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日本人はブロンド美少女をナンパしようとしてはいけません

ご覧いただきありがとうございます。

今回は短めの話です。

6月下旬のとある平日、エリスは一人で岡山に来ていた。


この日は早朝に健太が仕事に行ったため、エリスも当然早起きする。健太の出勤後に家事を済ませ、晩ごはんの買い物も朝一番に済ませてしまい、エリスは退屈していた。


午前中から暇を持て余していたエリスは、ショッピングと映画で時間を潰そうと思い、まずはスマホでどんな映画が上映されているか調べてみた。


調べているうちに、観てみたい映画が見つかり、どこの映画館で上映されているのかを調べた。調べたところ、福山市内の映画館では上映されておらず、福山市から一番近くで上映されているのは岡山市にある映画館だった。


エリスは最近ではスマホを使いこなし、いろいろな情報を仕入れたり、通販で買い物をしたり、ゲームを楽しむなどしていた。


エリスは観たい映画の上映時刻を調べてみると、今から岡山に向かっても余裕を持って間に合いそうだ。


エリスは部屋着のジャージから、お出掛け用のピンクのブラウスと白のフレアスカートに着替えでアパートを出た。


歩いて備後本庄駅に向かい、駅で岡山までの切符を買い福山行きの列車に乗った。福山駅で岡山行きの山陽本線の列車に乗り換えて一時間ほどで岡山駅に到着した。


映画の上映時刻まではまだ一時間以上ある。ちょうどお昼過ぎでお腹が空いていたエリスは映画の前に昼ごはんを食べる事にした。


エリスは岡山駅の地下街を歩きながら何を食べようか思案していた。いろんなレストランやカフェなどを見て回るうちに、一軒のカレー屋を見つけた。エリスはカレーライスが大好物である。家で健太と一緒に食べる食事はカレーライスを頻繁に食べるわけにもいかないが、一人の時にはカレーライスを食べる事が多い。


天上界ではコメが貴重品で高価なので、カレーライスはなかなか食べられない。地上界、それも日本においてはカレー専門店だけでなく、ファミレスや喫茶店、果てはうどん屋や蕎麦屋でもカレーライスを扱っているので、エリスにとっては夢のような世界である。


今回エリスが見つけたカレー屋はなかなか本格的なカレーを提供してくれそうな店で、エリスは元々膨らみのある胸を期待で更に膨らませて店に入った。


エリスはメニューを見ながら何を食べようか迷っていたが、チキンカレーを頼む事にした。


しばらく待って運ばれて来たチキンカレーを一口食べてみた。


(これは美味しいわ!)


チェーン店やファミレスのカレーとは違い、一つのカレーに辛味がいくつもあり、それを同時に舌で感じる事により絶妙なハーモニーを奏でている。これは素人が真似しようとすると、辛味がバラバラになって、それが勝手に自己主張して舌の上が混乱してしまうのである。


エリスは美味しいカレーを充分に堪能した。1080円が安く感じるカレーライスを食べて満足感に浸りながら店を出た。


昼ごはんを食べ終わったエリスは映画館に向かう事にした。今回映画を観る映画館は、以前に健太と映画を観た地下街を歩いて行ける映画館ではなく、岡山駅から離れた場所にあり、ネットで調べてみると路面電車で行くのが便利らしい。


そこで、エリスは路面電車の乗り場を探す事にした。


エリスは地下街を歩いて岡山駅の地下改札口あたりに戻って来た。あたりを見回すと『路面電車』と書かれた表示があり、その表示に従って歩いて行くと地上に出る階段があり、階段を上がった所が路面電車の乗り場だった。


エリスは路面電車に乗り、ネットで調べた通りに『城下』という電停で降りた。なお、『城下』は『じょうか』ではなく『しろした』と読む。


エリスは電停でスマホを出して地図を調べてみた。映画館は電停のある場所のすぐ近くにあるとわかったのでその方角に歩いてみた。


地図か示す場所には二階建ての鉄筋コンクリートの建物があり、一見すると映画館には見えなかったのだが、建物の前に行ってみると上映中の作品のポスター等が貼ってあり映画館だとわかる。


エリスは早速建物へ入ってみた。入ってすぐに狭いロビーがあり、ホテルのようなカウンターでチケットを売っているようだ。エリスはカウンターに行き、係りの人に観たい作品名を告げて1800円払いチケットを購入した。


