【地下】とある一室・四
『ゲニス』ニューロッジ島で診療所を営む所長。
『レドラム』地下に棲む老者。
酉の刻。ゲニス、レドラム、地下の、とある一室にて。
『ゲニス』私がゼフィオンに着いた時点で、あの女王は既にかなり消耗していた…………魘されていたよ……おそらく、恐ろしい夢でも……見ていたのだろうな……。
『レドラム』どんなに凶悪な害を身体に与えても、あの者等は時間は掛かれど必ず回復する。それならばと……私は考えた。精神に害を与えれば良いとな……。錯乱させるのだよ……。
『ゲニス』ああ……実際女王は、後もう少しで終わる程に追い詰められていた……、普通人だったら、あそこまで耐える事も出来なかっただろう…………毒を受けた直後に……窓から飛び降りていたとしても……何も不思議な事は無いだろうな…………。
『レドラム』心の削られた者が辿る道……その先は自殺、って寸法だよ。……なあ、ゲニスよ……不死身の人間が死にうる唯一の要因、何だか分かるか。
『ゲニス』餓死だ、馬鹿にしてくれるなよ。
『レドラム』ははは、それは失礼。うむ、その通りだ。エネルギー不足による活動停止。絶対的な治癒力も、エネルギーが無ければ働かない。あの毒は、最終的にはそれを目的としたものだ。
『ゲニス』ほう……だが……、それはあくまでも活動停止であって、死、ではない……たとえ女王が自殺を選び、絶食をし、そして骨だけになっても……ふざけた話、女王を構成していた原子にエネルギーを与えてしまえば、それでまた元通りさ……、彼らは、本当の意味で、死ぬ事は出来ないのだろう……そういう法則なのだ……、まさか、お前がこの程度の推測を出来なかった訳はあるまい?
『レドラム』まあ、今回はアイツ等を満足させる程度の試みだったしな。俺も、そんなにうまくいくとは、端から思ってなかったよ……。まあ、お前の登場は……完全に予想外だったがな…………。
『ゲニス』……アイツ等?
『レドラム』んあ? ……ああ、まだ言ってなかったか……ここに居候してる、とある二人組が居るのだ……。俺は、毒を調合はしたが、盛ってはいない。その二人に与えただけだ。直接手を下したのは、実はソイツ等なんだよ。
『ゲニス』……ほう……何者だ? お前と一緒に、ここに住んでいる、と言う事だよな?
『レドラム』ちょっと訳有りな奴等だよ。……お前が気にする事では……ないさ…………。




