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聖戦に舞う不死鳥たち  作者: 戯画葉異図
第二幕 探究し、知る。
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【王城】兵舎の入り口・一

『リレイド』ゼフィオン国に仕える遊撃隊兵。

『ゲニス』ニューロッジ島で診療所を営む所長。

   申の刻。リレイド、ゲニス、王城の、兵舎の入り口にて。


『リレイド』……なぜ……わかったのですか……。

『ゲニス』おかしなことではないさ……ゼフィオンに来る途中、遣いの兵に……あー、確か名前は、ラムとか言ってたかな……、ラム殿にこう尋ねたのだ……医者としての私の評判を、一体誰から聞いたのか、と……するとこんな答えが返ってきた……兵の一人から聞きました……、それで私は、兵士ならばいつか必ず、ここを通るだろうと踏んだのさ、ここで待てばお前に会えると思ったのさ……長いこと探していたお前にな……、そんな次第だよ……。

『リレイド』……ずっと待っていたのですか。

『ゲニス』ああ、ずっと待っていたさ。

『リレイド』早く帰ってしまえばいいものを……大勢の方が、あなたの帰りを心待ちにしているでしょうに。

『ゲニス』はっ、大勢の方にはもう暫く待ってもらうことにするよ……、お前に会うためだ……仕方がない……。

『リレイド』……私は……あなたになんか会いたくなかった……。あの時、母さんを殺したあなたになんか。

『ゲニス』そうだ、私はお前の母さんを殺した……今も昔もこれからも、釈明はできない……、それでも、私はお前に会いたかった……、女王の治療なんて二の次さ……お前に会うために、私はゼフィオンに来たのだよ……。

『リレイド』な……何を言う! 姫様が二の次? 口を慎め、この藪医者がっ!


   リレイド、剣を抜き、ゲニスに襲い掛かる――ゲニス、その攻撃を素手で受け止める――流血。


『リレイド』……! ご、ごめ……。

『ゲニス』いや、いいんだ……これくらい……どうということでもない。


   ゲニス、傷付いた手に、もう一方の手を宛てがう――傷が跡形もなく消える。


『リレイド』…………。

『ゲニス』この能力は……もう、使うこともないだろうと思っていたのだがな……。

『リレイド』……え……?

『ゲニス』あれ以来、医者としての活動は、もう止めたんだ……それらしい活動といえば、薬の調合くらいだよ……ズルなしで、正面から患者と向き合おうと決めたのさ……、今ではもうほとんど、研究者として、日々を過ごしているよ……。

『リレイド』…………。

『ゲニス』……この能力を……この能力を、あの時だけは……、どうしてか使えなかった……、最初で最後の……お前の母さんが戦場で瀕死の状態に陥った、あの時だけは………………、なぜ使えなくなったのか……今でもその理由はわからない……見当も付かない……、理解できないのだ……、……あんなに……愛していたのにな……。

『リレイド』今更、そんなこと言ったって。

『ゲニス』ああ、遅いさ……死んでしまったものは死んでしまった……もう、どうにもならないのだ……言ったろ……釈明はできない……たとえできても、もう、何にもならない……。

『リレイド』なら……なぜ、私に会いたかったの……。

『ゲニス』さあな、なぜだろうなあ……、自分でもわからないさ……お前に会って、それで、何かが変わるとでも思ったのかもな……。

『リレイド』……なら、変えようよ……。

『ゲニス』……変える……、何をだ……?


   間。風の音。


『リレイド』仲直りしよう、父さん……。親子喧嘩は……今日で終わりだ……。私、できの悪い娘だったよね……ごめんなさい……。

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