上映開始までは30分程あったので、エリスは狭いロビーで大勢の客の間に立って待つしかなかった。


やがて、上映開始となり、二階シアターで上映とのアナウンスに案内されて客は階段で二階に上がった。


二階に上がるとそこは小さな応接間のようになっており、その応接間のようなスペースの向こう側にシアターへの入り口がある。


この映画館では、チケットを先に購入した人からシアターに入場するようになっており、シアター内は自由席である。


エリスは自分のチケットを確認した。チケットには入場番号というのがあって、それによるとエリスは6番となっていた。つまり、エリスは6番目に入場出来るという事である。


チケットを売っていた係員がやって来て、シアターの入り口に立ち入場番号を1番から読み上げる。客はそれに従い入場する。エリスは6番目にシアターへ入場した。


シアター内は横並びに15席くらいあるが、それが5列しかない。前の方はスクリーンに近すぎるので後ろの列から客は座って行く。


エリスも最後列に座りたかったが、見えやすい真ん中付近は既に埋まっていたので、後ろから2列目の真ん中あたりに座る事にした。


エリスの後にも客は入場して来て、合計で20人くらいが入場した。エリスの両隣は空席だったが、左右一席おいてその向こうには客が座っていた。


入場が終わる頃には場内が暗くなり、今後上映される作品の予告編に続き本編が始まった。


上映時間は90分、ネットで調べてどうしても観たかった作品だけに、充分に楽しむ事が出来た。


映画が終わり映画館を出たエリスはスマホで時刻を調べたところ、まだ15時過ぎだった。今日は18時頃に帰ればよいので、このまま福山に帰っても少し時間が余る。


エリスはどうしようか思案したが、映画館の前の大通りの反対側は店が立ち並んでおり、散歩がてら店を見て回り時間を潰すのも悪くないと考えた。


エリスは大通りを渡り商店街へ入って行った。特に買いたい物は無かったが、若者向けのファッションを扱う店もあり、散策するには退屈しなかった。


一時間程度ブラブラしてから、路面電車に乗り岡山駅へ帰ろうと思い、電停のある大通りに出るために商店街から狭い路地に入った。


エリスは人通りの少ない狭い路地を大通りに向けて歩いて行く、反対側から若者の男二人が歩いて来たので、エリスは端に寄って若者達に道を譲ろうとした。


「あのー、お姉さん今独り?」


すれ違いざまに若者の一人がエリスに声をかけた。


エリスに声をかけた二人は、いずれもエリスと同年代か少し年上といった感じで、共に背の高いひょろりとした体格である。髪を茶髪に染めて、耳にピアスを付けた見るからにチャラチャラした男である。


エリスは興味がないので無視して通り過ぎようとしたが、二人の男はエリスの前に立ちはだかった。


「ねぇねぇ、お姉さん、無視しなくてもいいじゃん」


「てか、日本語通じてるのか?」


「あっ、そうか。じゃ……じゃあ、グッドモーニング」


「それ、おはようだよ」


「じゃあ何て言えばいいんだよ」


「普通にハローでいいだろ」


「ハ、ハロー……ええと、マイネームイズ……」


(何なのこいつら……これじゃ、若者じゃなくて馬鹿者ね)


二人の若者の馬鹿馬鹿しい掛け合いを内心あくびしながら見ていたエリスだが、早く路面電車に乗りたいので、二人を退散させようと考えた。


「日本語わかりますから」


エリスが言うと、二人の若者は流暢な日本語に驚いた表情を見せた。


「日本語わかるの? 独りならこれから一緒に遊びたいなぁ〜と思って」


若者の一人がエリスに言った。


「私、もう帰るところだから」


エリスは二人を置いて立ち去ろうとした。


「あっ、ちょっと待って、お茶だけでも。おい、お前も引き止めろ」


最初に声をかけた方の若者が言うと、さっきまでその若者に突っ込みを入れていた方の若者がエリスの手を引っ張って引き止めようとした。


(めんどくさい馬鹿野郎だわ)


エリスは帰りたいのを邪魔されてイライラしていたところを手を引っ張られたので腹が立ってしまった。


「〇☆△★□◇」


エリスは日本人の若者二人が聞いた事もない言語で呟くと、手を引っ張っていた方の若者に素早く近付くと突然ノーモーションで左ストレートを顔面に叩き込んだ。


「ふぎゃーっ」


「お、おい大丈夫かよ」


顔面を押さえてうずくまった若者にもう一人が駆け寄った。エリスは駆け寄った方の若者に無言で近付いて行った。


「い、いえ。何でもないです。し……失礼しましたぁ〜」


駆け寄った方の若者はもう一人の手を引っ張って一目散に逃走してしまった。


エリスは逃げて行く二人を睨みつけていたが、路地を抜けて商店街に消えて行ったのを確認してきびすを返し電停へと歩き出した。


ちなみに、エリスがなぜ喧嘩が強いかというと、天上界の人間は地上界の人間よりはるかに強い。天上界の人間の筋力は地上界の人間とは比べ物にならないほど強いのである。また、動体視力も天上界の人間の方がはるかに優れている。


簡単に言えば、天上界の一般人が地上界に来れば簡単にボクシングの世界チャンピオンになれるレベルである。


しかも、エリスは天上界において、地上界で言う天使候補生である。実態は諜報員とも特殊工作員とも言えるので、当然戦闘訓練も受けている。徒手格闘術の訓練も受けているエリスに地上界の人間がかなうはずがないのである。


エリスはつまらない事で時間を費やしてしまったので、急いで電停に向かい、やって来た路面電車に乗り込んだ。


(ちょっと、手荒な事をしたけどしかたないわね。でも、もう少し暴れたかったわ。スカッとするくらい暴れられるような強い相手は地上界にはいないでしょうけど)


エリスは物騒な事を考えていた。健太の前では甘えん坊な面も見せるエリスであるが、特殊工作員になろうとするほどの人間である。大人しいだけの女ではないのである。


(さぁ、落ち着いて。モードを切り替えなきゃ)


エリスはひと暴れして少々興奮気味だったが、すぐに落ち着きを取り戻し普段の可愛いエリスへと戻り、岡山駅から電車に乗り福山に帰って行った。


「やっぱり、日本人が外国人をナンパするもんじゃないな」


「外国はどこも治安が悪いから、みんな喧嘩が強いんだろう」


その頃、ナンパ男二人組はエリスの強さに驚愕しつつ、うっかりナンパしようとした事を後悔していた。エリスを外国人と勘違いしていたが、まさか異世界人だとは思うはずもなく、これはしかたない事だろう。


日本に外国人はたくさんいるが、異世界人はそんなにいないと思われる。万に一よりも低い確率を引き当ててしまったこの二人はあまりにも不運だったと言えよう。

次回は健太とエリスの中部地方の旅のお話です。

お楽しみに

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