまで考えが及ばないうえに、童貞歴の長い者ほど、AVで間違った知識を身に付けていて、自分がAV男優にでもなったつもりになるのだから余計にタチが悪い。
(なかなか出なくてどうしようかと思った)
健太はというと、自分が下手すぎてなかなか出せずにこのまま試合終了になるのではとヒヤヒヤしていたのだが、どうにか無事に終了させる事が出来てホッとしていた。
二人の考えている事は全然違ったが、共通の認識もあった。
((聞いてたのとは違い、全然気持ちよくなかった))
こればっかりは、二人で経験を積んで解決しかないだろう。
「今、何時かしら?」
ベッドの上で裸で抱き合ったままだが、エリスはふと時間が気になった。窓を見ると、カーテンのすき間もまだ暗い。
「4時45分だよ」
健太がベッドの脇のテーブルの上に置かれていたスマホを取って時刻を確かめた。6時半に起きる予定だったので、二度寝するか起きているか迷う。
「どうする?」
健太がエリスに訊いた。
「今から寝ても、すぐに起きなければならないし、起きてた方がいいかも」
エリスは二度寝してすぐに起きるのはかえって辛いと思った。
「汗や健太の唾液やらで体がベタベタしてるから、シャワーを浴びてサッパリしたいわ」
エリスはシャワーを浴びたいようである。
「俺もシャワー浴びて目を覚まそうかなぁ」
健太も二度寝よりシャワーを浴びて目を覚まそうと考えた。
健太はベッドの頭の上の部分にある、電気のスイッチを入れて常夜灯から蛍光灯に変えた。
部屋が明るくなって、裸の二人を蛍光灯が照らす。二人共この時になって、互いに裸だったと思い出した。しかし、互いに自分の一番恥ずかしい姿を見せ合った後だけに、たかが裸を見られるくらいは何ともなくなっていた。
エリスはベッドから立ち上がり、バスルームへと向かって行ったが、バスルームの入口前でクルッと健太の方に向き直った。
そして、スタスタと健太の所に歩いて戻ると、にこりと笑顔を見せてから健太の手を取り、再びバスルームの入口へと向かった。
手を取られた健太も笑顔でうなずいてから、エリスと共にバスルームに消えて行く。まだまだ二人の時間は終わらないようである。
狭いユニットバスで、ピッタリとくっついてシャワーを浴びた健太とエリスは、バスルームから出るとバスタオルで体を拭いてから服を着た。このまま起きているつもりなので、健太はちゃんとズボンを履き、エリスはピンクのブラウスに白のスカートという外出用の服装である。
健太もエリスも服を着るとすっかり興奮が覚めてしまい、ほんの数分前までの燃え上がるような精神の高揚を改めて思い出してしまい、どうにも気まずい空気が部屋の中に立ち込めてしまった。
健太とエリスは同棲してはいるものの、本心は別にして、これまで互いに「好きだ」と言った事すらない二人である。順番をすっ飛ばし、いきなり行き着く所まで行ってしまったので、少し逆戻りする必要があるようだ。
「あ、あの、健太?」
「えっ……何?」
どうしても、やり取りがぎこちなくなってしまう。エリスは声をかけたものの、何を言うべきかわからない。気まずい雰囲気になってしまったのを何とかしたいのだが、言葉が出て来ないのである。
エリスは気分が落ち着いた状態では、互いの距離が近付いていないのは耐えられない。天上界では超エリートだった優秀な頭脳をフル回転させて、何とか言うべき言葉が見つかった。
「ねぇ、健太……ありがとう。勇気を出してくれて」
エリスが真剣な眼差しで言った。
「勇気?」
健太はエリスが何の事を言っているのかわからなかった。
「私がコンドームを渡した後よ。あそこで、健太が『ちょっと待って』とか言ったら、私はどうすればいいのかわからなくなってたわね」
エリスは言ってから静かに椅子に腰掛けた。健太は立ったままエリスを見つめていた。
「あの時はどうしようか迷ったよ。でも、あそこで一歩退いたら、エリスが勇気を出してコンドームを渡してくれたのに、その勇気を踏みにじると思ったから、俺は一歩を踏み出す事が出来た。エリスが先に勇気を出してくれたおかげだよ。こちらこそ、ありがとう」
健太はエリスを優しく見つめながら言った。
「エリス、順序が逆になったけど、改めて言わせてくれる?」
健太はエリスに一歩近付いて言った。エリスは座ったばかりの椅子から立ち上がった。エリスは本能的にここは重要な場面であると悟っていた。
「何かしら?」
エリスは言ってから唾をゴクリと飲み込んだ。何を言われるかはだいたい想像がつくし、察する事も出来る。しかし、言葉としてはっきり言われる事は大切である。エリスにとって、健太と同棲するようになってから、ずっと妄想していた事が現実になる瞬間である。
「エリス、好きだよ。愛してる……これだけは、きちんと言葉にして言っときたかった。これからも、よろしくお願いします」
「私こそ、よろしくお願いします」
エリスは目に涙を浮かべながら健太の首に手を回して抱き締めてキスをした。エリスにとって、女としての幸せを始めて噛み締める瞬間であった。
「言いたい事を言ったらお腹空いてきちゃったよ」
健太はいつまでもイチャイチャしてしまいそうなので、一度けじめを付けるために話題を変えた。
「そうね。私もお腹が空いてるのに気付いちゃった。ホテルの朝食は6時からよね? あと30分もあるわ」
エリスがため息を吐きながら言った。
ホテルの朝食が始まるまでの間、二人でお喋りをした。これまでは互いに遠慮があって、出来るだけ当たり障りのないように注意しながら会話していたのだが、これからはようやく本音で会話出来る。少し話しただけなのに、健太もエリスもまるで初対面かのように、相手の話に興味津々となっていた。
やがて6時になり、朝食を食べるために、健太とエリスは手を取り合って部屋を出て行った。
次回は長野から甲府、静岡を目指す旅の話となります
お楽しみに




