【王城】女王の寝室・十一
『ラム』ゼフィオン国防衛隊を指揮する不老不死の隊長。
『リト』ゼフィオン国を治める不老不死の女王。
『マディ』王城に仕えるメード。
『ゲニス』ニューロッジ島で診療所を営む所長。
午の刻。ラム、リト、マディ、ゲニス、王城の、女王の寝室にて。
『リト』ラム……。
『ラム』おはよう、リト。
『リト』マディも……。
『マディ』おはようございます、姫様。
『リト』わ、私……私……。
『ラム』大丈夫、大丈夫だよ。
『リト』……うん……うん……。……えっと、そちらの方が……?
『ゲニス』ゲニスだ……研究者、兼医者をやっている……以後、お見知りおきを、女王殿……。
『リト』ゲニスさん……。あなたが……私の治療を……。
『ゲニス』治療は今しがた終わった。
『リト』……え……終わった? 治療が?
『ゲニス』そうだ。
『リト』それは……どういう……?
『ゲニス』どうもこうも、そのままの意味だ……どうだ……女王殿……まだ、気持ち悪いとか……どこかが痛いとか……そのような症状はあるか?
暫くの間。
『リト』……ありません。治ってる……。
『ゲニス』そうか、それは良かった。
『ラム』ゲニスさん、本当に、ありがとうございます。
『ゲニス』礼には及ばぬ……、それより……、女王殿。
『リト』は、はい……?
『ゲニス』お前さんはどうやら、毒を受けた後もかなりの無理をしていたようだが……、今後、生きていく上での、非常に有用な人生のアドバイスを、私からはくれてやる……。
『リト』な……何でしょうか?
『ゲニス』無理はするな、無理をして自身を削るような真似はするな……、それこそが、人生にとっての毒なのだ……、ということで、女王殿は……これから短くとも一週間は安静にしていろ……、王としての職務も止めておけ。
『リト』一週間⁉
『ゲニス』一週間だ、……これは医者からの、だけではなく、人生の先輩からのアドバイスだと思っておけ……お前さんたちの人生は長いのだろう?
『リト』……はい……。わかりました……。
『ゲニス』では……、私はもう行くとしよう……ニューロッジには私の帰りを待っている弟子が大勢いるからな……。
『ラム』え……ゲニスさん……報酬は……。
『ゲニス』いらぬ。
『ラム』どうして……。
『ゲニス』お前さんたちからサンプルが採取できないことは、ラム殿が私の前で腕を切り落とした直後、すぐに引っ付いた事から、既にわかり切っている……、例えばお前さんから皮膚の一部を貰って、それを実験材料にしようとしても、それはすぐにお前さんの下へ戻ってしまうのだろうな……それでは意味がないのだ……研究における最も基本的な、観察ができぬ……。
『ラム』どうして……そんなことわかるんですか……やってみなきゃ……。
『ゲニス』やってみなくともわかる……ラム殿が診療所で見せたあの行動と、船の上で聞かせてもらった諸々の話から……不死身の仕組みは容易に想像できるからな……。
『リト』不死身の仕組み? わかったのですか?
『ゲニス』ああ、わかったとも……、あー、そうだな……この経験は私にとっても至極有益なものとなった……これはそのお礼として、私が考える不死身の仕組み、教えてやろうではないか……。




