《閉幕》
幕が降りて行きます。
兵舎。
『ロッドライズ』ううむ……、また逃がす様な結果になってしまったか……。この汚名、何時か返上せん!
『リレイド』仕方ないですよ。誰だって、あの犯人達を捕らえるのは難しいでしょうし……。それに、夜の森に人を出して、被害者ゼロで調査を終える隊長に、汚名なんて付いてませんよ。
『ロッドライズ』否。私は姫様から任を託された者。そんな慰めは無用だ。何か、有効な策を練らんとなあ……。
『リレイド』まあまあ……。兎に角今は、姫様の無事を祝いましょう……。後遺症も、何も無いみたいですし。……一週間安静、と言う指示に、姫様自身はご不満の様ですが…………。
『ロッドライズ』その間は周りの人間が職務を代行するそうだ。それはそれでまた面倒な誓約書が増えそうだがな。
『リレイド』何時も姫様は忙しくしておりましたし、休暇の意味合いが少しくらい有っても良いんじゃないですかね。
『ロッドライズ』うむ……。……と言うかお前、姫様の無事、以外に何か良い事でも有ったのか? 小躍りでもしそうな様子だが……。
『リレイド』え? いえいえ、そんな事無いですよ。気のせいじゃないですか?
『ロッドライズ』そうか? そうか……。
『リレイド』そうですよ、きっと……ふふふ。
場面転換。寝室。
『リト』暇。
『ラム』訓練の合間を縫うようにしてお見舞いに来てあげたのに。
『リト』それは勿論嬉しいわよ。でも暇。
『ラム』そう言われても。
『リト』ラム、あの極悪犯とっ捕まえてきてよ。
『ラム』僕だって、出来るのならそうしたいよ。もう、いろんな人がいろんな所で頑張ってるから。今は自分の身の心配だけしてて、お姫様。
『リト』もう完治したわよ。何度言ったら分かってくれるの。
『ラム』ゲニスさんの言いつけだから。
『リト』そう、ゲニスさん! あの人絶対何か隠してる。あの時は精神ぼろぼろで分かんなかったけど、今思えば明白よ。自信が有るわ。ラムも気付いてるでしょ。
『ラム』うん……まあ、超能力持ってる人に、隠し事は付き物だからね。何か有るんだよ、言えない事が。
『リト』超能力ねえ……治癒、だっけ? ゲニスさん……ますます、何者よ……。……シニカロレイヴさんは隠し事が有るって言うより、あの人自身が謎めき過ぎている感が強いけれど。
『ラム』はは……それこそ、いろんな人が居るんだよ。世の中には……。だから……争いは起きるんだ。
『リト』あー、嫌、嫌。聞きたくない聞きたくない。いざこざで死にかけた今の私にその話題はダメ。もっと別のお話をー。
『ラム』えーと、じゃあ、リレイドとココさんのお話を。
『リト』そう、それ! 待ってた! あの後何の音沙汰も無くって、それはそれはもう、心配で心配で。
『ラム』それがね……あの二人、この前さ……。
場面転換。地下室。
『ライブド』おっさんにしては珍しいじゃん。朝まで呑んでたなんて。私達の早起きよりも珍しいじゃん。どうした、嫌な事でも有ったか。やけ酒なのか。
『レドラム』無い。そんな事は無い。俺は何時も通りだよ。
『ミーグ』……嘘だ……。嘘吐いてる……おじさん……。何か有ったんだね……僕達が相談に乗ってあげよう……。
『レドラム』無いと言っているだろう……。第一、貴様等と相談話をしても、何も得るものが無いだろうしな。
『ライブド』おっさん、お酒好きなの?
『レドラム』あ? いや……好きではないが……。まあ……昨日の酒は……格別だったよ。
『ライブド』何だそれ。余計に気になる言い方しやがって。
『ミーグ』ねえ、教えてよ。嫌な事じゃないにしても、何か有ったんでしょ? ねえったら。
『レドラム』しつこい。だから無いと……。そうだ、まだ言ってなかったな。貴様等の女王暗殺計画、失敗に終わってるぞ。
『ライブド』……は⁉
『ミーグ』え。
『レドラム』ははっ……どうやら向こうには、良い医者が……居たみたいだな……、はははっ……。
場面転換。海風の当たる船上。
『ゲニス』……科学、魔法、不老不死、……超能力……、そして、身分と言う果てしない壁を越えた関係……、ふっ……改めて……感じたよ……、この世界は……なんと面白い事か……何時まで経っても、私を飽きさせない……いくら冒険をしても、次から次へと宝の地図が見つかってしまうな…………それに比べ、人の考えのなんと狭苦しい事か……、全ての問いに対する答えが、イエスとノーの二択ではない事実を知っている者の、なんと少ない事か…………争いは、無知から始まると言うのに……不十分な理解から始まる……と言うのに…………だからこそ、知る事は重要なのだ……探究する事の価値が、そこには……確かに有るのだ……。
閉幕。
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